トランプ虚報・拡散の社会悪

1.投票日以降のトランプ氏の発言「根拠がない」「大うそ」米ファクトチェック機関が一斉批判

米ホワイトハウスで演説するトランプ氏=4日、AP

 米大統領選挙の投票日(3日)以降にトランプ大統領が行った一連の発言について、米主要ファクトチェック機関などが一斉に「事実でない」と批判している。トランプ氏は劣勢が報じられると、「不正がある」などと主張し、法廷闘争に持ち込む構えを見せるが、その根拠に疑問符がつけられた形だ。だが、「大うそ」などと判定された発言でも、SNSを通じて日本語圏にまで拡散されており、各社が注意を呼びかけている。【和田浩明/統合デジタル取材センター】

「うそだらけ」トランプ氏の発言

 米国で2003年から政治家の発言などの事実関係を調べ発信してきたペンシルベニア大の「ファクトチェック・オルグ」は4日付で「トランプの虚偽に満ちたスピーチ」と題した分析を公表した。

 取り上げたのはトランプ氏が米東部時間4日午前2時半(日本時間同日午後4時半)前からホワイトハウスで行ったスピーチだ。この中で、トランプ氏は「我々はすでに勝利した」と繰り返し断言した。

 さらに、激戦州の中西部ミシガンやウィスコンシンで自らが先行していたのに急激に情勢が変化したのは「詐欺」が行われたからだと主張し、「連邦最高裁まで行く」と宣言した。民主党候補のバイデン前副大統領の支持票が多いとみられる郵便投票などの開票を止める狙いがあるとみられる。

 ファクトチェック・オルグによると、このスピーチの時点では、まだ複数の激戦州などで開票作業が続いており、「勝った」と宣言できる根拠ははっきりしていなかった。また、「詐欺」についても、トランプ氏の主張には「根拠がない」としている。

 開票作業でトランプ票が先行し、後にバイデン票が増加する現象については、事前に主要米メディアが報じていた。この点に関しても、ファクトチェック・オルグは政治学者による研究を根拠に、民主党支持の有権者が郵便投票を多用し、開票に時間がかかったためだなどと説明した。

 ファクトチェック・オルグは不偏不党、非営利をうたい「米国政治における欺瞞(ぎまん)と混乱の低減」を目標としている。

 同じく老舗の独立系ファクトチェック機関である「ポリティファクト」もこの演説を問題視する。「トランプ氏の声明は間違っており、米国での投開票のプロセスを無視している」と指摘。ファクトチェックの評価の中では最も厳しい「パンツ・オン・ファイア(大うそ)」の判定を下した。

「選挙が盗まれる」根拠なき主張とAP通信

 米主要メディアによるトランプ発言のファクトチェックも、おおむね厳しいトーンだ。AP通信は「トランプ氏と支援者がうそを拡散し選挙に疑いをかけている」との見出しの記事を配信した。取り上げたのは、前回選挙でトランプ氏が勝利し、今回はバイデン氏が奪還したと報じられているウィスコンシン州の事例だ。

 ウィスコンシン州では一時、トランプ氏の得票が先行したが、最終的に複数の米主要メディアが「バイデン氏が勝利確実」の報を流した。98%開票時点で得票率はバイデン氏が49・4%、トランプ氏は48・8%とその差わずか0・6ポイントだ(ニューヨーク・タイムズ紙電子版による)。

 こうした状況を受け、トランプ氏は4日昼に「彼らはバイデン票をあちこちで発見している。ペンシルベニア、ウィスコンシン、そしてミシガンで。我が国にとってよくないことだ」とツイッターに投稿した。AP通信によると、トランプ氏の支援者らも、ウィスコンシンでのバイデン氏の得票増加は「あからさまな腐敗」「魔法のように発見された」などと疑問視する投稿をしている。

 AP通信は「トランプとその支持者は、激戦州で合法的に投じられた不在者投票や郵便投票に関するオンラインの偽情報を拡散している」と指摘。民主党側が「選挙を盗もうとしている」との大統領の「根拠なき主張」を支持するための行為だと述べている。

 米CNNも同様に批判的で「投票日以降のトランプ氏の発言はうそばかり」と題したファクトチェック記事をウェブサイトに掲載。以前から続く「不正直な戦略」の表れだと指摘している。

