「桜を見る会」参加者が語る 「ファンの集い」と「往復する首相」
「アイドルのファンミーティングみたいだった」。「税金の私物化だ」と批判が高まっている首相主催の「桜を見る会」に複数回参加したことのある、安倍晋三首相の後援会関係者の男性が14日、毎日新聞の取材に応じた。東京都内在住の自営業の男性で、当日の様子や地元の事情を打ち明けた。【江畑佳明/統合デジタル取材センター】
男性は今春の「桜を見る会」に、家族と一緒に出向いた。自身に招待状が届き、安倍政権になってから毎年足を運んでいるという。
会場に到着すると、招待状を示せば入場できる。身分証の提示などは求められず、本人確認は行われなかった。ただ、かばんを開けて係員に見せるなど、所持品のチェックはあった。
「参加者が年々増えてきている」。男性はそう感じた。見渡せば政治家が「ああ、いつもどうも」といったあいさつをしていて、テレビで見たことのある芸能人や有識者らしき人の姿が目に入った。晴れの場ということもあり、参加者はほとんどが正装。男性もスーツ姿で、「華やいだ雰囲気が漂っていた」と振り返る。あちこちで写真撮影が行われていた。
屋台のようなところで焼き鳥などがふるまわれ、行列ができていた。日本酒や紙コップ入りのお茶があり、箱入りのお菓子も置かれ、お土産用に持ち帰る人もいたという。男性はあまり飲酒しないため、焼き鳥を少し食べてお茶を飲んだという。
「当日の安倍首相は本当に忙しそうだった」と振り返る。「開始時刻前、貸し切りバスで駆けつけた後援会会員との撮影は恒例」という。グループ10人程度と安倍夫妻が1枚の写真に納まる。桜と安倍夫妻とともに撮影できるスポットを二つ用意して、それぞれ10人くらいの支援者がスタンバイする。その間を首相夫妻が何度も往復して撮影を行うという。「数メートルの距離ではありますが、安倍さんが何度も行ったり来たりしている。それは大変そうでした」
また開会中も、会場を走り回って撮影に応じる安倍首相の姿が何度も報道されているが、さながら、アイドルのファンサービス、感謝祭みたいだ。
そもそも、なぜこんな地元サービスをするのだろうか。男性は「安倍さんが自身の選挙で負けるという事態は考えられないので、選挙だけを考えると、ここまでのサービスをする必要はない」と指摘する。
「しかし」と男性は続けた。「安倍さんは義理堅い面があるから、地元にほとんど帰れない以上、桜を見る会ではその分も、という思いがあるのかもしれない。でも、地元では『あいつには招待状が来てるのに、うちが行けないのはおかしい』というやっかみみたいな感情があり、後援会としてはこれを無視できない。希望者の線引きが非常に難しくなり、『じゃあ行きたい人どうぞ』となったのではないか」と語った。
最後に「確かに、後援会の人たちが税金で飲み食いするのはよくない。国民が納得できないから一度中止して、招待基準を明確化するのは正しい判断だと思う」と話した。
大阪府寝屋川市生まれ。1999年入社。山形支局を振り出しに、千葉支局、大阪社会部、東京社会部、夕刊編集部、秋田支局次長を経て、2018年秋から統合デジタル取材センター。興味があるのは政治、憲法、平和、ジェンダー、芸能など。週末は長男の少年野球チームの練習を手伝う。