2017年の核政策バイデン演説

梅林宏道です。

2017年1月、当時のバイデン副大統領が、政権交代直前に8年間のオバマ政権の核兵器
政策を総括する演説をカーネギー財団で行いました。

主要部分の訳が、添付の「核兵器・核実験モニター」の5-6ページに訳されていま
す。

オバマ政権で実現できなかった「唯一の目的」政策への信念を語っています。ぜひお
読みください。

トランプ政権が無茶苦茶にした核軍縮の流れを、まずは正常化するための手掛かりだ
と思います。禁止条約が発効した中で、米国の市民世論の形成、日本の世論形成につ
いて考えるためにも参考になります。

梅林宏道(うめばやし ひろみち)

ピースデポ特別顧問

長崎大学客員教授

 <mailto:umebayashihm@nifty.comumebayashihm@nifty.com

(ピースデポ事務所)

〒223-0062 横浜市港北区日吉本町1-30-27-4-1F

TEL: 045-563-5101,  FAX:045-563-9907

 

Attachment 1

核安全保障に関する
バイデン副大統領の演説(抜粋訳)
ワシントンDC
2017年1月11日(水)
(前略)
 核抑止力は、第二次大戦以来、米国
の防衛の基礎です。他国が米国に対し
て使用しうる核兵器を所有している
以上、米国と米国の同盟国に対する攻
撃を抑止するために、米国もまた、安
全、確実で効果的な核兵器の保有を維
持する必要があります。
 そのためにこそ、オバマ政権の初期
において、より少ない兵器数でも、ま
た、核実験を行わなくても、米国の保
有核兵器が安全で信頼できるもので
あり続けるよう、保有核兵器を維持
し、核関連施設を近代化するための財
源を増加したのです。
 このような投資を行うことは、米国
の核不拡散という目的に沿ったもの
であっただけでなく、核不拡散を達成
する上で不可欠でした。米国の備蓄兵
器の能力を確実なものにすることに
より、安全を犠牲にすることなく、核
兵器の削減を追求できたのです。
 そして、米国の計画における、「攻撃
下発射手順(敵の核ミサイル発射を確
認後、着弾を待たず報復用ミサイルを
発射すること)」への依存を減らすよ
うにというオバマ大統領による指示
への対応の一環として、国防省は、大
統領が様々な核のシナリオへの対応
の方法をより柔軟に決定できるよう、
計画と手順を変更しました。
 2010年の「核態勢見直し(NPR)」の
中で、私たちは、他国の核攻撃を抑止
することが、核兵器保有の唯一の目的
となるような条件を作り出すことを
約束しました。この約束に従って、オ
バマ政権の期間中、私たちは、第二次
大戦以来、米国の国家安全保障政策の
中で核兵器が持っていた優先度を着
実に減らしてきました。その一方で、
核兵器に頼ることなく、いかなる敵の
攻撃も抑止し打ち負かし、同盟国を安
心させるための米国の能力も向上さ
せてきました。
 米国の核兵器以外の戦力と、今日
の脅威の性質とを考えると、米国が核
兵器を先行使用する必要がある、ある
いは先行使用が意味をなす、現実性の
あるシナリオを思い浮かべることは
困難です。オバマ大統領と私は、我が
国は、核兵器以外の脅威は核兵器以外
の方法で抑止して米国自身と同盟国
を守ることができると確信していま
す。
 次の政権は独自の政策を提案する
でしょう。しかし、NPRの指示から7年
経った今、大統領と私は、我が国の核
態勢は十分な進展を成し遂げました。
したがって核攻撃を抑止すること、そ
して必要であれば報復することを、米
国の核保有の唯一の目的とすべきで
あると強く信じています。
 核兵器のない世界を実現したいの
ならば、米国は実現のために先導的な
役割を果たさなければなりません。さ
らに、オバマ大統領が、広島訪問中に
切実に強調したように、核兵器を使用
したことがある唯一の国として、米国
には、そのような世界の実現の先頭に
立つべき大きな道義的責任がありま
す。
 だから私たちはロシアとの間で、過
去20年で最も野心的な兵器削減条約
である新START(戦略兵器削減条約)
の交渉を行ったのです。1970年代以
来、全ての重要な軍縮合意のためにそ
うしてきたように、私は同条約のため
に懸命に闘いました。なぜなら、同条
約が米国の国民をより安全にするか
らです。同条約で重要なのは、信頼や
善意ではありません。重要なのは、世
界で最大の核兵器保有国である米国
とロシアの間の戦略的安定とさらな
る透明性であり、それは、米国とロシ
アとの関係が徐々に緊張する中で、よ
り死活的に重要になってきました。