「誤解招く可能性」トランプ氏の投稿にラベル

 こうした事態を受け、SNS各社も対策を実施した。ツイッターは4日以降、トランプ氏の投稿(ツイート)4件について、「このツイートで共有されているコンテンツの一部またはすべてに異議が唱えられており、選挙や他の市民行事への参加方法について誤解を招いている可能性があります」とのラベルを表示。利用者が意図的にクリックしなければ、元の投稿を見られないようにした。

 例えば「我々は大きく先行していたのに、彼らは選挙を盗もうとしている。絶対にそうはさせない。投票所が閉じた後で投票はできない」とするトランプ氏の投稿だ。これは、3日の投票日を過ぎても開票が続く事前投票分の無効を主張したものとみられるが、ツイッター社は先のラベルの他にも「投票日以降の開票作業も合法」などとする関連記事を紹介するリンクをはった。

 フェイスブックも同様の対応を取った。トランプ氏が4日午後に行った「ペンシルベニア、ノースカロライナ、ミシガンで勝利した」などとする書き込みには「投票用紙の集計には投票締め切り後、数日間から数週間かかるため、最終的な得票結果は初期に公表された得票数と異なる場合があります」といった注意書きがつけられている。

 この注意書きにはリンクがはられており、大統領選の結果予測や、選挙に関する事実関係の紹介などが行われている。

 だが、こうした取り組みにもかかわらず、SNS上では「選挙不正」に関する発信が大規模に拡散しているとAP通信は伝えている。米大学やシンクタンクの研究者らが投票抑止行為を発見・阻止する目的で立ち上げたグループEIPによると、「(選挙の)盗難を止めろ」などのハッシュタグ(検索目印)を掲げた右派インフルエンサーらを中心にした発信・拡散は3日昼以降急増し、4日夕には12万件近くに達しているという。

日本語圏でも拡散する米選挙の偽情報

 日本語圏のツイッターでも、米国側で根拠がないとされた情報が大規模に拡散される現象が起きている。「ウィスコンシン州で、明け方の僅か1時間の間に謎の12万票がバイデン側に追加」とするツイートは、日本時間5日の時点で8000回以上リツイートされ、「いいね」も1万件以上ついている。この投稿には「選挙やその他の市民活動の操作や妨害を目的としてツイッターのサービスを利用することを禁じます」とのツイッター社のリンクがはられている。

 また、「ウィスコンシン州の不正選挙疑惑まとめ」と題した投稿も多数広がり、一部にはツイッター社が「誤解を招いている可能性がある」とのラベルを設定して注意を促している。

和田浩明

1991年4月入社。英文毎日編集部、サイバー編集部、外信部、大阪社会部を経て2003年10月から08年3月までワシントン特派員。無差別発砲事件、インド洋大津波、イラク駐留米軍や大統領選挙を取材。09年4月からはカイロに勤務し、11年1月に始まった中東の民主化要求運動「アラブの春」をチュニジア、エジプト、リビア、シリア、イエメンで目撃した。東京での中東、米州担当デスク、2度目のワシントン特派員などを経て2019年5月から統合デジタル取材センター。日本社会と外国人住民やLGBTなどの今後に関心がある。

 

2.「大量のトランプ票を埋めた」動画は誤り 実際はサウジの冷凍チキンか

「大量のトランプ票を埋めた」動画は誤り

 米大統領選に絡み、トランプ大統領の票が「トラックで運ばれ山に埋められた」とする動画がツイッターで拡散しているが、誤りだ。同じ動画が2016年、中東・ドバイの衛星放送局のニュースサイトに「押収した冷凍鶏肉を投棄しているところ」として引用されており、今回の米大統領選と関係がないことは明らかだ。【日下部聡/統合デジタル取材センター】

 この動画は漫画家の孫向文氏が中国語のツイートを引用して「大量のトランプの票をトラックで運ばれ山に埋められた(原文のまま)」とのコメントをつけて5日に投稿。6日正午現在、約2800件リツイートされ、約4500の「いいね」が付いている。

 しかし、ウェブ上を検索したところ、この動画は16年11月17日、ドバイに本拠を置くサウジアラビア系の衛星放送局「アルアラビーヤ」のニュースサイトの英文記事に「サウジアラビアのソーシャルメディアで拡散している」として紹介されていた。

アルアラビーヤが2016年11月17日のニュースサイト記事で引用したユーチューブ動画の一場面

 記事に引用されているユーチューブ動画では、砂漠に停車した複数のトラックの荷台から作業員が白い箱を外に放り出しており、別の作業員が箱を開けて中身を地面に出している。

