災害大国への処方箋は「防災省」と「地方創生」だ

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災害大国への処方箋は「防災省」と「地方創生」だ

石破茂・元地方創生担当相

石破茂氏=藤井達也撮影

石破茂氏=藤井達也撮影

 台風15号、19号、その後の大雨で被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げますとともに、被災地の復旧・復興に全力を尽くしたいと思っております。

加えて、喫緊、考えなければならないのは、このような災害の多発する事態にいかに備えるかです。私は我が国全体の防災を担う恒常的な組織として「防災省」を設置することを提案しています。

復興庁の単純延長でよいのか

33年、国会に議席をいただいていますが、これだけ災害が頻発するというのは私の経験上もありませんでした。地震、台風、集中豪雨など、その規模も尋常ではありません。日本全国いつでもどこでも何が起こっても不思議ではないのです。かねて首都直下地震、南海トラフ地震は確実に来ると言われています。

東日本大震災を受けて設置された復興庁は2021年3月でその期限が切れます。今のところ、政府はこれを単純に延長する方針のようですが、本当にそれだけでいいのでしょうか。

私は昨年の自民党総裁選において、復興庁を発展的に改組し、内閣府や各省に分散している防災機能を統合する防災省の設置を訴えました。政府の見解は「平時から大きな組織をつくる必然性は見いだしがたい」というものです。しかし、私は無駄に大きな組織をつくろうと言っているのではありません。平時から専門的に防災を担当する組織が必要ではないかと言っているのです。

かつては国土庁という役所があって、防災局という、小なりといえども恒常的な組織に専門家が集まっていました。2001年の省庁再編で国土庁が国土交通省に統合された際、防災機能は内閣府に移管されました。しかし内閣府というのは膨大な所掌を抱え、その所掌も内閣が代わるごとに変わります。

例えば私が内閣府の大臣として担当した地方創生の部局は、総務省、国交省、厚生労働省、農林水産省といったところから職員が2年間来ては戻っていくという組織でした。災害対応には知識の蓄積と伝承が必要ですが、内閣府にはそういった構造的な問題があり、現状のままでは各地域の多様な災害の教訓を一義的に蓄積していくことが困難なのです。

自治体間の能力格差を埋めるのは国の責任

先日、自民党の台風19号非常災害対策本部の会合で、東日本大震災復興加速化本部長の額賀福志郎先生から、災害に対する司令塔機能をもっと強化しなければならないというお話があって、その通りだと思いました。

そもそも東日本大震災の発災後、当時の民主党政権に復興庁をつくるように提起したのは、野党だった自民党です。その時、私は谷垣禎一総裁のもとで政調会長を務めていましたが、災害という緊急事態に与党も野党もない、ということで昼夜を継いで政府と協議しました。これは、日本全体が危機モードに入ったとき、国家の司令塔機能はいかにあるべきか、という問題なのです。

我が国では基本的に災害対応は地方自治体の責任とされています。ですが、全国47都道府県、1724市町村、すべて同じ能力を発揮できるとは限りません。

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 首長、職員、住民の経験、意識の持ち方に自治体によって大きな格差があることは、昨年の西日本豪雨でも顕在化しました。適切な対応ができなかった自治体について、そんな首長を選んだ住民の責任だと言って済ませていいはずはありません。

私は地方創生担当相のときにワシントンのアメリカ合衆国連邦緊急事態管理局(FEMA)を訪ねて長官やスタッフからじっくり話を聞きました。米国でも州や自治体によって災害対応の能力にはばらつきがあります。

しかし、これをできる限り是正し、全米どこでどのような災害があっても同じレベルで対応できるようにそれぞれの地域の能力や装備を高めていくのが国の責任であり、FEMAの大きな役割なのだと。これはまさに我が国にも当てはまることであり、私の考える防災省はこれに近いものです。

防災の司令塔は自衛隊ではない

もう一つ申し上げれば、自衛隊が災害対応部隊、防衛省が災害対応庁だと思われている現状は果たして健全なのでしょうか。自衛隊の本来任務は「主たる任務」と「従たる任務」に分かれますが、「主たる任務」は防衛出動だけです。例えば災害と有事が同時に来た場合、自衛隊は有事対応を優先せざるを得ない。

そんなことが起こりえるのかと言われるかもしれませんが、日本の領土に対して何らかの野心を持っている者がいるとすれば、災害で国力が弱っているときを狙ってくる恐れはあります。危機管理というのは最悪の場合を想定して平時から備えておくべきものです。

そう考えれば、「シビルディフェンス」の議論も避けて通れないのだと思います。「民間防衛」と訳されると、抵抗を感じる人もいるかもしれません。ですが、災害や有事の際に被害を最小化するためには、住民が主体的に避難や救助に当たることができるように平時から準備しておく必要があります。

西日本豪雨で浸水した岡山県総社市の下原地区で犠牲者が出なかったのは自主防災組織の平素からの活動があったからです。そうした防災意識を全国の自治体や住民に持ってもらうことは自衛隊の仕事ではありません。

ダムをつくり、河川を改修する国土強靭(きょうじん)化は進めなければなりません。そうしたハード面の防災・減災事業はこれからも必須ですが、一方で災害の原因をなくすことも考える必要があるのではないでしょうか。

例えば民間においては、潜水艦で低温の海水を汲み上げて海面水温を下げることにより台風の勢力を弱める技術を開発し、特許を取った企業があります。台風に粒子をまいて水蒸気を吸着させ、日本に近づく前に雨を降らせてしまう人工降雨の技術も研究されています。

荒唐無稽(むけい)と思われるかもしれませんが、災害が異次元の局面に突入した以上、従来の発想を超えた新たな取り組みも求められるはずです。それを担当する国の機関も必要なのではないでしょうか。

東京一極集中に潜在する国家的危機

このように考えれば、平時から防災の司令塔となって必要な装備を準備し、訓練を計画・実施し、それによって国民の意識と自治体の能力を高め、各地の経験と教訓を蓄積して新たな計画に反映し、新たな技術開発にも取り組む専門機関は必要不可欠ではないでしょうか。

「防災省など屋上屋を架すようなもの」という批判は全く当たらないと思いますし、私が提案しているからダメだという人もいますが、例え野党が言ったことだとしても良い政策であれば取り入れるのが自民党です。党内で活発に議論すればいいと思います。

災害対策は安倍政権の看板政策である地方創生の根幹にもかかわってくるものです。東京一極集中によって、災害に対して脆弱な東京にヒト・モノ・カネが集まって世界一危険な都市となっていますし、出生率が最も低い東京にヒトが集まるから日本全体の人口が減っていくのです。

東京一極集中によって効率的に国力を高めようとしてきた従来の国家運営は高度経済成長期のモデルであり、それを是正しようというのが地方創生です。人口減少は先進国の病のように言われますが、首都だけが繁栄して地方が疲弊している国など、ヨーロッパにはありません。

地方創生によって地方を元気にし、防災省を司令塔として全国どこでも安心して暮らせるまちづくりを進めていくこと。これが災害頻発国となった日本に対する私の処方箋です。

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