 新STARTは、核兵器削減のための厳
格な検証と監視のメカニズムを備え
ています。そして来年、同条約の中心
的な制限が達成されたら、両国の戦略
核兵器の保有数は過去60年間で最低
のレベルまで削減されます。これは、
大きな進歩です。しかし、正直に申し
上げて、これは私たちの政権が望んで
いた進展の度合いには足りません。
 過去3年間、ロシアは配備・非配備
の保有核兵器のさらなる削減に関す
る交渉を拒んできました。しかし、こ
の問題で米国が指導力を発揮するの
に、ロシアを待つ必要はありません。
2009年以来、米国は2,226発の核弾頭
を廃棄してきました。そして、この場
でいくつかのニュースを皆さんに発
表できることを誇らしく思います。昨
年、安全を維持しつつ備蓄核兵器をさ
らに削減できるとの決定を下したの
ち、オバマ大統領は、昨年中に退役が
予定されていた核弾頭に加えて、さら
に約500発の核弾頭を廃棄すること
を決めました。これにより、米国の活
性状態の核兵器備蓄数は、現役の弾頭
が4,018発になり、約2,800発が破壊
される予定です。さらに、私たちは、次
期政権に対し、さらなる削減に取り組
めるか否かを決定するために包括的
な核態勢の見直しを行うよう助言し
ました。
 私が長い間言ってきたように、米
国は、自らの力を見せつけるだけで
なく、手本の力を示すことによって、
もっとも強い指導力を発揮します。私
たちの努力により、未来にのしかかる
核兵器の脅威が軽減されたのみなら
ず、私たちの後継者が、最終的かつ永
遠にこの苦しみの種を世界から取り
除くことができる日に向けて前進し
続ける方向性を明らかにしました。し
かし、私は、私たちの成功を賛美する
ためだけにここに立っているわけで
はありません。私たちは、望んだすべ
てのことを達成できたわけではあり
ませんでした。
 私たちは、米国が包括的核実験禁止
条約を批准するよう、懸命に働きか
けてきました。米国は、20年以上にわ
たって、核実験を行っていません。米
国の核兵器研究所の所長たちは、核実
験が盛んに行われていた頃よりも現
在のほうが、備蓄核兵器の維持管理を
通して、米国の保有核兵器とその信頼
性について、より多くのことを知って
いると言います。もし米国が同条約を
批准すれば、核実験禁止というすでに
存在する世界的規範を強化する上で、
非常に大きな助けとなることでしょ
う。同条約批准の試みは毎回上院で否
決されてきましたが。
 私は、レーガン大統領や2人のブッ
シュ大統領が行った決定を常に支持
したわけではありません。しかし、私
の上院議員としての36年間に、共和
党出身の大統領が実現しようとした
軍備管理措置を改善し、議会を通過さ
せるのを何度も助けたのはただ一つ
の単純な理由によるものです。なぜな
ら、核安全保障は、党派間の駆け引き
に使うには、米国と世界にとってあま
りに重要すぎる問題だからです。
 私たちは、もはや毎日核対決におび
えながら暮らしているわけではあり
ませんが、今日私たちが直面している
危険もまた、その対処には超党派の精
神を必要としています。おぼろげに見
え始めている諸課題は、次期大統領と
次期副大統領の指導力のみでなく、議
会の指導力をも必要としています。
 国際社会の大多数が、核兵器を用い
る国や人が増えれば世界がより危険
になることを理解している一方で、い
まだに兵器の保有数を増やし、新しい
タイプの核兵器を開発しようとする
人々がいます。北朝鮮だけでなく、ロ
シア、パキスタンやその他の国々も、
ヨーロッパ、南アジア、あるいは東ア
ジアの地域紛争で核兵器が使用され
うるリスクを増やすだけの、安全保障
とは反対の動きをしています。議会と
の協力のもと、次期政権はこれらの危
険に対処していかなければならない
でしょう。そして、核兵器の役割を低
減するという世界的なコンセンサス
形成を先導し続けていくことを願い
たいと思います。
