賛成反対が拮抗 大阪都構想のまやかし1-9

吉富有治
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吉富有治ジャーナリスト

1957年、愛媛県生まれ。大阪在住。金融専門誌、写真週刊誌「FRIDAY」の記者などを経てフリー。地方自治を中心に取材し、テレビのコメンテーターや雑誌などに寄稿。著書に「大阪破産からの再生」など。賛成反対が拮抗 大阪都構想のまやかし

<1>自民は踏み台、公明は抱き込み…松井代表のこすい戦略

公開日:2020/10/21 06:00 更新日:2020/10/21 06:00

18日、公明党の山口代表(左2)も大阪入りし賛成呼び掛け(C)日刊ゲンダイ
18日、公明党の山口代表(左2)も大阪入りし賛成呼び掛け(C)日刊ゲンダイ

 大阪市を廃止して特別区を設置する構想の是非を問う住民投票(11月1日投開票)が迫っている。世間やマスコミは「大阪都構想」と呼ぶが、正式名称は「大阪市廃止・特別区設置構想」である。賛成多数となれば政令指定都市の大阪市は消滅するが、「大阪都」に変わるわけではない。

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さて、この構想の住民投票が再び行われると言うと、「えっ、また?」とけげんな顔をされることが多い。無理もない。2度目の住民投票へ至る経緯が複雑怪奇だからである。

1度目の住民投票は2015年5月に実施され、わずか1万票ほどの差で反対票が賛成票を上回った。このとき私を含め、誰もが都構想は終わったと考えた。    ところが、ここから大阪維新の会の逆襲が始まる。維新の代表だった橋下徹大阪市長(当時)は住民投票の敗北を機に政界を去るが、新たに代表になった松井一郎氏(現大阪市長)は2度目の住民投票に向けて密かに始動した。

まず住民投票から約2カ月後の15年7月、自民党大阪府連の提案で府市の二重行政を解消する「大阪戦略調整会議」がスタートした。

ところが会議は冒頭から荒れ、わずか3回で頓挫。してやったりの維新は「ポンコツ会議」だと自民を罵り、やはり都構想は必要だという印象を世間に広めることに成功した。

次に、15年11月の大阪府知事選、大阪市長選で維新が自民候補をダブルで破って勝利。それから2年後、17年6月には2度目の住民投票を想定した法定協議会が公明党の賛成もあって再スタートした。

ところが18年12月、維新と公明が水面下で密約を結んでいたことを松井一郎大阪府知事(当時)が暴露。知事の任期中に住民投票をやる約束がほごになることを恐れ、公明を罵倒した。    これがきっかけとなり松井知事と吉村洋文市長(いずれも当時)はダブル辞任。昨年4月実施の統一地方選にブツけ、知事と市長を入れ替えて出馬するクロス選挙に臨み、維新が圧勝。維新は府市の両議会を完全に牛耳り、逆に自民は府市とも議席を大幅に減らした。

それまで維新と都構想にも反発していた公明だが、この選挙を機に維新の軍門へと下り、2度目の住民投票がいよいよ現実になったのである。(つづく)

<2>市民は住民投票の正式名称で大阪市廃止を初めて知った

公開日:2020/10/22 06:00 更新日:2020/10/22 16:01

論点ズラシのごまかしトーク(街頭演説する松井一郎大阪市長)/(C)日刊ゲンダイ
論点ズラシのごまかしトーク(街頭演説する松井一郎大阪市長)/(C)日刊ゲンダイ

 大阪市で実施される住民投票(11月1日投開票)の正式名称は「大阪都構想の賛否を問う住民投票」ではなく、「大阪市廃止・特別区設置住民投票」である。これは大阪市選挙管理委員会が決めた名称で、ここには「大阪都構想」の文字はない。

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いわゆる都構想とは大阪維新の会が最大の政策とする彼らの政治的理念であり、本来は役所が使う用語ではない。今回は市民からの陳情もあり、この名称になった。

