日本学術会議会員の任命拒否問題で、除外された6人を推薦した前会長、山極寿一・京都大前総長が3日、メールで朝日新聞の取材に応じた。内閣府の学術会議事務局が2018年に作った「(首相に)推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えない」などとする文書について、「見せられたことはないし、存在も知らなかった」と明かした。臨時国会では「まずは任命を拒否した理由について、杉田(和博官房)副長官に尋ねるべきでしょう」と指摘した。

 日本学術会議法は、会員は会議の「推薦に基づいて」首相が任命すると規定。210人の半数が3年に1度、秋に交代する。1983年の国会では「形だけの推薦制であり、学会から推薦された者は拒否しない」と政府側が答弁した。

 だが、事務局が内閣法制局に確認して作った18年11月中旬の文書は「(首相に)推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えない」「(首相が)任命すべき会員の数を上回る候補者の推薦を求め、その中から任命するということも否定されない」などとしている。

杉田副長官からの返事「来る必要はないし、理由も答えない」

 文書について事務局は今年10月21日の野党ヒアリングで「当時の担当者が事務局長まで話をして作成した」と説明。加藤勝信官房長官は今月2日の衆院予算委員会で「当時の事務局長が文書の内容を(山極氏に)口頭で報告したと聞いている」と述べた。

 一方、山極氏は「説明を受けた覚えはない」とし、会長への報告なしに文書が作られたことを「ありえないこと」と批判した。当時の副会長、三成美保・奈良女子大副学長も「事務局がこのような記録を取り、我々幹部さえ知らなかったことに衝撃を受けた」、別の元幹部も「文書の存在は今回の一連の騒動で初めて知った」と取材に語った。

 文書作成の約3カ月前の18年8月には、人文・社会科学系の欠員1人分の補充人事を巡り、会議側が推す候補者案に首相官邸が難色を示し、補充が見送られた。これについて山極氏は「事務局長を通じ(杉田氏に)何度も面会を申し出たし、任命できない理由を尋ねたが、『来る必要はないし、理由も答えない』という返事で、面会は実現しなかった」と振り返った。

 事務局は9月上旬から、文書作成について法制局に相談を始めた。事務局関係者は取材に、この補充人事に対する官邸の難色が会議側への「実質的な圧力」になり、定員を超す推薦候補を出させて、その中から首相が選べるという趣旨の今回の文書作成につながったとの見方を示した。

 会議側は今年、交代人数の105人ちょうどを官邸に推薦し、6人の任命が拒まれた。山極氏はこの人事でも、杉田氏との面会を「常に求めているが断られている」とした。(宮崎亮

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