 「サウジアラビアが8万箱の腐った鶏肉を処分する動画」との見出しのこの記事によると、業者が食用にできない賞味期限切れの鶏肉を配送しようとして当局に見つかり、25台の冷凍トラックごと押収された。この動画は、作業員がその鶏肉入りの箱をトラックから砂漠に投げ捨てているところだという。

 同じ動画が、その1カ月後には「パキスタンで偽札を処分しているところ」との説明付きでユーチューブにアップされており、これも誤りである可能性が高い。

 【追記】

 孫氏が引用したツイートは現在は削除されている。

日下部聡

1993年入社。浦和(現さいたま)支局、サンデー毎日編集部、東京社会部などを経て2018年4月から統合デジタル取材センター副部長。「『憲法解釈変更の経緯 公文書に残さず』など内閣法制局をめぐる一連の報道」で16年、第20回新聞労連ジャーナリズム大賞と日本ジャーナリスト会議(JCJ)大賞受賞。16~17年、英国オックスフォード大ロイタージャーナリズム研究所客員研究員。著書に「武器としての情報公開」(ちくま新書)。

 

3.ペンシルベニアでの「バイデン氏当確取り下げ」 フジ解説委員が誤情報を記事化

平井文夫・フジテレビ報道局上席解説委員が誤情報を引用した記事が載っていたベージ。記事は削除された。

 バイデン前副大統領が当選確実となった米大統領選挙に関し、米国の主要政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」(RCP)が「激戦州ペンシルベニア州でのバイデン氏の当選確実を取り消した」との誤情報が日本語圏のSNSなどでも広く拡散したが、これをフジテレビ報道局の平井文夫上席解説委員が11日、フジテレビのウェブサイトに執筆した記事で紹介。いったん訂正した上で、記事そのものを削除していた。【和田浩明/統合デジタル取材センター】

 この誤情報はトランプ大統領の側近で弁護士のジュリアーニ元ニューヨーク市長が日本時間の10日午前10時前にツイート。政権の初代報道官だったスパイサー氏も十数分後に同様の投稿をした。しかし、その25分後にRCPのベバン社長がジュリアーニ氏のツイートを引用して「間違いだ。ペンシルベニアで当確を打っていない」などと否定し、スパイサー氏はこの約1時間20分後に「訂正」を流した。

 一方、翌11日の昼ごろにフジテレビのサイトに掲載された平井氏執筆の記事には「昨夜面白いニュースが入ってきた。世論調査サイトの『リアルクリアポリティクス』がペンシルベニア州でのバイデンの当確を取り消した結果、バイデンの獲得選挙人は259人となり、過半数の270人を下回ったというのだ」との記述があった。

 この記事にはその後「トランプ側近のジュリアーニ元NY市長のツイートをもとに書いたものですが、リアルクリアポリティクスはもともとペンシルバニア州でバイデンの当確を出しておらず、従って獲得選挙人は259人で過半数を超えていませんでしたので、その部分を削除します」との訂正が加えられ、最終的には記事ごと削除された。

 毎日新聞の取材にフジテレビ広報局企業広報室は「内容に誤りがあったため、同(11)日18時頃に訂正を含む記事に修正、同日24時頃に記事そのものを削除いたしました。すぐに記事を削除せず、一時、訂正を掲載したのは、誤った内容であったことをお知らせすべきと考えたためです。取材および編集の詳細に関してはお答えしておりませんが、誤った情報を配信し訂正・削除にいたったことは遺憾であり、今後、同様の問題が発生しないよう努めてまいります」などと回答した。

 平井氏は10月5日にも日本学術会議の任命拒否問題に絡み、フジテレビの情報番組「バイキングMORE」で「会員OBは日本学士院会員になり、死ぬまで250万円の年金をもらえる。そういうルールになっている」との誤った発言をし、翌日、番組の担当アナウンサーが訂正、謝罪している。その際、同局は毎日新聞の取材に「今後、チェック体制を強化し再発防止に努めてまいります」と回答していた。

和田浩明

1991年4月入社。英文毎日編集部、サイバー編集部、外信部、大阪社会部を経て2003年10月から08年3月までワシントン特派員。無差別発砲事件、インド洋大津波、イラク駐留米軍や大統領選挙を取材。09年4月からはカイロに勤務し、11年1月に始まった中東の民主化要求運動「アラブの春」をチュニジア、エジプト、リビア、シリア、イエメンで目撃した。東京での中東、米州担当デスク、2度目のワシントン特派員などを経て2019年5月から統合デジタル取材センター。日本社会と外国人住民やLGBTなどの今後に関心がある。