「今回は」と断ったのは、前回は「大阪市における特別区の設置についての投票」が正式名称で、そこには「大阪市廃止」の文字がなかったからだ。だが、大阪市の廃止こそが同構想の最大のポイントであり、維新にとっては“不都合な真実”のようである。     「ゴジラが街を踏みつぶすわけじゃあるまいし、大阪都構想で大阪市がなくなるわけがない。なくなるのは大阪市役所であり大阪市議会だ」などと訴えていたのは維新の会代表の松井一郎大阪市長である。維新の議員たちも同様のセリフを口にし、この言葉を信じる大阪人も多かった。しかし、松井氏の主張は事実の一部を語っても真実をワザと伏せている。

いわゆる都構想の根拠法である大都市法の第1条には〈この法律は、道府県の区域内において関係市町村を廃止し〉とその目的がはっきりと書かれている。松井氏が言うように大阪市役所や大阪市議会がなくなるのは事実だが、その大前提として大阪市の廃止がある。ましてや基礎自治体である政令市がなくなる話をしているのに「ゴジラが街を踏みつぶす」といった絵空事など論外でしかない。

実は選管が「大阪市廃止・特別区設置住民投票」を正式名称にするかどうかを決めるとき、市長である松井氏から「大阪市廃止ではなく大阪市役所廃止にしてほしい」という横やりが入ったと聞く。だが、選管はこれを拒否。前回の住民投票では入らなかった「大阪市廃止」の文字が今回から新たに入った。

この効果は大きい。私の周囲にも「大阪市がなくなるとは知らなかった」「大阪市がなくなるなら反対や」と答える人が何人もいたほどだ。これこそ維新にとってよほど都合の悪いことなのだろう。 (つづく)

<3>「イソジン」で化けの皮が剥がれるも推進派が盛り返し

公開日:2020/10/23 06:00 更新日:2020/10/26 12:09

この会見で大炎上(吉村府知事と松井市長=左)/(C)共同通信社
この会見で大炎上(吉村府知事と松井市長=左)/(C)共同通信社

 いわゆる大阪都構想をめぐり、ABCテレビとJX通信社は9月中旬から情勢調査を毎週実施し、特設サイト「大阪都構想 住民投票2020」で結果を配信している。

 サイトによれば9月19~20日の調査では賛成49・1%、反対35・3%と13・8ポイント差で賛成が大きくリード。それが9月26~27日には賛成47・8%、反対36・8%と11ポイント差に縮まり、今月10~11日には賛成45・4%、反対42・3%と、その差は3・1ポイントまで縮まった。ところが、17~18日の最新調査では一転して賛成が増加。賛成47・9%、反対40・4%と、7・5ポイント差まで開いてしまった。

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今月初旬に賛否の差が縮まった理由は、ひとつには大阪府の吉村洋文知事(大阪維新の会代表代行)の人気に陰りが見えてきたことだろうと思われた。

新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、吉村知事は当初、休業要請や解除などの独自基準「大阪モデル」を打ち出したり、製薬ベンチャーが開発するワクチンを「9月には実用化を進めたい」と言ったりと、その矢継ぎ早なアピールが大阪府民に安心感を与えた。連日のテレビもさらに人気を爆発させた。

しかし、「9月のワクチン実用化」はどこかに消え、大阪モデルも基準をコロコロ変えたことで府民は混乱。特にひどかったのが「イソジン発言」だろう。吉村知事は8月上旬の記者会見でポビドンヨードを含むイソジンなどが「コロナにある意味打ち勝てるんじゃないか」と紹介。この会見を全国ネットのテレビ番組がリアルタイムで報道し、全国の薬局からイソジンなどが消える騒ぎまで起きた。

案の定、専門家から異論が続出。ネットでは「イソジン吉村」とバカにされ、慌てた吉村知事は「ポビドンヨードは、コロナを予防できるわけではない」とトーンダウン。案外、化けの皮が剥がれるのも早かったようである。だが、ここにきて維新や公明党などの推進派の運動が功を奏したのか、情勢は再び賛成が増加しつつあるようだ。

