国の税金を使って首相が主催する「桜を見る会」に、「反社会的勢力」とみられる人物が出席していたとして、野党が追及を強めている。政府は「招待者については個人情報」として確認を拒むが、野党は出席の有無や推薦・招待の経緯など、説明責任を果たすよう政府に求めている。

 追及の発端は、ネット上にアップされた画像だ。菅義偉官房長官とある男性が、桜を見る会とみられる会場で握手を交わす場面が写っている。この画像をもとに、立憲民主党の杉尾秀哉氏が21日の参院内閣委員会で「そういう(反社会的勢力とみられる)グループのメンバーの一人が菅長官と写真を撮って、ネットに出ている」と問うた。

 これに対し菅氏は「ご指摘の人物は面識はない」と述べたうえで、セキュリティー対策の見直しに言及。26日午後の記者会見では「(反社会的勢力とみられる男性がいたとの)指摘を受けたことは事実。結果的に入られたんだろうと思う」と述べた。

 こうした状況を踏まえ、立憲の安住淳国会対策委員長は27日午前、記者団に「桜を見る会にふさわしくない人がなぜ会に入って、税金で酒を飲んだり食べ物を食べているのか。経路を調べないと国民の不信感は頂点に達する」と述べ、国会で事実関係を明確にしていく考えを示した。

 ただ、27日の衆院法務委員会で警察庁の担当者は「名簿など受け取っておらず出席者の詳細は把握していない」と答弁。内閣府の担当者も「個人情報なので回答を控える」と繰り返した。

 野党は、芸能界を含め反社会的勢力とみられる人物との関係に社会が厳しい目を向ける中、「当然、政府も社会的制裁が必要になる」(共産党穀田恵二国対委員長)とし、菅氏の責任にも焦点をあてる。ただ、菅氏は27日の記者会見では「(反社会的勢力の)定義が一義的に定まっているわけではない」「私自身は(出席を)把握していない。反社会的勢力桜を見る会に出席したと申し上げたわけではない」と述べるにとどめた。(井上昇、安倍龍太郎)

議論の前提あいまい

 国の税金を使って首相が主催する「桜を見る会」をめぐって、出席者の中に「反社勢力(反社会的勢力)がいる」と野党側が指摘した。「反社会的勢力」をめぐっては今年、吉本興業の芸人が、振り込め詐欺グループなどの宴会に参加して金銭を受け取ったことが問題になった。そもそも反社会的勢力とは何を指すのか。

 政府は2007年、犯罪対策閣僚会議で「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」をまとめている。

 この指針では反社会的勢力について、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人」とし、属性要件として、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団などが挙げられている。

 さらに、行為の要件として、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求にも着目することが重要だと説明している。

 「どのような人が反社会的勢力なのか、定義があいまいなまま議論されている」と話すのは斎藤理英・東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会委員長だ。

 暴力団を想起させる入れ墨がある人、犯罪者だからといって、「必ずしも反社会的勢力とは言えない」と指摘する。後に摘発される人物と写真に納まったとしても、撮影時期に犯罪行為が発覚していなかった場合、責任を追及するのは難しいという。

 一連の桜を見る会の問題については、「政府が公式行事としてやるものなので、招待者については慎重になるべきだ。参加者リストを出せばいい。出さないと、後ろめたいことがあったと思われても仕方がない」と話す。(関口佳代子)