 

4.米大統領選「不正の証拠サーバー押収」は誤り 企業・米陸軍も否定

 バイデン前米副大統領が当選確実となった米大統領選に関し、「選挙不正の証拠が保存されたスペイン企業のサーバーが、ドイツ・フランクフルトで米軍に押収された」という情報が米国で発信され、日本語のツイッターでも大量に拡散しているが、誤りだ。米国の一部の州などの選挙関連業務を支援したこのスペイン企業「サイトル」は自社ウェブサイトで、「米国でのサービス用サーバーは全て米国内に存在する。フランクルトには事務所もサーバーもない」と明確に否定。米AP通信が米陸軍などに確認したところ、いずれもこの情報を否定した。【和田浩明/統合デジタル取材センター】

米連邦下院議員が発言し、拡散

「ドイツでの捜索・押収」情報は、14日ごろから日本語に翻訳されて「トータルニュースワールド」など複数のまとめサイトに掲載されている。この情報のリンクを付けた同サイトのツイートに16日夕時点で約4500件のいいねがつくなど、複数のアカウントで広く拡散している。

 ツイッターには「全てが明らかになる日を待ち望んでいます。頑張れ、トランプ大統領!」「売電(バイデン氏)当選を阻止して民主主義を守ろう」などの書き込みが見られる。米大統領選で敗北を認めていないトランプ米大統領に同情的な層によるもののようだ。

「米選挙不正の情報を含むスペイン企業サーバーがドイツで米陸軍に押収された」などと米保守系メディア「ニュースマックス」で話すゴーマート米連邦下院議員=ツイッターから

 この情報の元となったのは、トランプ氏が当選確実となった米南部テキサス州選出の連邦下院議員、ルイ・ゴーマート氏(共和党)の発言だ。11月中旬、オンライン動画や保守系メディア「ニュースマックス」のインタビューなどで、「元情報機関の人たち」の情報として、「サイトルのサーバーには全ての投票データがあり、これを調べれば、(トランプ氏からバイデン氏への)票の付け替えが分かると聞いた」などと発言。さらに、「本当かどうか知らないが、ドイツで流されたドイツ語のツイートによると、米陸軍部隊がサイトルを捜索、サーバーを押収した」とも述べた。

 これを米保守系サイト「ゲートウエー・パンディット」などが取り上げ、英語圏のツイッターなどで広く拡散された。

 さらにこの情報に関連し、「米軍が押収したデータから、トランプ氏が選挙人410人を獲得し地滑り的勝利を収めていたことが分かった」とのツイートを米南部バージニア州の共和党下院議員候補が米東部時間14日夜(日本時間15日朝)にツイートした。ツイッター社が「公式情報源はこの選挙について別の評価をしている」と注意書きをつけているにもかかわらず、このツイートも日本語圏で複数のアカウントが内容を翻訳するなどして引用し、数千回リツイートされ、広く拡散している。

サーバーは米国内に存在

 サイトルの13日付の説明(https://www.scytl.com/en/news/)などによると、同社は米国の州や郡などの一部を顧客に持つ。同社は各選挙管理当局が集計した得票データを、有権者など向けにオンライン表示したり、海外や遠隔地の有権者向けに電子投票用紙を配布・返送したりする業務などを行っている。

自社に関する誤情報をウェブサイトで否定、説明するサイトル社=同社サイトから

 同社によると、こうした業務用のサーバーは、「物理的に米国内にあり、米国の子会社が管理している」という。また、米国内の開票や集計などの作業には、一切関わっていないとも述べた。

 さらに、米陸軍が捜索したとされるフランクフルトには、同社のオフィスもサーバーも存在せず、「(本社がある)バルセロナや、フランクフルト、その他の場所で、米陸軍が我が社から何かを押収したこともない」(同社)。

