「山本太郎を操っている?」斎藤まさしに全て聞いた

2019年10月29日(火)16時45分
大橋 希(本誌記者)

Photograph by Hajime Kimura for Newsweek Japan

<日本政界の異端児・山本太郎との出会い、その評価、れいわ新選組の政策の出元、命を狙われる危険性、野党共闘の可能性……。山本の「ブレーン」と噂される男が饒舌に語った>

菅直人の衆議院議員初当選(1980年)の選挙を手伝い、以来40年間、数々の選挙に関わってきた市民運動家で選挙ボランティアの齋藤まさし。2009年の民主党による政権交代にも関わり、れいわ新選組代表の山本太郎の初当選をお膳立てしたのも彼だ(2015年の静岡市長選で公職選挙法違反で有罪となり、現在は公民権停止中の立場)。
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ネット上では「極左の活動家」と言われ、山本太郎と彼との関係を不安視する声もあるが、6年間、山本を近くで見てきたのが斎藤であることは確かだ。山本本人は、「年に2~3回はお茶を飲んだり、意見交換する。でも選挙に関わる話を具体的に指示してもらうことはない」と言っている。

11月5日号の特集「山本太郎現象」では、山本を知る関係者の1人として斎藤にも話を聞いた。

――山本太郎さんとの出会いについて。

2012年の10月下旬ぐらいかと思う。野田(佳彦)くんが衆議院を解散するという、ほぼ確実な情報が入ってきた。僕は菅(直人)さんが消費税10%を容認し、TPP(環太平洋経済連携協定)を持ってきた時点で民主党支持はやめていた。

民主党の中にも「民主党じゃダメだ」と言う人はいたし、国民も既存の政党を信用していないから、永田町の外から新党を作ろうという話が出てきた。そこで当時の滋賀県知事で現・参院議員の嘉田由紀子さん、菅原文太さん(故人)や坂本龍一さんといった人たちに呼び掛けてもらい、そこに議員が合流する形で新党を作ろうということになった。その呼び掛け人の1人に上がったのが山本太郎だったんです。

彼が反原発のデモを始めた頃から、僕は注目していたので、ある人を介して、十数名の国会議員と一緒に彼に会った。そのときが初対面だったけど、「呼び掛け人になるだけじゃなくて、(あなたも)選挙に出るしかないだろう」と言っちゃったんですよ。本当に原発を止めたいなら、ほかに方法はあるか? 政権取るしかないんじゃない、と。

でも、そのときは反応がなかったし、連絡先の交換もしなかった。ただ、そのあとで衆院選が近づいたとき、友人を介して、太郎のほうから「会いたい」と連絡が来た。会ってみたら、「衆院選に出る」と。そのときは橋下徹が出るという噂もあって、「大阪で橋下が出たら自分がぶつかって出たい」と、太郎は言っていた。それが一番メディアの耳目を引くことになるから、それで原発を訴えたい、という話だった。

結局、橋本は出なかったので、太郎も出るか出ないか直前まで迷っていた。選挙区の候補はいろいろあったが、東京の自民党で一番の強敵である石原伸晃がいる杉並(東京8区)にしたいと彼は言っていた。公示の前日の夕方に代々木の喫茶店で太郎を含めた4人で話をして、最終的にそこに決めた。僕は「杉並だと勝てない。東京1区はどうか。必ず勝たせる」と言ったんだけど、本人は勝てると思っていたんじゃないかな。知名度や、反原発をやっていることで、多少自信があったと思う。

今でも僕の中でいちばん印象に残っているのは、この代々木の喫茶店でのこと。もう1つは、この衆院選に負けた後のこと。一緒に飲んだり、朝まで歌ったり、喧嘩もしながら結構付き合った。(2013年7月の)参院選に出ると決めるまでの約半年間は、彼が非常に悩んだ時期なんですよ。参院選の2カ月くらい前に、彼から「東京選挙区で出たい」と言われ、やる以上は今度は勝とうぜ、って僕は言った。その頃のことが、2番目の思い出かな(*この参院選で初当選)。

