ここが「不公平」だよ、日米安保 「米軍が必ず日本守る」は勘違い?

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ここが「不公平」だよ、日米安保 「米軍が必ず日本守る」は勘違い?

護衛艦「かが」で、訓示を終え、海上自衛官と在日米軍人に手を振るトランプ米大統領と安倍晋三首相=神奈川県横須賀市の海上自衛隊横須賀基地で2019年5月28日、代表撮影

 「日米安保条約は不公平な合意だ。改定しなければならない」。主要20カ国・地域首脳会議で6月末に来日したトランプ米大統領が、またまた持論を展開した。日本政府は「日米双方の義務のバランスは取られている。見直しの話はない」との立場だが、日本側にとってこそ不利益が多く、改善を求めるべき話なのではないか。【石塚孝志】

 「もし日本が攻撃を受ければ、我々は日本のために戦う。米国が攻撃を受けても、彼らに同じことをする義務はない。公平ではない」。来日時の記者会見でこう話したトランプ大統領だが、実は大統領選前からこのような発言をしており、来日直前にも米テレビのインタビューで同様の主張をしていた。駐留米軍経費の日本の負担増や、防衛装備品のさらなる購入を引き出すのが狙いとの見方もあるが、安保条約の重要性を説いてきたという安倍晋三首相の説明は、伝わっていたのだろうか。

 安保条約は5条で米国が日本を防衛する義務を定める一方、6条で日本は米軍基地などを提供すると定めており、全体として「双務性」が確保されているというのが政府の立場だ。では、安倍首相はトランプ氏にどのように説明してきたのか。

 7月3日のテレビ朝日の党首討論会で、安倍首相はこう発言した。「米国は日本防衛義務を負っています。しかし同時に、日本が基地を提供して、日本の基地があって初めて、彼らは前方展開戦略を進めることができる。アジア太平洋地域の彼らの権益を、日本の基地を使って守ることができる」。日本の防衛というより、米国の世界戦略に貢献しているらしい。

 安全保障論が専門の流通経済大教授、植村秀樹さんは「日米安保体制を理解するには、安保条約だけでなく、米軍の特権などを認めた日米地位協定、原則非公開とされている日米合同委員会などで決められた密約を含めた全体で考える必要がある。そもそも1951年に結ばれた旧安保条約に巧妙なトリックが仕組まれている」と指摘する。

 戦後、日本はサンフランシスコ講和条約で独立を果たした。しかし、同時に結ばれた旧安保条約には、米軍の対日防衛義務の記述はなかった。

 「米軍の駐留を続けたい米国に対し、当時の吉田茂首相は講和条約の締結を優先したため、旧安保条約と地位協定の前身の行政協定での不平等をのんだ。それも日本から米軍駐留をお願いする形を取ったため、今でも『守ってやっている』とつけ込まれるのです」と話す。

 その結果、世界的にも珍しい首都・東京を含めた広大な空域の管制権を米軍が持つほか、▽日本国内のどこにでも駐留できる▽在日米軍基地から自由に出撃できる▽日本の法制が適用されない--など数々の特権が米軍に与えられた。

 「横田空域」などの著書があるジャーナリストの吉田敏浩さんはトランプ発言について「防衛装備品をもっと購入してもらうための日本の軍事費の増額と、米軍と自衛隊の相互運用性を高めるのが狙いでしょう」と語る。米軍の駐留経費も本来は米軍が負担するのが地位協定の取り決めだが、光熱費や基地で働く日本人の人件費などを「思いやり予算」として、2019年度は1974億円を計上、今後増額を求められる恐れもある。

 さらに吉田さんは「米軍は本来、提供区域内での訓練が原則なのに、日本の領空内に、勝手に訓練空域を設けて軍事訓練を行い、イラク戦争など海外で戦った。米軍が軍事的必要性に応じてやっていることを、日本政府は既成事実として追認するだけ。米軍は安保条約や地位協定で決めたことさえ守らないのが実情」と指摘する。

あくまで「米国の国益」次第

 とはいえ、米軍には日本を守る義務があるのなら、ある程度のガマンは必要ではないか。ところが、外務省の元国際情報局長、孫崎享さんは「安保条約があるから米軍が守ってくれると思うのは大きな勘違い。義務はありません」と言い切る。

 孫崎さんは、米国の対日防衛義務を定めたとされる5条の「自国の憲法上の規定及び手続きに従って共通の危険に対処するように行動する」という文言に注目する。「米国の憲法で交戦権を持つのは議会。憲法に従うとは、議会がOKと言ったら行動するということ。日本が攻撃されたら『必ず』米軍が出てくるわけではない」と話す。そして、71年にキッシンジャー米大統領補佐官が中国の周恩来首相に語った言葉を引用する。

 <核の傘について言えば、(中略)日本が攻撃されたときに、我々が日本を防衛したいと思えば、防衛することができます。核の時代においては、国家がほかの国を防衛するのは条約があるからではありません。自国の国益が危機にさらされるからなのです(「周恩来キッシンジャー機密会談録」から)>

 孫崎さんは「米軍が日本国内に駐留するのは米国の国益のため。例えば、日本が中国から核攻撃を受けたとき、米国が必ず中国を核攻撃すると思いますか。米国本土への報復を示唆されれば、米国の国益にはなりません」と指摘する。

 防衛問題に詳しいジャーナリストの布施祐仁さんは、日米安保体制が米国の国益のためとする端的な例が、秋田、山口両県に配備予定の陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(陸上イージス)だという。政府は北朝鮮の脅威を強調するが、秋田は米軍のインド太平洋司令部のあるハワイや米本土西海岸、山口は米空軍基地があるグアムに向かうミサイル経路の真下に位置する。

 布施さんは米保守系シンクタンク「戦略国際問題研究所」が昨年5月に発表したリポートに注目する。タイトルは「太平洋の盾・巨大なイージス駆逐艦としての日本」。日本が陸上イージスを導入すれば「ハワイやグアム、米東海岸などの死活的重要地域やその他の戦略的な港湾や基地を守ることができる」と指摘し、これにより米国防衛のための経費が10億ドルも節約できると評価している。

 「垂直離着陸輸送機オスプレイの購入や、多くの欠陥が指摘されている最新鋭ステルス戦闘機F35の大量購入、ヘリコプター搭載護衛艦に戦闘機を搭載できる『空母』への改修など、政府が日本の防衛のためとして進めている施策の数々が、実は全て米国の安全保障への貢献や米軍の戦力を補完するためと考えると分かりやすい。こういう『本当の目的』を日本政府が国民にきちんと説明してこなかったことこそ問題」と布施さん。

 16世紀フランスの人文学者ラ・ボエシの「自発的隷従論」の日本語訳を監修した哲学者の西谷修さんは、こう問いかける。

 「日米安保条約は冷戦体制が終わっても、一度も見直されなかった。日本に突きつけられた問題として、今後、日本は日米安保体制をどう築き直していくべきなのか、きちんと考えるよい機会だと思う」

 トランプ氏は、私たちに日米安保について深く考えるよう促してくれたのかもしれない。

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