 AP通信によると、米陸軍の報道官も「フランクフルトでの捜索・押収」について14日、「そのような主張は虚偽だ」と明言したという。

日本語圏の「親トランプ層」拡散関与

 米大統領選は、各地の選管のデータなどに基づき、複数の主要報道機関がバイデン氏の当確を伝えたが、激戦州などで開票作業が続いており、公式結果は現時点で確定していない。こうした状況下で、トランプ大統領自身が発信したものも含め、さまざまな誤情報がSNSなどで拡散している。トランプ氏が自らの勝利を主張し続け法廷闘争も展開しているだけに、米国だけでなく日本語圏の「親トランプ層」もこうした情報の拡散に関与しているようだ。

 11月上旬にはトランプ氏の側近のジュリアーニ元ニューヨーク市長が「(激戦州の)ペンシルベニアで主要政治サイトがバイデン氏の当確を取り下げた」と虚偽の情報を発信。サイト側は即座に否定した。しかし、その後も日本語圏で情報が流れ続け、フジテレビの平井文夫上席解説委員がこの情報を紹介する記事を自社ウェブサイトに掲載し、その後訂正、削除する一幕もあった。

 3日の投票日以降のトランプ氏による「選挙不正があった」などの主張も、米国のファクトチェック機関は軒並み「うそ」などと認定している。米主要テレビ局の中には、トランプ氏の選挙に関する声明読み上げの生中継を「事実でない発言が含まれている」などとして途中で打ち切った事例も出ている。

米東部時間15日深夜(日本時間16日午後)も「私がこの選挙に勝った!」とツイートしたトランプ米大統領。ツイッター社は「公式情報源はこの選挙について別の評価をしている」との注意書きをつけた=ツイッターから

 トランプ氏は米東部時間15日深夜(日本時間16日午後)もツイッターで「私が選挙に勝った!」「選挙監視員多数が開票所から追い出された」「2020年の偽の郵便投票の結果を認めるわけにはいかない」などと発言した。こうした発信には「公式情報源はこの選挙について別の評価をしている」「この主張には異論がある」などの注意書きがツイッター社によって添えられている。

和田浩明

1991年4月入社。英文毎日編集部、サイバー編集部、外信部、大阪社会部を経て2003年10月から08年3月までワシントン特派員。無差別発砲事件、インド洋大津波、イラク駐留米軍や大統領選挙を取材。09年4月からはカイロに勤務し、11年1月に始まった中東の民主化要求運動「アラブの春」をチュニジア、エジプト、リビア、シリア、イエメンで目撃した。東京での中東、米州担当デスク、2度目のワシントン特派員などを経て2019年5月から統合デジタル取材センター。日本社会と外国人住民やLGBTなどの今後に関心がある。

 

5.「投票機企業がトランプ票削除」 「バイデンチーム一員が社長の企業がソフト提供」は誤り

 米大統領選で投票装置メーカーの「ドミニオン・ボーティング・システムズ」が「トランプ米大統領への投票を削除した」との情報が拡散し、さらに「バイデン氏の政権移行チームの一員が社長をしている企業が(ドミニオンに)ソフトウエアを提供していた」とのツイートをトランプ氏が引用リツイートし、日本のまとめサイトが翻訳して掲載した。しかし、投票を削除したとの情報も、ソフトウエアを提供していたとの情報も、いずれも誤りだ。【和田浩明/統合デジタル取材センター】

「トランプ票削除投票機にソフト提供」の主張

 投票機メーカーのドミニオン・ボーティング・システムズはカナダ・トロントと米西部デンバーに拠点を持つ。同社ウェブサイトによると、米国の28の州などで選挙管理システムを提供しており、激戦州のミシガンやジョージアにも顧客がいる。「ドミニオンの投票装置にソフトを提供していた」などとツイッターで批判されたのが、「スマートマチック」社(本社・ロンドン)で、こちらも投票装置など選挙システムを提供する企業だ。

 両社ともに「そもそも我々は競争相手で、ソフト提供も資本関係もない」などと声明で否定している。トランプ氏への投票を削除したとの情報も連邦政府機関が「起きていない」との声明を出している。また、複数の米ファクトチェック機関もソフトウエアを提供していたとの情報を否定している。

 日本語圏ではまとめサイト「anonymous post」が<トランプ大統領「This is crazy!」 ドミニオン投票機のソフト会社「Smartmatic」の社長Peter Neffengerさん、バイデン政権移行チームだとトランプにTwitterでバラされる ⇒ 速攻でTwitter社がアカウント凍結>との記事を17日に掲載し、ツイートした。ツイートは19日昼の段階で3900件以上リツイートされ、「いいね」も7800件以上ついている。