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Photograph by Hajime Kimura for Newsweek Japan

――山本さんは裏表なく、気配りもできるというのが周囲の人たちからの評判。ただ、善人には政治家は務まらないとも言うが……。

今までの政治がそうだったから、日本がこんなひどいことになっているわけ。

僕はずっと選挙に関わってきた人間です。平成の30年間って日本が没落する30年間で、それをずっと見てきた。僕は消費税は導入前から反対で、廃止をずっと言い続けてきた。(れいわ新選組の公約である消費税廃止は)新しいアイデアでも何でもないけど、そんな当たり前のことを今までの政治家は誰も言えなかった。

菅直人だって、やっぱり既存の政治システムから離れられなかった。僕が一緒にやった80年のダブル選挙で、彼はいきなりトップ当選。すると、とたんに山岸(章)さんという連合(日本労働組合総連合会)の会長が接近してきた。やっぱりそのほうが楽なの。金もくれるし、連合を味方にすれば野党の中でのし上がれるから、やっぱり菅はそっちを選んだ。

僕が見る限り、(山本太郎は)最初から一貫して、既存の政治システムに対して否定的で、それに依存しないで新しい政治を作ろうとしている。僕は6年間付き合ってきたけど、そこは一度もぶれていない。ただ、今も野党共闘を呼び掛けているように、既存の政党を全否定しているわけじゃない。

今の野党は、人々の生活にかかわる問題、主に経済政策でアベノミクスに対抗するものを提案できていない。だから、太郎はそれを何とかやろうとしている。実は(れいわの公約は)太郎が作った政策ではない。鳩山(由紀夫)さんや経済学者の植草(一秀)さんがやっている「オールジャパン平和と共生」というグループがあって、基本はそこの運営委員会で煮詰めた案なんです。

あの案は太郎にだけじゃなくて、立憲民主党や国民民主党の幹部にも、「政権を取るためには、これでまとまれ」と昨年から提案している。最低賃金1500円にしたって、奨学金チャラにしたって、どこの党にも提案している。れいわだけが、(公約として)ほぼ丸のみしてくれた。

連合も、消費税を10%に上げろと要望した。だから立民も国民も、消費税については連合とぶつかっている。連合はしょせん労働者の10%台しか組織していなくて、基本は正社員だけ。今は労働者の4割が非正規で、8割は連合に組織されていない人たち。そうした未組織の労働者、TPPやFTA(自由貿易協定)でつぶされている一次産業の従事者、中小零細企業と個人事業者、あとは無年金の老齢者とか障害者などいわゆる社会的弱者と言われる層が、今の政治で一番苦しんでいる。人口の8割を占める彼らが「俺たちの政党だ」と思えるものができれば、政権交代なんて一発でできる。

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Photograph by Hajime Kimura for Newsweek Japan

――そうした点は、山本さんも最初から理解していた?

彼の中には最初から、貧しい人や弱い人への共感がある。それが原発事故で動き出した。論理的にどうこうでなく、彼はすべて感性から入る。でも国会議員になってからの6年間で、国会で質問するためにあらゆる分野で資料にあたり、本を読み、いろんな人の話を聞いて勉強した。そんな議員がほかにいないこともないけど、いちばん血肉化しているのは山本太郎。

6年前の参院選のときは、防弾チョッキは手に入らなくて、防刃チョッキを着て(選挙運動を)やっていた。彼の場合はその主張からして、命を狙われる危険も感じたわけですよ。カミソリの刃が送られてきたりして、大変だった。僕は、「こいつは命をなくしてもやる、という覚悟で出たんだな」と感じた。その投票日に、いきなり「今日、子供が生まれた」と打ち明けられた。彼女がいることも、子供ができていることもまったく知らなかった。今から思えば、それが彼に再び選挙に出る覚悟を決めさせた要因だったかな、という気がする。

