大学入試の英語民間試験は何が問題なのか 文科相「身の丈」発言で与党に延期論

大学入試の英語民間試験は何が問題なのか 文科相「身の丈」発言で与党に延期論

 大学入試センター試験に代わり来年度から始まる大学入学共通テストで活用される英語民間試験を巡り、「身の丈に合わせて勝負を」と発言した萩生田光一文部科学相は30日、衆院文科委員会で発言について謝罪した。高校現場から「経済・地域格差に不安が残る」として異例の反対論がわき起こる中、感情を逆なでしかねない失言に政府・与党は沈静化に躍起だが、一部延期論も浮上している。

失言の萩生田氏は首相側近 批判は政権を直撃

 「国民の皆さま、特に受験生の皆さまに不安や誤解を与えることになり、おわびする」。萩生田氏は30日の文科委で改めて陳謝した。浮上している試験の延期論については「2020年度からの円滑な実施に向けて全力で取り組みたい」と予定通り実施する意向を繰り返したが、「仮に今より混乱が進む事態が確認できれば、考えなくてはならないという気持ちもある」とも述べ、含みを持たせた。

 今回の対応を誤れば政権への打撃になりかねない。自民、公明両党の幹事長、国会対策委員長は30日、東京都内で会談し、受験生や関係者に不安を与えることのないよう対応するよう文科省に求めることで一致。自民の森山裕国対委員長が同省に申し入れた。会談に出席した与党幹部は「延期も仕方ない、という雰囲気だった。いずれにせよ混乱がないようにしてほしい」と語った。首相官邸幹部も「萩生田氏発言で問題が浮き彫りになった。実施を急がないのも一つの考えだ」との見方を示した。

 ただ、自民党の文科相経験者は「準備を進めているから今さら延期はできない」と指摘。世論の動向をにらみつつ、現時点では格差が生じないような準備に努める方針とみられる。

 大学入試に英語の民間試験を導入する新方針は、17年7月に文科省が決定した。対象の試験は「英検」「GTEC」など7種類。高校3年時の4~12月に2回まで受験し、その成績が志望大学に提供される。「練習」で受けられる回数には制限がない。このため家庭の経済力、地域格差による影響が指摘されていた。与党幹部は「法律でなく行政の決定なので、党内で議論していなかった」と議論不足を認める。

 そもそものきっかけは、13年に安倍晋三首相が設置した教育再生実行会議の入試改革の提言を受け、文科相の諮問機関「中央教育審議会」が14年12月に出した答申だ。読む・聞く・書く・話すの4技能をみることが必要として民間試験導入を打ち出した。「教育再生」は政権の肝いり政策で、萩生田氏は首相側近。批判が広がれば政権を直撃する。自民党の世耕弘成参院幹事長は「極めて政策的な問題」と強調し、官邸幹部も「官邸で引き取る話ではない」と、政権運営に直結しないよう予防線を張る。

 これに対して、立憲民主党など野党4党の国対委員長は30日の会談で、既に衆院に提出した試験導入の延期法案の審議を与党に求める方針で一致した。延期要求の街頭運動を全国で始めることも決め、世論を盛り上げたい考えだ。来月5日に予定される衆院文科委の参考人質疑で、試験実施団体からも状況を聴取する方針も確認した。

文部科学省前には「大学入試改悪やめろ」などと書いたプラカードを掲げる市民が集まり、英語民間試験導入に抗議の声を上げた=東京都千代田区で2019年9月6日、中川聡子撮影

 立憲の安住淳国対委員長は会談後、「萩生田氏がわびて終わる問題ではない。(試験を)延期するか、しないかの問題だ。もし強行するなら、多大な犠牲と多大な傷を我が国の教育に残すことになる」と強調した。【村尾哲、野間口陽】

全国高校長協会は延期・見直しを要望

 英語民間試験を巡っては、9月に、主に公立高校の校長らでつくる全国高校長協会(全高長)が受験生の不安が払拭(ふっしょく)されていないとして延期や制度見直しを求める要望書を文科省に提出した。

 全高長が指摘する懸念はまず、受験開始まで残り半年を切った現時点でも試験会場がはっきりしない点だ。文科省は六つの試験実施団体に対し11月1日までに公表を求めているが、実施団体の中には具体的な施設名でなく、「北海道に5会場」というように都道府県名と会場数だけにとどまるところもあるとみられる。

 受験の申し込みは今後本格化する。ある実施団体の担当者は「受験生の申し込みがあってすべてが動く。受験者数がわからないまま、会場を予約すると、費用が発生する。無料で利用できる提携先の施設だけを公表することになる」と事情を明かす。

所得格差が結果に直結も 高校生は「実験台」と不快感

 受験料の問題もある。現行のセンター試験は1万8000円。新たに導入する大学入学共通テスト(2021年1月)は同額が維持される見通しだが、別途受ける英語民間試験はその都度受験料(5000円台~2万5000円台)がかかる。制度では2回受けられるが、家庭の事情で1回であきらめる受験生も出かねない。試験会場は都市部が多くなるとみられ、離島やへき地の受験生は試験会場が近くになければ交通費や宿泊費がかかる可能性がある。最初の受験生となる、現高校2年のある男子生徒は「実験台にされている感じがする」と不快感をあらわにする。

 文科省は実施団体に低所得世帯の受験料の減免や、へき地の受験生のための会場の増設を求め、来年度予算の概算要求に交通費などを補助する支援策を盛り込んだ。一方、全国の私立中高でつくる日本私立中学高校連合会は全高長の要望書提出後、「生徒は準備を進めている」として「確実な実施」を求める要望書を文科省に提出した。文科省幹部は「延期すればその影響も大きい。できるだけ公平・公正な制度を作って理解を求めるしかない」と話している。【成田有佳、千脇康平、水戸健一】

Categories Uncategorized

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out /  Change )

Google photo

You are commenting using your Google account. Log Out /  Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out /  Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out /  Change )

Connecting to %s

%d bloggers like this:
search previous next tag category expand menu location phone mail time cart zoom edit close