かんぽ生命保険の不正販売を報じたNHKの番組「クローズアップ現代+」が日本郵政グループから抗議を受け、昨年10月にNHK経営委員会が上田良一会長を注意していた問題で、同11月に郵政側が鈴木康雄副社長名で経営委に送った文書の詳細が分かった。鈴木氏は総務省の元事務次官。放送行政に携わっていた経歴を示した上で、幹部・経営陣による番組への確認などを求めていた。

 NHKの経営委は昨年10月23日、郵政側の抗議への対応をめぐり、ガバナンス(統治)強化名目で上田会長を注意、会長ら執行部は同11月6日付に上田会長名で対応に非があったことを認める書簡を郵政側に届けた。朝日新聞が入手した文書は昨年11月7日付で、その直後だ。

 文書では、郵政側が、書簡を持参した放送現場トップの木田幸紀放送総局長に対し「充分(じゅうぶん)意のあるところをお汲(く)み取りいただいたものとして、一応の区切りと考える旨」を伝える一方、「放送番組の企画・編集の各段階で重層的な確認が必要である旨」も伝えたことを報告している。

 鈴木氏は旧郵政省入省、同省放送政策課長や総務省情報通信政策局長を務めるなど放送行政に詳しく、2009年7月~10年1月に事務次官を務めた。

 朝日新聞は1日、鈴木氏に取材を試みたが、応じなかった。

 文書では、「かつて放送行政に携わり、協会(NHK)のガバナンス強化を目的とする放送法改正案の作成責任者であった立場から」とした上で、「幹部・経営陣による番組の最終確認などの具体的事項も挙げながら、幅広いガバナンス体制の確立と強化が必要である」と、木田氏に伝えたことも明らかにしている。

 NHKの編集の最終責任者は会長だが、実際は放送総局長が分掌し、個々の番組は現場に任せる運用だ。

 日本郵政の長門正貢社長は30日の会見でNHKへの対応を問われ、「(鈴木氏が総務次官を)辞めたのは8年以上前で、プレッシャーを与えてうんぬんというのは少し違うのではないかと感じている」と語った。

立教大学の砂川浩慶教授(メディア論)の話

 鈴木氏の文書が送られたのは、上田会長名でNHKの対応に非があったことを認める書簡が届けられた後。文書では、鈴木氏が長く放送行政に携わった経歴も強調しており、常時同時配信などの新しい事業に取り組みたいNHK側は身構えたのではないか。その後のかんぽ問題の報道を牽制(けんせい)しているようにも見える。