首相のあいさつ 広島と長崎で「コピペ」は本当か

首相のあいさつ 広島と長崎で「コピペ」は本当か

平和祈念式典であいさつする安倍晋三首相=長崎市の平和公園で2019年8月9日午前11時25分、徳野仁子撮影

 長崎市で9日に開かれた長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に出席した安倍晋三首相のあいさつが、6日の広島市の平和記念式典でのあいさつとほぼ同じだという指摘が、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で上がっている。本当なのか、読み比べてみた。【塩田彩/統合デジタル取材センター】

1段落目と2段落目を入れ替えただけ?

 あいさつの全文は首相官邸のホームページに掲載されている。

 広島のあいさつはこう始まる。

 「今から74年前の今日、原子爆弾により、十数万ともいわれる貴い命が失われました。街は焦土と化し、人々の夢や明るい未来が容赦なく奪われました。一命をとりとめた方々にも、筆舌に尽くし難い苦難の日々をもたらしました」

 「原子爆弾の犠牲となられた数多くの方々の御霊(みたま)に対し、謹んで、哀悼の誠を捧(ささ)げます」

 一方、長崎のあいさつはこう始まる。

 「本日、被爆74周年の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に当たり、原子爆弾の犠牲となられた数多くの方々の御霊に対し、謹んで、哀悼の誠を捧げます」

 広島の2段落目とほぼ同じだ。そして、こう続く。

 「今から74年前の今日、一発の原子爆弾により、一瞬にして街は焦土と化し、7万ともいわれる貴い命が失われました。人々の夢や明るい未来が容赦なく奪われ、一命をとりとめた方々にも、筆舌に尽くし難い苦難の日々をもたらしました」

 広島の始まりとほとんど同じ。1段落目と2段落目を入れ替えただけに見える。

去年は中盤まで句読点の位置も同じ

 その後も地名を入れ替えただけの同じような言い回しが続く。

 「核兵器によってもたらされた広島と長崎の悲劇を決して繰り返してはなりません」(広島)

 「核兵器によってもたらされた長崎と広島の惨禍を決して繰り返してはなりません」(長崎)

 「一昨年、ここ広島から始まった核軍縮に関する『賢人会議』の提言等を十分踏まえながら、各国に積極的に働きかけていく決意です」(広島)

 「昨年11月にここ長崎で開催された核軍縮に関する『賢人会議』の提言等を十分踏まえながら、各国に積極的に働きかけていく決意です」(長崎)

 昨年のあいさつはさらに類似しており、広島、長崎とも中盤までは句読点の位置までほぼ同じだった。

前年とも類似

平和記念式典であいさつする安倍晋三首相=広島市中区の平和記念公園で2018年8月6日、平川義之撮影

 ネット上では前年の「コピペ」ではないかとの指摘も多い。

 広島でのあいさつを今年と昨年で比べると「唯一の戦争被爆国として、『核兵器のない世界』の実現に向けた努力をたゆまず続けること。これは、令和の時代においても、変わることのない我が国の使命です」(今年)▽「唯一の戦争被爆国として、『核兵器のない世界』の実現に向けて、粘り強く努力を重ねていくこと。それは、我が国の使命です」(昨年)――のように、確かに同じような表現は多い。

 広島と長崎のあいさつの構成は、いずれも冒頭に被害者への哀悼を述べた後、再発防止への誓いの言葉▽軍縮を巡る各国の隔たりと「核なき世界」へ取り組む決意▽「賢人会議」と20年に迎える核拡散防止条約(NPT)発効50周年▽被爆体験の継承▽被爆者への援護策▽結びの言葉――で、要素も順番も2年連続で同じだった。

毎年表現に工夫を凝らす市長たち

 広島市長と長崎市長は毎年、表現に工夫を凝らしたその年々の「平和宣言」をしてきた。

平和宣言を読み上げる松井一実・広島市長=広島市中区の平和記念公園で6日、平川義之撮影

 広島市の松井一実市長は今年、5歳で被爆した女性の詠んだ「おかっぱの頭(づ)から流るる血しぶきに妹抱(いだ)きて母は阿修羅(あしゅら)に」という短歌を紹介した。昨年は冒頭で「73年前、今日と同じ月曜日の朝。広島には真夏の太陽が照りつけ、いつも通りの1日が始まろうとしていました。皆さん、あなたや大切な家族がそこにいたらと想像しながら聞いてください」と呼びかけ、被爆時の様子を描写した。

平和宣言を読み上げる田上富久・長崎市長=長崎市の平和公園で2019年8月9日午前11時5分、徳野仁子撮影

 長崎市の田上富久市長は今年、政府に対し「核兵器禁止条約に署名、批准してください。日本国憲法の平和の理念の堅持と、それを世界に広げるリーダーシップを求めます」と正面から呼びかけており、首相のあいさつとの温度差は際立つ。

「心がこもっていないように感じます」

 広島県原爆被害者団体協議会(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(77)は「核廃絶への気持ちの差が表れているのでしょう」と語る。「被爆者は年を取って亡くなっていくし、被爆地は毎年同じ状況では決してない。同じような言葉を毎年繰り返す安倍首相のあいさつには、心がこもっていないように感じます」と話した。

Categories Uncategorized

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out /  Change )

Google photo

You are commenting using your Google account. Log Out /  Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out /  Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out /  Change )

Connecting to %s

%d bloggers like this:
search previous next tag category expand menu location phone mail time cart zoom edit close