彼は大臣や総理になっても、よっぽどのことがないとSP(警護官)は付けないんじゃないかと思う。ある意味、SPはその人の情報を全部把握しちゃう。戦前の話だけど、山本宣治という男がいた(38歳で初当選し、39歳で暗殺)。誰が彼を殺したか。石井紘基(民主党、2002年刺殺)のときもそうだけど、どこの誰だか分からない人間が殺すわけですよ。何らかの情報がなければ不可能なんです。僕はそういう歴史を見てきている。

社民連という小さな政党の事務局長をやっていたのが、まだ選挙に出る前の石井だった。僕は親しかったから、あいつが殺されたときは衝撃を受けた。彼は国家の闇、国家予算をはるかに上回る特別会計の闇を追及し始めたところで殺された。確かに、SPがいるところで殺されることはないだろうけど、でもそこから情報が抜けることも当然、覚悟しなくてはいけない。

太郎の人生は、お母さんの影響が強いと思う。(NGOの)グリーンピースのメンバーだったりして、太郎がちっちゃいときからフィリピンに何度も連れていったらしい。スモーキーマウンテンなんかにもね。それに、お母さんはシングルじゃん。彼はお父さんの顔も知らない。だから彼は、シングルの人に共感を持つ。

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Photograph by Hajime Kimura for Newsweek Japan

――あなたは山本さんのブレーンと言っていい?

ブレーンというかどうかは知らないけど、僕の意見だって聞くってこと。でも僕の意見で動いているわけではない。彼はいろんな人の意見を聞くし、自分が納得するまで絶対受け入れない。例えば消費税廃止だって、納得するまで2年かかっている。

僕が太郎を裏から操っていると言う人は永田町を含めて多いけど、それは事実と違うし、そもそも太郎を見くびっている。参院選での特定枠の利用や、当事者を候補にするというアイデアも太郎のものです。彼のそういう人たちへの愛というか、思い入れからですよ。もし私が選挙ブレーンという立場にいたら、特定枠1つはいいけど、2つは厳しいと、反対した。太郎が落ちる可能性が高いから。周りの人もみんな反対だったと思う。

政治家の能力は、選挙か政策か政局かって言われるんだけど、その全てで抜きんでている人は、僕らが生きてきた時代では、田中角栄(故人)以外にいない。金集めの力もあった。ただ今回、太郎も集金力を証明した。3カ月で4億円集めた例は過去初めてのことだ。野党への呼び掛けなんかを見ていると、野党のリーダーの中で政局に対して最も積極的に動いているのも太郎だと、僕は思っている。

――7月の参院選には関わらなかった?

僕は、選挙運動は一切していない。でも、僕が今まで一緒に選挙をやってきた人たちが(れいわの選挙の)軸になっている。

――山本さんの欠点は何だと思うか。

欠点と魅力は、すべて裏表。太郎について、好き嫌いがはっきり分かれるってことは、その長所が強烈だってことの裏返しなんだよね。だから、欠点=長所なんだよ。あの胆力は、敵をたくさん作ってしまう。でも強い味方も作る。野党のリーダーは、そういう人でないと無理なんです。だって権力がないんだから。それでも支持者を引き付ける。だから、敵はいていいし、それ以上の味方がいればいい。叩かれないようなやつは、本当のリーダーにはなれない。

今は太郎にとって試練の時期だと、僕は思っている。これまでは小沢(一郎)さんと共同代表だったが、今は山本太郎の個人事務所と個人後援会、いってみれば個人商店です。公党になったから、組織として人の面倒も見ていかないといけない。角さん(田中角栄)を見れば分かるように、リーダーにとって大事なのは、最後は人を見る目。それがないと、人がついてこない。太郎がその目を持てるのか。角さんのように、官僚も含めて人たらしになれるのか。それが彼にとっての分かれ道だ。

衆院選で100人たてるということは、最低1000人のスタッフ、20億のカネが要る。4億は集めたが、20億集めるのは大変なこと。次の衆院選で彼が人を活かせるか、人を見る目を養えるか……今の状況からすれば、決して不可能とは思わない。

――今後、山本さんがつまずく可能性は?

