元総務相の片山善博氏 「国家戦略特区は利権 公正さに疑問」

元総務相の片山善博氏 「国家戦略特区は利権 公正さに疑問」

国家戦略特区の問題について語る片山善博氏=東京都新宿区で2019年7月8日、梅村直承撮影

 規制緩和を地域限定で進める政府の国家戦略特区を巡り、提案を選定する特区ワーキンググループ(WG)の原英史座長代理が提案者に指南したり、提案者や省庁へのヒアリング開催が隠蔽(いんぺい)されたりしていた。制度の問題点と行政のあり方について、元総務相の片山善博・早稲田大公共経営大学院教授に聞いた。【杉本修作、田中裕之】

はたから見て公正さを疑わせるのに十分

国家戦略特区の問題について語る片山善博氏=東京都新宿区で2019年7月8日、梅村直承撮影

 ――原氏と協力関係にあるコンサルタント会社が提案者からコンサル料を受け取っていました。原氏は、WG委員が提案者を指導したり、場合によっては添削をしたりしてもいいと主張しています。

 国家戦略特区は特定の事業者に特権を与える仕組みでもある。特権を与えるかどうかを選定する人が誰かに加担したら、客観的な評価にならない。はたから見て公正さを疑わせるのに十分だ。裁判官が提案者の弁護士になっちゃいけないのは常識だ。

 ――国家戦略特区諮問会議の議員自身が特区を提案し、議員が会長を務める会社がその特区事業に参入した例もあります。

 論外。利害関係者は除外するものだ。

 ――WG委員には、提案者との利害関係を制限するルールがありません。

 特区で利権が発生する可能性があるのだから、不公正がないようルールを作るべきだ。加計学園問題では、岩盤規制はそのままにして「穴を開けた」と言うが、穴から出てきたのは首相のお友達だった。例えば自治体で公営住宅が足りない時、本来は数を増やすべきなのに足りないままにして、地方議員が支援者を優遇するよう役所に働きかける。戦略特区を見ていると、こうした口利き政治の手法とよく似ている。

政策には透明性と説明責任が重要

国家戦略特区の問題について語る片山善博氏=東京都新宿区で2019年7月8日、梅村直承撮影

 ――WGのヒアリングの開催記録が首相官邸ホームページなどに掲載されず、隠蔽されていました。

 政策には透明性と説明責任が重要だ。今回の場合、WGにある種の判断権を与えており、それが公正・中立だったかどうかが検証されないと駄目だ。プロセスを説明して「本当にちゃんとやっている」と皆が分かればいい。それにはちゃんとした記録が必要で、記録がないと結論が公正だったかどうか証明できない。

 ――WG側は、業界や官僚の抵抗で名乗り出られない提案者の保護を、隠蔽の理由に挙げています。

 それは全否定されるものではなく、プライバシーや企業機密など開示しない部分があってもいいが、全て隠すのは説明責任を全く果たせず、アウトだ。非開示は必要最小限にとどめるべきで、(規制緩和後の)事後公開でもいいはずだ。特権を与える折衝を「非公開ですよ」と言っても、誰も納得しない。

 ――内閣府は「書類がない」と記録の公表を拒んでいます。

 普通、役人は「後でちゃんと説明できるかな」と考えながら行動している。説明責任を果たす一番の武器は文書。それが出せないのは、説明できない何かがあるのではないか。森友学園問題で財務省が文書を改ざんしたのは、説明ができなくなったからだ。会合をやったかやっていないのか分からないのに(WG委員に)謝礼を払うのもおかしい。

 ――「岩盤規制を打破する」と特区を評価する声もあります。

 確かに規制が経済活動を妨げているケースはある。しかし規制の法律を作った大本は国会だ。各省の政省令が障害なら変えればいいし、法律が障害なら国会で法律を変えるべきだ。政権は省庁人事を掌握しているのだから、岩盤を打破したいのなら省庁を指導すれば済むことだ。

 国家戦略特区は首相の威を借りたい人などの意志を貫徹するための枠組みにもなりかねず、国民に選ばれた政治家や公務員でもない一部の人に委ねてしまうのはよくない。制度自体をやめるべきだ。枠組みを作った政権の責任は重く、国会はきちんと議論して行政監視の責任を果たしてほしい。

片山善博(かたやま・よしひろ)

国家戦略特区の問題について語る片山善博氏=東京都新宿区で2019年7月8日、梅村直承撮影

 1951年生まれ。自治省固定資産税課長などを経て鳥取県知事2期。民主党政権で総務相を務めた。2017年から現職。

国家戦略特区とWGを巡る問題の経緯

 特区WGの原座長代理と協力関係にあった会社「特区ビジネスコンサルティング」(特区ビズ)が、規制緩和の提案を検討していた福岡市の美容系学校法人からコンサル料を受け取っていた。特区ビズは原氏が代表の政治団体と住所などが一時同じで、特区ビズ社長は政治団体の事務も担当。原氏は法人幹部に提案の指導をしたり会食したりしていた。原氏は会食を否定している。

 原氏と特区ビズが指南した真珠養殖に関する提案では、2015年秋のヒアリング2件の開催が隠蔽されていた。内閣府は「非公式の会合だった」と釈明したが、水産庁や内閣府の資料に「ヒアリング」と開催が明記されていた。

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