 このツイートには「選挙の集計機器の会社が政権入りしちゃいかんでしょ」「どんどん不正の事実が明るみになっています。本当に大統領選について公正で公平な報道を求めます」などの反応が書き込まれている。

 英語圏では16日までに、「Stonewall Jackson」名のアカウントが、<バイデン氏の政権移行チームの一員である退役将官のピーター・ネッフェンジャー氏は、ドミニオンのためにソフトウエアを作ったスマートマチックの社長で役員だ>などと発信(現在はアカウント凍結)。トランプ氏はこのツイートを引用し「これはおかしい!」などと米東部時間16日朝(日本時間同日夜)に発信していた。

 トランプ氏はドミニオンについて12日にも「全米で270万票のトランプ票を削除した」との極右系ケーブルテレビ「ワン・アメリカ・ニュース・ネットワーク(OANN)」の記事を投稿していた。しかし、この記事が根拠としている報告をまとめたとされた出口調査などを行う企業「エジソン・リサーチ」は複数の米ファクトチェック機関に「そうした報告はまとめていない。自社データに投票不正の証拠はない」と否定していた。

 一方、トランプ氏の側近で弁護士のジュリアーニ元ニューヨーク市長も「ドミニオンの背後にはスマートマチックがいて、実際に集計をしている」などと14日にツイートしていた。

両社は「関係なし」と否定

 こうした度重なる指摘に、両社は自社ウェブサイトで反論している。スマートマチックは「ドミニオンの株式や資本を保有したことはなく、いかなるソフトウエア、ハードウエア、技術もドミニオンに提供したことはない。両社は競争相手だ」などと説明している。さらに、ミシガンやジョージア、ペンシルベニアなどの激戦州ではスマートマチックの投票機は使われていないとも指摘した。

 ドミニオンも「白黒をつける:事実とうわさ」と題した17日更新の特設ページで、「ドミニオンは一度もスマートマチックに所有されたことはなく、まったく別の企業で、激しく競争する相手です」などと説明。両社はいかなる形でも協力したことがなく、ドミニオンがスマートマチックのソフトウエアを使ったこともない、と強調した。

 ドミニオンは、「票の削除や付け替え」疑惑についても「完全な虚偽」と述べ、「独立したファクトチェッカー複数が否定している」と述べた。

 今回の米大統領選について、国土安全保障省サイバー・インフラ安全局(CISA)が「史上最も問題の少ない選挙だった。いかなる投票システムも投票を削除、喪失、変更した証拠はない」との声明を12日に出した。

 CISAは選挙システムをハッキングなどの不正行為から保護する担当部門だ。CISAのクレブス局長は、「非常に不正確な声明」を出したとして17日にトランプ氏に解雇された。トランプ氏は解雇を明らかにしたツイートで「今回の選挙では大規模な不正があり、トランプ票がバイデン票に変更されるなどした」とも主張したが、ツイッター社は「この選挙不正に関する主張には異論がある」と利用者の注意を促すラベルを付与している。

 一方、スマートマチックのウェブサイトによると、<ドミニオンのためにソフトウエアを作ったスマートマチックの社長で役員だ>と指摘されたネッフェンジャー氏は同社の米国役員会会長で、米沿岸警備隊の高官を務めた経験がある。

 同氏が上級フェローとして所属する米ノースイースタン大のグローバル・レジリエンス研究所の発表によると、バイデン氏の政権移行チームに「ボランティアとして個人の資格で参加した」という。バイデン氏の政権移行サイトにも、国土安保省担当の「省庁レビューチーム」メンバーとして名前が掲載されている。

和田浩明

1991年4月入社。英文毎日編集部、サイバー編集部、外信部、大阪社会部を経て2003年10月から08年3月までワシントン特派員。無差別発砲事件、インド洋大津波、イラク駐留米軍や大統領選挙を取材。09年4月からはカイロに勤務し、11年1月に始まった中東の民主化要求運動「アラブの春」をチュニジア、エジプト、リビア、シリア、イエメンで目撃した。東京での中東、米州担当デスク、2度目のワシントン特派員などを経て2019年5月から統合デジタル取材センター。日本社会と外国人住民やLGBTなどの今後に関心がある。

Categories Uncategorized

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out /  Change )

Google photo

You are commenting using your Google account. Log Out /  Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out /  Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out /  Change )

Connecting to %s

%d bloggers like this:
search previous next tag category expand menu location phone mail time cart zoom edit close