安倍菅政権“言論統制”の全容

手口は周到 安倍・菅政権がやってきた“言論統制”の全容

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数年がかりで安倍(左)、菅両政権で言論弾圧が仕組まれてきた(C)ロイター=共同
数年がかりで安倍(左)、菅両政権で言論弾圧が仕組まれてきた(C)ロイター=共同
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 米大統領選はいよいよ民主党のバイデン前副大統領の勝利が見えてきた。

 大接戦だったラストベルトのミシガン州とウィスコンシン州を制し、6日午前9時時点(日本時間)で選挙人は253人。過半数の270人まで残り17人となり、優勢のアリゾナ州(11人)とネバダ州(6人)も制すれば勝敗は決する。既にバイデン陣営は政権奪還を見据えて動き始め、政権移行に向けたサイトを立ち上げた。

 3日の投票日の深夜に“勝利宣言”したものの、一転、敗色濃厚となったトランプ大統領は、事前予告通り「不正投票があった」と主張し始め、陣営は早速、法廷闘争を開始。

 ミシガンなど3州の集計作業を止めるよう提訴を連発し、ウィスコンシン州には再集計も求めた。これにはさすがに身内の共和党内からも批判が噴出している。

 気に入らない事実や結果はすべて「フェイク」にしてきたトランプらしい妄動だが、選挙という民主主義の根幹を否定することさえ平気の平左なのだ。

 よくぞこんな反知性の大統領が4年間も超大国のトップに就いてきたものだが、日本は米国を笑っていられない。それ以上に、立憲主義の否定と言論弾圧を続けてきたのが安倍前政権であり、後継の菅政権なのである。米国を野蛮国家にしたオレ様大統領に隷従し、その手法を見習ったのか。

 いま国会で論議の中心となっている日本学術会議をめぐる任命拒否は、そうした安倍・菅政権のおぞましい体質に起因する問題だという認識を持つ必要がある。

■安保法制をめぐるトラウマ

 学術会議の「あり方」へと論点をすり替え、菅首相は連日国会で支離滅裂な猫の目答弁を繰り返しているが、問題の核心は、6人を任命から除外した理由を説明しないことにある。

 6人は人文科学系の学者。背景として、2015年に安倍政権が強行成立させた安保法制に反対していたことが、除外された要因という見方が根強い。政権にとって批判的な学者だというレッテル貼りの“見せしめ”みたいなものだ。

裏で暗躍(杉田和博官房副長官)/(C)共同通信社
裏で暗躍(杉田和博官房副長官)/(C)共同通信社
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本質はパージ。傲岸さと市民意識の欠如

 それを「菅のトラウマ」とズバリ指摘したのは、自身も05~14年まで学術会議の正会員だった東大名誉教授の上野千鶴子氏。月刊誌「世界」の最新号(12月号)で、作家の保阪正康氏と学術会議問題について対談し、こう語っている。

<私は菅さんにはトラウマがあると思います。2015年に安保法制をめぐり、憲法学者が右から左まで揃って「違憲だ」と言いました。そのとき矢面に立ったのが官房長官の菅さんです。「憲法学者の中にも合憲だという人がたくさんいる」と答えて、「では名前を言ってください」と辻元清美議員に詰め寄られ立往生したこともありました。そのとき公安関係で駆け回っていた人物が、いま学術会議問題を裏で指揮しているといわれる杉田和博官房副長官です>

 上野千鶴子氏は今回の任命拒否について、「そこまでやるか」と「とうとう来たか」が最初の印象だったと言う。そこに至る流れと継続性があり、それは安倍政権時の人事介入に始まる。官僚だけでなく、政権から独立しているはずのNHK会長、日銀総裁、内閣法制局長官に恣意的人事を断行。検事総長人事にまで手をつけようとした。その延長線上に、学術会議があるというのだ。そのうえで次のように断言する。

<今回の事件の本丸は学術会議潰しだと思います。政権の長きにわたる狙いの1つで、6人の任命拒否はその入り口にすぎません>

 憲法23条で保障された学問の自由を侵害し、学者から自由な言論を奪う。 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)が言う。