 とりわけ、次期政権は、ここ数年間
損なわれてきたロシアとの戦略的安
定を改善するための最善の方法を決
定しなければならないでしょう。米国
が核兵器に頼らない安全保障ドクト
リンにシフトしてきた一方で、ロシ
アは核兵器への依存をより強める方
向に動いています。このロシアの動き
は、米軍の技術的進歩とロシア軍より
優れた通常戦力に対するロシアの懸
念といくらか関連があります。
 しかし、世界における核の危機を高
めるのは、戦略の変化なのです。さら
に、ロシアは現在、発効後30年近くが
経つ中距離核戦力全廃条約に違反し
ています。今までのところ、ロシアは、
同条約を再び遵守することについて、
あるいは戦略的安定と将来の軍縮に
ついての議論を始めるために、米国と
建設的に関わることを拒否していま
す。次期政権は、これらの難しい安全
保障上の課題に対処していく中で、予
算上の制約を考慮した上で、妥協を必
要とするような、米国の安全保障のた
めの決定を行わなければならないで
しょう。もし、将来の予算が私たちの
行った選択を覆し、冷戦時代に立ち返
るような核兵器増強のためにさらな
る財源をつぎ込むとしたら、それは米
国と同盟国の日々の安全保障を強化
する上で何の役にも立たないでしょ
う。
 そうすることは、サイバーセキュリ
ティ、宇宙、米国の通常戦力の健全性
と近代化といった、21世紀の安全保障
上の必要を満たすのに欠かせない分
野に振り向けることのできる資源が
減少することを意味するでしょう。ま
た、二度と使われないよう神に願って
いる兵器である核兵器の理論上の力
を、米国の軍隊が毎日使用している通
常兵器より優先するというリスクを
冒すことになります。判断ミスによる
核戦争のリスクを高め、数十年に渡り
米国民を守ってきた信頼醸成措置と
安全保障上の合意を損なうというリ
スクを冒すことになります。
 さらに、世界における米国の道義的
な指導力と同盟国の中での米国の地
位を低下させ、国際社会とともにその
他の米国の目標を達成する能力を損
なうというリスクを冒すことになり
ます。私たちがこの議論を進めるにつ
れて、現実主義という名のもとに、核
軍備競争を推奨する人々が出てくる
でしょう。私にはわかります。これま
でも常にそういう人々がいましたか
ら。しかし、そうした人々の主張は、今
日、さらに説得力を失いつつありま
す。今日の世界では、最も深刻な核の
脅威は先端技術を持つ外国の政府に
よるものではなく、冷戦時代の遺品を
スーツケースに携えて、世界中のあら
ゆる大都市にむかうテロリストによ
るものなのですから。
 8年前のプラハにおける最初の演
説で、オバマ大統領は、こう言ってこ
の問題の本質を捉えました。「私たち
はより多くの国家や人々が究極の破
壊手段を所有する世界に生きること
を宿命づけられているのだから、核兵
器の拡散を止められないし、抑えられ
ないという人もいる。このような宿命
論は私たちを死に至らしめる敵であ
る。なぜなら、核兵器の拡散が避けら
れないと考えることは、ある意味では、

核兵器の使用は避けられないと認
めることになるからである。」
 過去8年間に渡り、私たちはこの宿
命論を打ち負かそうとしてきました。
私たちは、避けられないとあきらめま
せんでした。私は、国民全体で、米国は
核兵器のない世界の平和と安全を追
い求め続けなければならないと信じ
ています。なぜなら、それが悪夢のシ
ナリオが現実になることを阻むため
私たちが持っている唯一の保証だか
らです。
(後略)     
        
(訳:ピースデポ)
出典:
http://carnegieendowment.
org/2017/01/11/u.s.-vice-president-joebiden-on-nuclear-security-event-5476

 

 

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