もっとも、住民投票は人気投票ではない。大阪市廃止の是非を問うものである。有権者も表面的な現象に惑わされず冷静な判断をしてほしいものである。

<4>要のカジノは風前の灯…経済効果はいまだに明示されず

公開日:2020/10/24 06:00 更新日:2020/10/26 12:11

予定地の人工島「夢洲」(手前)は”悪夢洲”に(C)共同通信社
予定地の人工島「夢洲」(手前)は”悪夢洲”に(C)共同通信社

 いわゆる大阪都構想が目指すものは成長戦略と二重行政の解消、そして住民に近い基礎自治体、この3つだ。

 この成長戦略は経済成長を意味し、大阪市を廃止して4つの特別区を設置すれば大阪は首都東京のように経済発展すると維新の会は説明する。これがホントなら万事メデタシだが、話はそれほど簡単ではない。

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いわゆる都構想の設計図である特別区設置協定書に成長戦略の具体案は示されていない。参考として、大阪市を廃止して4つの特別区をつくれば10年間で約1兆1000億円もの歳出削減効果が生まれ、その余剰金の一部を投資に回せば約5000億円から約1兆円の経済効果が生まれるという某大学のリポートがある程度だ。しかし、このリポートこそ成長戦略の理論である。    ところが特別区が担う仕事の何を削れば1兆円超のコストカットが生まれ、何に投資すれば5000億円以上のリターンがあるかの記述はない。むしろ特別区がせっせとコストカットに励めば住民サービスが削られるデメリットさえ多くの識者から指摘されている。

実は、都構想の具体的な成長戦略と呼べるものは2025年の大阪・関西万博、IR(カジノを含む統合型リゾート)誘致、インバウンドしかないのだ。その中でも最大の柱がカジノである。

唯一、大阪に進出を決めている事業者が米MGMリゾーツ・インターナショナル。ところが同社はコロナ禍の影響で営業不振に見舞われ、従業員1万8000人の解雇を発表した。ラスベガスでの営業を再開したが、コロナ禍の収束まで厳しい営業を強いられるのは確実だろう。

今のところMGMは大阪進出を断念していないが、当初予定していた投資額よりはスケールダウンする可能性があり、投資に見合うリターンがないと経営陣が判断すれば進出断念もあり得る。      そうなれば大変だ。万博とカジノの会場予定地は大阪湾に浮かぶ埋め立て地の夢洲。カジノが来なければ万博後の夢洲はぺんぺん草が生える不良資産になるかもしれない。夢洲が“悪夢洲”にもなりかねない。

「正直、カジノが大阪に来ることは半分諦めている」とは大阪市の幹部職員の弁。成長戦略といえば聞こえはいいが、実態はこの程度のものでしかない。 (つづく)

<5>まるで忠犬ハチ公 エリート実動隊・副首都推進局の正体

公開日:2020/10/27 06:00 更新日:2020/10/27 06:00

大阪市はパンフレット発行でも推進(C)日刊ゲンダイ
大阪市はパンフレット発行でも推進(C)日刊ゲンダイ

 大阪市役所に「副首都推進局」という部署がある。主に大都市制度に関する事務を扱い、いわゆる大阪都構想の根幹部分である大阪市廃止と特別区設置を具体化するブレーン的な存在だ。大阪府と大阪市のエリート職員のおよそ40人ずつからなる混成部隊である。

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この副首都推進局は、いわゆる都構想を推進する大阪維新の会と公明党にすこぶる評判が良い。逆に、反対派からは「公務員というより維新の外郭団体」「推進派の“忠犬ハチ公”」という不満が強い。それも無理はない。

