元徴用工問題の見えない出口 韓国政界の「肩代わり論」とは

元徴用工問題の見えない出口 韓国政界の「肩代わり論」とは

原告団弁護士の話を聞きながら元徴用工問題を議論する韓国国会外交統一委員会=2019年10月21日、堀山明子撮影

 元徴用工訴訟で韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる判決を出してから30日で1年を迎える。急速に悪化した日韓関係は、出口の見えない状況が続く。既に差し押さえられている日本企業の資産が売却されれば、対立はさらに深まることが確実だ。そうした事態を避けるため韓国国会では、韓国内の措置で賠償金問題を解決する方法が超党派で議論され始めている。一方、日本政府は日本側が金銭を払う案には同意しない姿勢で、韓国側の対応を待っている。【ソウル堀山明子、渋江千春】

保守勢力が模索、「2+2」形式の財団案

 「賠償金問題を韓国が(国内で)解決するとしたら、原告の同意をまとめる役割を果たしてくれるか」

 21日の韓国国会外交統一委員会。元徴用工訴訟の原告代理人を務める崔鳳泰(チェボンテ)弁護士から原告側意見を聴取する席で、中道保守系の野党「正しい未来党」議員が踏み込んだ。

 日本の被告企業の韓国資産を売却する強制執行は、年内に実施されるとみられている。議員の質問は「強制執行したら(日韓関係に)波紋が拡大する」との懸念から、韓国政府が対処する可能性を模索する内容だった。

元徴用工問題に関する打開策と日本政府や原告の立場

 韓国政府が6月に提案した解決策は、日本企業と韓国企業が財団に出資し、賠償金相当額を「慰謝料」として財団から原告に支払う和解案。韓国メディアは「1+1」案と呼ぶ。しかし、元徴用工問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場の日本政府は、日本企業ではなく、韓国側が対応すべきだとして拒否した。

 このため韓国国会で野党を中心に模索されているのが、日韓企業に加え両国政府も関与する「2+2」形式の財団案だ。

 保守系野党「自由韓国党」の洪日杓(ホンイルピョ)議員は9月30日、「強制徴用被害者基金法案」を提出した。提案者に名を連ねた48人には、与党「共に民主党」議員3人、「正しい未来党」議員2人も含まれ、超党派での提案になった。

 法案では、日韓の政府と企業の4者が基金を設立することを想定。外交上、強制執行は望ましくないため、韓国政府が賠償金相当額を供託する形で責任を肩代わりする。その上で、肩代わり分を日本企業に請求する「求償権」を行使し、外交交渉を行う。原告に賠償金が速やかに渡るよう努める一方、判決を巡る法的解釈の論争は日韓政府間の議題として時間をかけて行うという考え方だ。

 ただ、法案には原告や支援者が納得するかが最大の問題として立ちはだかる。既に法案を巡って原告支援団体の一部が「加害者の謝罪のない解決案論議は冒とくだ」(勤労挺身(ていしん)隊ハルモニと共にする市民の会)と反発している。

 外交統一委員会での野党議員の質問にも、崔氏は「被害者救済を急ぐべきだという点には同意するが、カネではなく人権問題だ」と回答。日本企業が謝罪や和解協議に応じない中で、肩代わり論が先行することに懸念を示した。

 また、そもそも文在寅(ムンジェイン)政権も「韓国政府は確定判決が出た原告以外に支援の幅を広げる考えはない」(青瓦台関係者)という立場。「司法への不介入」を理由に政府が乗り出す形での政治的解決案には関心を示しておらず、法案が審議入りする見通しはまだ見えない。

 元徴用工や元女子勤労挺身隊らが日本企業に損害賠償を求めた訴訟は、昨年10月にまず日本製鉄(当時は新日鉄住金)に対する賠償命令が韓国最高裁(大法院)で確定。同年11月には三菱重工業に対する賠償命令も確定した。最高裁判決を受け、今年4月にはソウルで31人、光州では54人を原告とする追加訴訟が提起された。

 弁護団はさらなる提訴を呼びかけているが、被害者本人が高齢だったり亡くなっていたりして提訴に必要な書類を集めるのは困難で、広がりは限定的だ。証拠がそろい勝訴する可能性がある元徴用工は数百人とみられ、労働者として強制動員されたと韓国政府が認定した約15万人に比べれば、ごく一部にとどまる見通しとなっている。

企業資産売却なら、日本は対抗措置も

 日本政府は元徴用工への賠償を日本企業に命じた昨年10月の韓国最高裁判決に「断じて受け入れられない」と強く反発しており、日本の政府や企業が金銭を支払う案が韓国側で出ていることに態度を硬化させている。

 「韓国側が国際法違反の状態を一刻も早く是正することが必要だ。今後の韓国側の姿勢を注視したい」。茂木敏充外相は29日の記者会見で、改めて韓国側の対応を求めた。日本政府は1965年の日韓請求権協定で問題は解決済みとの立場で、韓国最高裁判決を国際法違反と批判している。

 元徴用工問題を巡っては、韓国政府が今年6月、日韓の企業が資金を拠出して創設する財団が元徴用工に補償する案を提案したが、日本政府は「国際法違反の状態を是正することにならない」と拒否。日本政府は元徴用工への補償は韓国政府が責任を持つべきだと主張し、「こちらは一銭たりとも出さない」(首相官邸幹部)と言い切る。

 日本政府が懸念するのは韓国最高裁判決を受けて差し押さえられた日本企業の資産が売却されることだ。日本企業に実害が生じれば、日本政府は対抗措置を取るほか、国際法違反を是正しなかった責任を問い、韓国政府に賠償を求める構えだ。

 ただ、日本政府による対韓輸出管理強化、韓国政府による日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)の破棄通告などで、日韓関係が悪化の一途をたどる中、日本政府もこれ以上の泥沼化は避けたいのが本音だ。茂木氏は29日の会見で「現金化(売却)されることはあってはならない。日韓関係はさらに深刻な状態になる。康京和(カンギョンファ)韓国外相に明確に伝えてある」と危機感を強調した。

 安倍晋三首相は24日の李(イ)洛淵(ナギョン)韓国首相との会談で、元徴用工問題を踏まえ、外交当局間の意思疎通を続ける考えを伝えた。外務省幹部は「韓国側が取るべき措置をこちらに提示し、それに対して日本側が意見を言う」と韓国側に早急な対応を促す。【朝日弘行】

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