財産区って何 別荘経営・自前の議会もあり

財産区って何 別荘経営・自前の議会もあり

財産区って何 別荘経営・自前の議会もあり
朝日新聞長野県版 2019年6月13日

長野に住んでいたら「財産区」という言葉を聞いたことがあるのでは。市町村と同じ地
方公共団体の一つで、県内にはその数なんと189。どういう仕組みか別荘やスキー場
まで経営していて、中には裕福なところもあるらしい。いったいどこにあって、誰が何
をやっているんだろう。知られざる実態に迫ってみた。
(依光隆明)

入会地が原点 高い独立性

「毎朝4時半ぐらいにウグイスに起こされてね。
うるさいんだよね、ホーホケキョって」

八ケ岳のふもとで大滝キャンプ場(長野県茅野市)を営む中尾昭彦さん(78)が笑っ
た。カラマツやミズナラに囲まれ、セミの声がうるさいほど響く。周りに散らばるのは
立派な別荘群。薪ストーブが鎮座するキャンプ場の休憩室は、この別荘山のサロンだ。

そう、ここが鹿山財産区の山。直営の別荘が約200軒、大手ディベロッパーに貸した
土地には約2千軒の別荘が立つ。

鹿山財産区は1960年代から別荘経営を始めた。およそ500坪の区画を賃貸しし、
都会の人が別荘を建てた。別荘の住人、兼松博(ひろむ)さん(70)が話してくれる
。「財産区直営の別荘地のメリットはね、地代が安いこと。それに地元の人と交流もで
きる」。1坪(約3・3平方メートル)当たりの地代は年180円とか。

財産区の源流は江戸時代にさかのぼる。原点は「入会(いりあい)地」と呼ばれる、地
元の人たちが芝や薪を取った場所。入会地の権利を守るため、明治時代に財産区という
制度がつくられた。

財産区の主要な役目は入会地を守り、使うこと。法的には特別地方公共団体の一つで、
役員は公職になる。財務状況は公開しなければならず、自前の議会を持つこともできる
。議員を選ぶ選挙は公職選挙法で行われる。

2018年の総務省調査によると、長野県の財産区数は189。都道府県別で全国6番
目の多さだ。うち約68%(全国平均約16%)が議会を持ち、独立性の高さもうかが
える。県内の財産区が保有する現金・有価証券額約103億円は全国4位で、裕福なと
ころが多いのも大きな特徴だ。法的には財産区のエリアに住む人はすべて財産区民だが
、移住者を財産区に入れないケースもある。

自分たちの土地をどう使うかは財産区次第。山林、原野の管理だけを行うところもある
し、賃貸しして利益を得るところもある。長野では財産区の土地がスキー場やゴルフ場
になるケースも少なくないが、その多くは土地を貸すだけ。別荘地だと開発業者に貸し
、そこが経営している。

首長が管理者を兼ねる矛盾

財産区制度の難しさを表しているのが、トップ(管理者)を財産区のある市町村長が務
めていることだ。事務を担うのも市町村。つまり、独立した団体のように見えながら、
市町村に従属する側面がある。

財産区トップと市町村長が同一人物とあって、所有地の処分などでチェックが働かない
危険性がある。そうしたことから、地方自治法では都道府県知事の監督権限を明確にし
ている。報告や資料提出を求められるほか、監査もできる。法律には明記されていない
が、市町村の監査委員にも監査権があり、市町村の住民には住民監査請求権もあるとさ
れている。

話を鹿山に戻そう。

もともと財産区は薪や牧草を取る土地を守るためにできたので、事業をすることは想定
されていない。

「木、水道、道路、この三つのインフラが問題なんだよね」と兼松さん。直営する別荘
地内のインフラは財産区が整備する必要がある。木を切らないと山が荒れるし、水道施
設は更新しないといけない。荒れた道路の補修も欠かせない。

しかし鹿山財産区の貯金は2500万円ほど。これでは水道施設の更新も難しい。では
どうするか。そういえば財産区のトップは市町村長。ということは茅野市が後始末を?

市管理課の伊藤善彦課長が頭を抱えるような表情になった。

「実は昔、別の別荘地に給水車で水を運んだことがあるんです。お金がないから水道施
設を修理できなくて」。水道そのものを市に移管する可能性を聞くと、「公金で市が全
部引き取るなんて、一般市民からしたら認められません」。

財産区の事業だけれど、責任は市長が負わなければならない。かといって市長が命令で
きるかといえば、そんな立場にはない。

富士見の用地問題 疑問噴出

富士見町の財産区が進めるメガソーラー計画は、財産区制度のいろんな矛盾が詰まって
いる。

なによりの矛盾は財産区の管理者である町長が開発許可申請を出し、許可したのも町長
だったこと。財産区の総意は財産区の利益を反映し、対する町長は公益を代表する。つ
まり両者の利害が一致しない場合もあるのだが、町長は両者を代表せざるを得ない。

用地(約12ヘクタール)にも疑問が噴出している。財産区のルーツは本来は入会地の
はず。ところがこの土地にはその歴史は見られない。登記簿で確認すると、個人の土地
だったものを旧村が購入。地元の話によると、学校林として使っていた。旧村合併によ
る富士見町誕生後に町有地となり、2001年に地元の広原財産区の所有となった。

こうした経緯が不明瞭だとして、住民が町に住民監査請求も行う事態に発展している。
そもそも財産区は新たな財産の取得が認められていない。それなのに、なぜ町有地を取
得できたのか。町に損害を与える行為ではないのか、という疑念があるからだ。監査権
限を持つ県も、町から聴取を始めている。

行政を補う「小さな自治」実現がカギ 

東京大学富士癒しの森研究所所長補佐 斎藤暖生さん

財産区は、「自助」に近い入会地からスタートしたのに、形式上は「公助」となる仕組
みです。自助と公助を矛盾なくどう進めるのか。法律改正が必要だと指摘する研究者も
いますし、もう財産区はなくしたほうがいいという意見も聞きます。

私は現代的な意義があると思っています。鍵を握るのは「小さな自治」です。自分たち
の地域のことを自分たちの総意で決めて実現する仕組み。それが働けば活力が出ます。

対照的に、市町村のコントロールは上から与えられるもの。しかも行政は広域化し、末
端までサービスが届かなかったり、地域ニーズに十分に応えられなかったりする傾向が
あります。財産区にはそれを補いうる可能性があるのです。

ただし、財産区自体も変わる必要があります。大切なのは「開く」ことです。関心を持
つ人や企業とも関わりを持ち、多様な価値観を入れることによって、思いもよらなかっ
た活路が見えてくるかもしれません。財産区が住宅地をつくって、新しい人たちを招き
入れる例もあります。そして一緒に地域の将来を考える。外からこじ開けられるのでは
なく、内側から自ら開くこと、つまり開き方が大事だと思います。

財産区のメリットは無税だということです。だから地域の福祉に資することとは相性が
いい。逆に自分たちのもうけに走るような運営には違和感が生じます。地域の福祉に生
かすのだから無税、そういう論理なのですから。

https://www.asahi.com/articles/ASM6B55P7M6BUOOB00F.html

MLホームページ: https://www.freeml.com/uniting-peace

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