「根っこにあるのは集団的自衛権の行使容認です。世界中で米国とともに戦争ができるよう、2014年に憲法9条の解釈を変更し、翌15年には安保法を制定した。そのために邪魔な存在となる独立した組織を、次々と内閣に従わせていった。NHKしかり、内閣法制局しかりです。日本学術会議は、科学者や学問が戦争に動員された反省から1949年に設立されました。そういう組織ですから、政権にとっては徐々に目障りになったわけです。今回のことは、人事介入によって、学術会議を御用機関に変えてしまおうということだと思います」

 前述の月刊誌「世界」での対談で、保阪正康氏は「もっと深いところから論じなければならない」と危機感を強め、こう話している。

<ことの本質はパージです。パージとは思想や政治の問題ではなく、基本的な人間の存在に対する否定です>

<これほどわかりやすい形で任命拒否する中に、菅首相の傲岸さ、市民意識の欠如、すべてが象徴されていると思います。安倍政権の延長どころか、彼らが作ってきたある種のファシズム的な方向をさらに一歩進める内閣だと>

 政府や自民党は、学術会議が機能していないかのように強調する印象操作として「2007年を最後に答申が出ていない」と喧伝したが、これについて上野千鶴子氏は<政府が諮問しないという形で学術会議外しをやってきたから>だと喝破した。仕事をさせない、役割を徐々に小さくさせるという陰湿なイジメによって、真綿で首を絞めてきたということなのだろう。

 今回の任命拒否で公になった人文科学者を骨抜きにする言論弾圧は、数年がかりで、安倍、菅、官邸官僚によって仕組まれてきたことなのである。

 政治評論家の森田実氏はこう言う。

「科学や学問というのは、何千年もの人類の歴史によって生み出されてきたものであり、多くの知恵が蓄積されている。畏敬の念を示さない人はいないはずです。ところが、菅首相は学問に対し憎悪に近い感情を抱いているように見えます。でなければ、こんな言論弾圧などやれませんよ。先の戦争の反省に立って、この国では学問や言論の自由が憲法に書き込まれ、その必要性は、政治家にとって共通認識となりました。それは保守や革新の区別なく、寛容の精神で受け止められてきた。ところが、ここ20年くらい、そうした考え方が欠落した人物が政界の中枢に座るようになった。安倍前首相や菅首相はまさにそう。異なる意見を許さない狭量な政治家です」

■「事前協議がなかった」と開き直り

 連日の国会答弁で菅は、「内閣法制局の了解を得た政府としての考え方」と繰り返し、任命拒否の正当性を主張している。内閣法制局の見解とは、18年に内閣府の学術会議事務局が文書で作成した「推薦の通りに任命すべき義務があるとまでは言えない」だが、1983年の中曽根首相答弁である「政府が行うのは形式的任命にすぎない」に反する。事実上の日本学術会議法の解釈変更なのに、当事者の学術会議側には一切知らせず密室で珍見解を作り、揚げ句には「解釈は一貫している」と言い張る厚顔。

 菅は6人の任命除外の説明を「杉田官房副長官」から受けたことを認めた。菅自身が会員候補への懸念を伝え、杉田が動いたというが、要するに、官房長官時から特定人物を除外する意向があり、それは安倍政権からのものだと考えるのが自然。実際、16年の欠員補充時、学術会議は官邸の要求に応じ、複数の候補者名を提出している。会員の半数の105人が交代した17年も、同様に定員より多い名簿を事前提出し、水面下の調整が行われた。

 学問の自由の魂を売るような行為なのだが、だからなのだろう。5日の参院予算委で、菅は「以前は正式な名簿の提出前に一定の調整が行われていた」と、事前協議がなかったことが今回の任命拒否の要因になったという新たな見解を持ち出し、開き直った。

「これがまかり通れば、政府が強権を振るわなくとも、学問の側が政府の意を忖度し、自己規制で黙ってしまう」(金子勝氏=前出)

 最後のトドメのような組織解体の横暴を許したら、周到で狡猾な言論統制が完遂する。そうなったら日本はオシマイだ。

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