住民投票(11月1日投開票)を前にして大阪市は、市民の理解が進むよう説明パンフレットなどの広報紙を発行している。編集に携わるのは主に副首都推進局。この広報紙は行政が出す以上、本来なら政治的に公正・公平・中立である必要がある。ところが、その内容たるや、維新のパンフかと見まごうほど。都構想のメリットばかりが強調され、反対派の自民党や共産党が指摘したデメリットの記述はないのだ。    実は、パンフなどに関する大阪市の内部会議で、市の特別参与である大学教授とグラフィックデザイナーから「広報というより広告」「バラ色の表現は避けたほうがいい」と何度も指摘されていた。だが微修正にとどまる程度で、大阪市はまるで馬耳東風。それどころか、副首都推進局の幹部らは「市長の掲げる都構想実現を目指すのが役割」「賛成に誘導するため」と発言していたというから呆れてしまう。

この「誘導」発言は松井一郎市長も「不適切な発言」としたが、市長も「市が都構想を推進する立場で広報を行うのは当然」とまるで反省がない。一事が万事この調子。副首都推進局が「維新の“忠犬ハチ公”」と批判されるのも無理はない。

大阪市を廃止するかどうかの最終判断は大阪市民に委ねられている。行政の役割は「賛成に誘導」することではなく、デメリットを含む情報も示して市民の最終判断を待つことだ。松井市長と副首都推進局の行為は、市民の自由判断を奪っているにも等しい。

政府にしろ大阪にせよ、行政が世論を一方的な方向へと誘導する昨今の日本。危険な兆候だと思って間違いない。

<6>維新と一体化した公明党 6年でひれ伏し今や推進派に

公開日:2020/10/28 06:00 更新日:2020/10/28 06:00

グータッチの契り(街頭演説に駆け付けた、左から、公明党の山口代表、大阪の松井市長と吉村府知事)/(C)日刊ゲンダイ
グータッチの契り(街頭演説に駆け付けた、左から、公明党の山口代表、大阪の松井市長と吉村府知事)/(C)日刊ゲンダイ

 なぜ政令指定都市廃止の賛否を問う住民投票が大阪市で繰り返されるのか。その答えは公明党にある。公明の「貢献」がなければ住民投票は2度も実施されなかっただろう。もちろん、ここで言う「貢献」は嫌みである。「日和見」「ご都合主義」「裏切り」と言い換えても良い。

 1度目の住民投票は2015年5月に実施された。公明は当初、大阪都構想にも住民投票にも猛烈に反対。都構想の中身を議論する法定協議会でも自民党と足並みをそろえ、空転させた。住民投票は行われないだろうと誰もが考えていた。

事態が一変したのは、その半年前。読売新聞1面トップに「公明党 住民投票賛成へ」(14年12月26日付朝刊)という大見出しが躍った。公明の大阪府本部は大阪維新の会と水面下で手打ちし、法定協の再開を条件に住民投票には賛成すると態度を変えたのだ。    もっとも、公明の大阪府議や大阪市議らは寝耳に水。読売のスクープから数日後、大阪本部で開かれた党幹部らによる説明会では、突然の方針転換に納得できない府議や市議らの質問と怒号が飛び交い、大阪本部の幹部らはまともに答えられなかったという。

公明はなぜ日和ったのか。選挙事情が影響したとみられている。公明にとって大阪は衆院小選挙区から4人を送り出す牙城だ。そこに刺客を送ると維新に揺さぶられ、支持母体の創価学会ともども従ったと伝えられている。その話を裏づけるかのように、公明の某市議は私に「大阪本部の幹部が東京に呼ばれ、創価学会の某副会長から住民投票に賛成しろと迫られた」と打ち明けた。また、この説明会にはなぜか学会の関西幹部の姿があったという。参加した某府議は「おそらく党大阪本部の幹部らが口をすべらせないかニラミを利かせていたのだろう」と語っていた。

 維新は昨年4月の統一地方選にブツけ、大阪府知事と大阪市長を入れ替えるクロス選で大勝。民意が都構想に味方したことが大きな要因だ、と公明は説明する。住民サービスの維持など4つの条件を付けつつも、今や維新と一体化した都構想推進運動を展開している。

