「事実上の空母化」との指摘も出ている海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」の艦内はどんな様子なのか。海の上で陸上自衛隊の隊員が訓練を重ねたり、火を使えないなかでの調理に工夫が施されたり。家族や友人との連絡もかつてのような「音信不通」ではなくなっていた。同乗した記者がその一端をのぞいた。

 「ハイ、ハイ、ハイ」。他国との共同訓練がない日の午前。ヘリの格納庫では、体格のいい隊員たちが声を張り上げながら、サーキットトレーニングを行っていた。

 昨年発足したばかりの陸上自衛隊の水陸機動団の隊員たちだ。陸自初の本格的な「水陸両用作戦部隊」で、任務は離島の防衛や奪還。中国の東シナ海での海洋進出などを念頭に、政府が進める自衛隊の「南西シフト」の核のひとつに位置づけられている。

 隊員ら約30人が今回初めて、いずもの長期航海に参加していた。陸自といえども海上での移動や任務にも慣れる必要があるからだ。昨今、中国の動きなどに伴う安全保障環境の変化により、陸海空の現場の自衛官たちの役割も、変化が求められている。水陸機動団のベテラン隊員は「陸自の自分が船に乗ることになるとは考えもしなかった」と笑った。

 約30人を率いた田中保和3等陸佐は、艦上生活について「普段使う用語が全く違う」「電波も入らない。普段、携帯電話でどれだけ日常の情報を得ているかを感じました」と戸惑いを語った。そのうえで「培った海自と陸自の現場レベルの信頼関係、人間関係は今後も生きてくると思う」と手応えも口にした。

 7月まで、70日もの長期航海をしたいずもの乗員は約470人。

 ある日のお昼時。食堂では乗員たちが食事をほおばっていた。メニューは、鶏のピザ風ローストにサラダ、麻婆春雨、チゲ鍋風の汁物、肉まん。男性乗員(45)は鶏を口に運ぶと「いずもの飯はうまいんです」と満面の笑みを見せた。同じテーブルにいた同僚は「金曜日のカレーと、たまに出てくるラーメンが人気。食事は楽しみだし息抜きです」。

 メニューは毎日変わる。食事の責任者である友野達郎・給養員長(43)は「長い航海だと楽しみは食事になる。乗員のモチベーションを保つ意味もある」。使う食材は、多いときで1日にタマネギやキャベツだと80キロ、ニンジンで30キロ。船内では火を使えないため、これらを蒸気を使って加熱する釜で調理している。

 難しさは、人数が多く年代も幅広い乗員の好みの味付けを、いかに外さないかということ。護衛艦では毎週金曜日はカレーと決まっているが、友野さんは「甘めにつくって、辛くできるソースを別に出し調整できるようにしている」と工夫を教えてくれた。

 風呂やトイレは、意外なほどきれいで快適だ。男女とも、10人は同時に入れそうな浴槽とシャワーがあり、基本的に24時間使える。海水をくみ上げて淡水化する装置が常に稼働している。

 艦内の廊下の一角には、スマートフォンを手にした乗員が集まる場所があった。壁の貼り紙には「家族メールWiFi(ワイファイ)スポット!」。家族や友人など出港前にメールアドレスを登録した相手と、スマホを使って毎日連絡を取れるという。昨年から各護衛艦に導入された仕組みで、ベテラン乗員は、スマホに夢中の若手を見ながら「昔のように、出港したら音信不通になる時代ではなくなりました」と目を細めていた。

 いずもが日本を出港した翌日に三女が生まれたという乗員の石原友樹さん(28)は、この艦内ワイファイを通じて誕生の知らせを受け取った。寂しさはないか聞くと「ワイファイで連絡は取れているので」。ただ「(子どもに)早く会いたいなという気持ちにはなります」と親心ものぞかせた。このほか、艦内にはジュースやお茶、アイスの自動販売機もあり、オフの時間の楽しみにしている乗員も多かった。

 少子化や、長い洋上生活の過酷なイメージなどもあり、若い世代のなり手不足が深刻化する海自の現場では、こうした職場改革を急速に進めながらイメージアップを図っている側面もあるという。シーレーンの安定確保に、陸海の連携、「空母化」――。難しい役割を一手に背負ういずもの現場の暮らしは思ったよりも快適で、職場改革が進んでいるようにも感じた。(伊藤嘉孝)