改憲遠のき…東京五輪レガシー執着で直面する経済危機

ようやく安倍政権の終わりが始まる。参院選で自公与党と日本維新の会を合わせた改憲勢力が3分の2を割ったからだ。
安倍政権が衆参両院で絶対多数を握っていたことで予算委員会が3カ月も開かれなかった。モリカケ疑惑で明らかになった国家の私物化、公文書や統計の改ざんもやりたい放題だった。3分の2割れは「独裁政治」を打破する大きな一歩だ。同時に、安倍首相の悲願である憲法改正に向けた発議は事実上不可能になった。
安倍に残された目標は来年開催の東京五輪を盛り上げるほかなくなる。今後、公的年金の財政見通しを示す「財政検証」が発表されれば、年金給付削減は現実味を帯びる。金融庁報告書に端を発した老後資金2000万円不足問題は収まりがつかないし、年金受給開始年齢の引き上げもくすぶるだろう。
アベノミクスの失敗は露見し、いよいよ経済政策は空っぽになる。何より、米中貿易戦争のあおりで、今年の輸出額は7カ月連続で減少し、名目賃金は5月まで5カ月連続でダウンしている。景気が後退局面に入っていることは明らかだ。頼みの輸出がダメになり、賃金は下がり、消費が落ち込む――。そのタイミングで、消費増税の悪影響を免れることができるだろうか。とりわけ重要なのが欧州の動向だ。英国のEU離脱期限が10月末、欧州最大のドイツ銀行は経営危機にあり、イタリアの財政危機も眠っている。消費増税はバッドタイミングとしか言いようがない。
経済が落ち込めば、世論のみならず、国会も騒がしくなる。参院で3分の2を失った安倍は、解散カードをチラつかせてニラミを利かせることはできないだろう。ポスト安倍をうかがう自民党の岸田文雄政調会長や石破茂元幹事長も黙っていないだろうし、野党は政権構想を打ち出す可能性もある。
安倍が五輪までしがみつけば、11月20日に在職日数は桂太郎の2886日を抜き、史上最長政権に躍り出る。しかし、延命すれば経済がますますひどい状態に突入するリスクがある。政権を投げ出せば責任を後継に押し付けて逃げられるが、さりとてレガシーにこだわれば、最悪局面に立ち会うことになる。To be or not to beだ。