 だが、個々の議員の本音はどうなのか。某大阪市議は「組織に縛られているので本音は言えない」と苦しい表情で私に何かを語っていた。

<7>4特別区再編「住民に近い基礎自治体」は数字のマジック

公開日:2020/10/29 06:00 更新日:2020/10/29 06:00

決戦まで残り4日(C)日刊ゲンダイ
決戦まで残り4日(C)日刊ゲンダイ

 いわゆる大阪都構想をめぐり、推進派は「住民に近い基礎自治体」をメリットのひとつに挙げるが、それもいかがわしい。都構想が実現すれば、大阪市は廃止され、4つの特別区に再編される。そこで、推進派はこう主張する。人口270万人規模の大阪市の市長よりも、4分割されて60万人規模となる特別区の区長の方が地域のニーズに合った政策が可能になる。地域の安全対策や子育て支援など、区民の要望を区長が拾い上げて住民サービスに生かせる――。

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 だが、これは単なる数字のマジックでしかない。「地球から冥王星までの距離は48億キロ。土星までは15億キロ。土星のほうが近いので行きやすい」と言っているようなもので、どちらも人類が遠征するのは困難だ。特別区の人口は政令指定都市並みの規模であり、区長1人が区民全員の声を聴くことなど不可能だろう。

人口約50万人の某中核市の市長も以前、「私1人で市民を見る? 絶対に無理」と呆れていた。270万人も60万人も1人の首長がカバーできる数字ではない。

そこで推進派は、特別区になっても現在の区役所は維持され、特別区ごとに地域協議会を設置するので住民の声を区政に反映しやすいと説明する。現行の24行政区にも住民の声を聴く区政会議が存在する。わざわざ金をかけて特別区を設置する意味がわからない。   ADVERTISING  

それより問題なのは、住民の声がダイレクトに届く区議の定数が特別区に再編されても増えないことだ。区議の総数は市議会議員の定数と同じ83人。人口60万人規模の特別区に議員はそれぞれ20人前後しかいない。ちなみに、人口約58万人の東京・杉並区の区議定数は48人だ。

議員は地域活動として住民の声に耳を傾け、その声を行政に反映する。むしろ議員こそが住民に近いのだが、特別区が誕生しても区議の総数が現状と変わらないのなら「住民に近い基礎自治体」も看板倒れになるだろう。

<8>市試算でコスト増218億円 職員嘆くブラック、ハリボテ

公開日: 更新日:
都合が悪い指摘にはケンカ上等(C)日刊ゲンダイ
都合が悪い指摘にはケンカ上等(C)日刊ゲンダイ
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 大阪市廃止・特別区設置の是非を問う住民投票(11月1日投開票)が3日後に迫った。推進派も反対派も連日、大阪市内の街角で熱い演説を繰り返している。一方、聞こえてこないのが消滅する側の当事者である大阪市職員の声だ。仕方がない。彼らは公務員であり、政治的な発言は控えている。ウカツなことを言おうものなら、庁内で犯人捜しが始まると恐れている。それでも何人かに本音を聞いてみた。

 大阪市の現状はどうなのか。市職員の採用について知人の大学教授は「優秀な学生は大阪府や大阪市への就職を避け、京都市か神戸市を希望している」と語っていたが、市幹部も認めていた。

 

「大阪市は今やブラック自治体のイメージが広がり、大学などに教員や行政職、また技術や福祉の職員を求めても人材は来ない。競争率は数倍あるが、あれは見せかけ。大阪市が内定を出しても、優秀な人材ほど併願先の自治体に逃げていく」

 松井一郎市長は「市長1人で270万人の市民を見るのは不可能」と言っていた。普段から市民と親しく接した経験から「不可能」と断じたのかと思っていたが、選挙活動以外で松井市長が市民の輪に入った話など、とんと聞いたことがない。市長スケジュールを見ても「公務日程なし」の多さが異様に目立つ。「不可能」なのではなく、最初から市民と接する気などゼロのようだ。

 大阪市の権限の一部を大阪府に移しても大丈夫なのか。これも市職員の生の声だ。

「大阪市廃止後は市の権限である都市行政が大阪府に移るが、府の職員は経験も能力もない。『都市計画室』の部屋はあっても中身はハリボテ。結局は“元市職員”にやらせるしかないだろう。このような看板倒れの計画は(府市共同部署の)『副首都推進局』がエクセルを使って数合わせをしているだけで、リアリティーが全くない.