あらゆる事態が想定される。殺されるとかもあり得る。日本の富を独占しようとしている人たちにとっては、石井紘基よりも危険人物だから。

平成は消費税とともに始まり、この30年で経済が、日本が没落していった。今の上皇は、そういう状況にじくじたる思いを持っていると思う。(上皇は)太郎に対しては親近感を持っているかな、と僕は思っている。それを一番感じたのは、(園遊会での)太郎のお手紙事件があったとき。右翼からの批判がすごく、その先頭に立っていたのが昨年亡くなった鴻池(祥肇)さんだった。彼は天皇主義者で、太郎に(ナイフが入った封筒が届いたとき)「切腹用の刀が送られたそうだ」と発言した。そのとき上皇(当時の天皇)は宮内庁の記者会見で「天皇が心配している」と言わせた。太郎のところにカミソリや銃弾が送られてきたりとすごかったのが、この瞬間にぴたりとやんだ。鴻池さんはそれから死ぬまで、太郎の面倒を随分と見てくれた。それは鴻池さんが、上皇のそういう気持ちを感じ取ったからではないか、と俺は勝手に推測している。

参院選では、菅さん(官房長官)を中心にした官邸は、天皇の代替わりキャンペーンを最大の武器にしようとした。ものすごい金を突っ込んでたんだよ。でも太郎が「れいわ」を使った瞬間に、それを封じられたと思う。

――命を狙われる以外では、どんな心配がある?

さっき言ったように、彼が本当に人を見る目を磨かないとつぶされる。人を活かす力をつけないと、何千万の人たちを味方につけ、動かし続けることは不可能だから。

今は太郎から僕に連絡してくることはなくて、僕が言いたいことがあるときに連絡する。太郎には、お互いに言いたいことを言える人がまだ少ないと思う。そういう人を2桁は周りにつけられないと。

その人の個性を生かし、短所を補える人たちがどれだけ周りにいるのか。角さんがなぜあれだけ潰されてもキングメーカーであり続けたかといえば、官僚や自民党の中に、彼が長年かけて関係を築いたそういう人たちがいたからだ。

――野党の中にも、山本さんの味方になりそうな人は。

山ほどいる。それはよく知っている。これだけのスターが野党の中に生まれたのは、民主党が政権を取ったときから10年ぶり。あのときは鳩山さんがどこに行っても、今の太郎と同じくらい人が集まった。今の野党にはそのスターがいなくて苦しんでいる。国民と立民で新党作っても、民主党の焼き直し。太郎だったら、旧民主党と何のかかわりもなく、彼らの裏切りとも関係ない。なぜそれを使わないんだ、と思う。

4年以内に太郎が政権取れなかったら、永遠に総理にはなれないと思う。その4年先も選挙があると思っていたらダメだよ。どんどん選挙はやりにくくなっている。ずっと見ているから分かる。僕は「未必の故意による黙示的共謀」で公選法違反の有罪判決を受けた。政権にとって不都合な存在なら、いつでも誰でも共謀罪で逮捕できる。そんな時代になっちゃった。

実際には自由な選挙なんて、とっくになくなっている。今回の選挙まで、国政選挙で現職の国会議員を有する政治団体が、選挙本番まで諸派で扱われたことは、NHKも含めて、過去一度もなかった。田中康夫の新党にっぽんであろうが、荒井広幸の新党改革であろうが、選挙で2%取ったことがなくても、必ず党名で扱われた。5人の政党要件をクリアしたところと扱いの大きさは違っても、新聞でも、必ず党首の顔写真は出たし、政策も出た。それぐらいメディアが統制されたのは今回の参院選が初めてだった。

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10月29日発売号は「山本太郎現象」特集。ポピュリズムの具現者か民主主義の救世主か。森達也(作家、映画監督)が執筆、独占インタビューも加え、日本政界を席巻する異端児の真相に迫ります。新連載も続々スタート!

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