6日の衆院予算委員会の集中審議では、導入が延期された英語民間試験の問題に焦点が当たった。延期ではなく、「白紙撤回」を求める野党側は、同様に教育現場で不安が広がる国語や数学の記述式にも矛先を向けた。閣僚の辞任が相次ぐ中、安倍晋三首相の答弁にも、苦しさがにじんだ。

 「学校に関して市場原理や民営化、民間の考え方を過度に入れることは問題だ」

 立憲民主党大串博志氏は、「民間ありき」で英語民間試験の活用に突き進んだのではないかと政府側をただした。大串氏が疑いの目を向けたのは決定過程にだれが関与したのか、透明性は担保されたのかという点だった。

 大串氏は、文科省内で共通テストを議論した「検討・準備グループ」の一部議事録が非公開となっていることを問題視。さらに、英語民間試験実施に伴う地域格差経済格差の問題などを議論してきた有識者会議「英語4技能評価ワーキンググループ」の議事録も非公開なことから「ブラックボックスだ」と断じた。萩生田光一文科相も、それぞれの公開を検討する方針を明言せざるを得なかった。

 大串氏は、英語民間試験の実施団体の関係先に文科省次官経験者らが再就職していた点などを挙げ、「民間に利益が及ぶような形で考えられているんじゃないかという疑念を呼ぶこと自体、大きな問題じゃないか」と指摘。文科省が新たな制度を見直す検討会に試験の実施団体関係者が加わるのか聞いた。萩生田氏は対応を明言せず、「構成メンバーに民間の企業の方、どなたか入ってもらうことを今から考えているつもりはないけれども、ヒアリングはさせていただきたい」と答弁した。

国語と数学の記述式問題にも飛び火

 批判は英語に加え、国語と数学の記述式問題にも飛び火した。

 共通テストでは、マークシートで選択肢を選ぶだけだった大学入試センター試験と異なり、国語や数学にも記述式問題が導入される。50万人もの受験者の記述式問題の答案を短期間に採点するには、約1万人の採点者が必要とされる。このため、学生アルバイトらが含まれる採点者の質や採点結果にぶれが出ることなどが、高校教師や生徒の間で懸念されている。

 学生バイトによる採点も省として想定しているのか確認され、萩生田氏は「結果としてさまざまな属性の方が含まれ得ると承知しております」と説明した。

 採点方法が不明確なため、受験者による自己採点が難しいとの問題もある。審議では、昨年度に行われた試行調査で、国語は約3割の受験生の自己採点とセンターの採点結果が一致していなかったことも取り上げられた。自己採点をもとに2次試験への出願を考える受験生にとっては死活問題だ。

 記述式の採点について、文科省通信教育大手ベネッセの関連企業と単独での委託契約を結んでいる。立憲の川内博史氏は「短期間に採点の質を担保しながら民間事業者にやってもらうことが可能だと考えるか」と質問。首相は「まったく知識がございませんので、軽々にお答えすることは差し控えたい」と答弁した。

 厳しい追及にも、萩生田氏は記述式を続ける方針を崩さなかった。理由として「(文科省がベネッセ側に)改善点を常に申し上げることができる」と説明。文科省が改善指示を実施団体に直接出せない形だった英語民間試験とは、仕組みが違うと強調した。(矢島大輔)

野党「責任取るのか」、首相は「痛感」

 野党は、連続辞任した菅原一秀前経済産業相、河井克行前法相に対する安倍首相の任命責任の取り方を追及した。「実際、何を責任として取るのか。はなはだ怪しい」。立憲民主党大串博志氏は、第2次安倍政権の発足から「失言などで辞任した閣僚は9人」と指摘し、首相がどう責任を取ったのか明確にするよう迫った。

 他の野党も「任命責任をどう取るのか」と繰り返しただしたが、首相はその度に用意した答弁書に目を落とし、「責任を痛感している」「国政を前に進めることで責任を果たす」などと、これまでと同様の言葉を繰り返すばかりだった。

 野党側はさらに「事実関係を聴取したのか」「自民党総裁として(辞任閣僚に)説明を促す考えはないか」と具体的な対応を取るよう求めた。だが、首相は「2人は記者会見で説明している」「2人の責任において説明されるべきものだ」とかわし続け、自らの任命責任にも踏み込んで説明することはなかった。(永田大)