 次に財政だ。市財政局の試算では、市を単純に4分割した場合、標準的な行政サービス実施に毎年必要なコスト「基準財政需要額」が合計約218億円増になると報じられた。

 つまり、コスト増だ。財政基盤は弱まり、住民サービス低下の懸念が高まる。大阪維新の会代表の松井一郎大阪市長は「計算方法がそもそもない」などと反論しているが、いかにも苦しい。

 財務に詳しい大阪市関係者は「大阪市は市場からボンド(公募地方債)で資金調達している。これができるのは都道府県と政令指定都市に限られ、特別区では不可能。特別区の資金調達は銀行などとの相対取引になり、今後は調達コストの増加が予想される」と語る。給与支払いなどの仮払いに利用していた市の一部会計が府に移るため、特別区は月々の資金繰りに苦労するだろうとも指摘した。

「市職員の本音は都構想に反対」「府職員の多くも大阪市廃止など論外と思っている。でも声を上げると処分粛清なので黙って仕事している」「大阪府と大阪市はブラック自治体、まるで北朝鮮だ」と嘆く府市職員がいたことも紹介しておく。=つづき

<9>両陣営は必死ラストスパートも…深まる大阪市民の分断

公開日: 更新日:
山本太郎氏も「あかん!都構想」/(C)日刊ゲンダイ
山本太郎氏も「あかん!都構想」/(C)日刊ゲンダイ
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 大阪市を廃止し、東京都のような特別区に再編するのか。政令指定都市を維持するのか。

 決戦となる住民投票の投開票は、いよいよ2日後だ。推進派、反対派の両陣営とも議員やボランティアが市内の主要駅周辺や商店街でビラを配り、街宣カーを走らせて支持を呼び掛けている。

 

 大阪維新の会代表の松井一郎市長も連日、街頭でマイクを握る。

「反対派は無責任だ。都構想の中身がわからなかったら反対に入れろと言っている。我々はそんな無責任なことは言わない。わかってもらえるまで私が説明する」

「政令市という枠組みが自民党、共産党にはよほど居心地がいいのだろう。皆さん、共産党のデマや嘘ビラにだまされないように」

 演説は毎度ワンパターン。にもかかわらず、聴衆が拍手で応じるあたり、維新の支持者しか聞いていないようだ。
 

 れいわ新選組代表の山本太郎氏も反対運動に参戦した。その熱弁に多くの人が足を止め、聞き入っている。「大阪市のための財源、権限が大阪府に移る。大阪府による『カツアゲ』『ネコババ』が始まる」と批判は容赦ない。25日午後、JR大阪駅前。演説を終えた山本氏を直撃し、なぜ大阪都構想に反対するのか聞いた。

「前回2015年の住民投票で『負けたら政治家を辞める』と言っていた人が辞めていない。今回は公明党が手のひらを返した。賛否のパワーバランスが崩れ、(推進派の)説明も詐欺的なものになっている。これはマズいと思うようになった」


 住民投票をめぐる運動で前回とは大きく変わった点がある。多くの市民が積極的に活動し始めたことだ。その傾向は反対派が顕著で、市民が都構想の問題点をよく研究し、ツイッターなどで冷静な批判を展開している。彼らの大半は特定政党のヒモ付きではなく、運動の経費は自腹や寄付によるものだ。

 一方、変わらないのが市民の分断。賛成派と反対派との感情的な対立は根深く、住民投票が終わっても数年は続くだろう。どう融和を図っていくのか。政治家と市民に課せられた大阪市廃止問題以上の難問であるのは間違いない。

 

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