財務省の内部調査では十分に明らかにされなかった森友問題の真相に迫ろうという、立法府の試みをないがしろにする対応である。財務省の隠蔽(いんぺい)体質は一向に改まっていないと言わざるを得ない。

 森友学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、衆院調査局が報告書をまとめた。委員会審議に役立てる下調べにあたる「予備的調査」という制度を活用したものだ。

 国会での想定問答など、いくつかの未公表の文書が示されたものの、カギを握るとみられる資料の提出要求に財務省は応じなかった。

 その最たるものが、意に反する不正行為を強いられ、自ら命を絶った近畿財務局職員の赤木俊夫さんが、改ざんの経緯を詳細に記したとされる「赤木ファイル」である。財務省は「訴訟に関わることであるため回答を差し控えたい」として、ファイルの存否さえ答えなかった。

 赤木さんの妻が「真実を知りたい」と、国などに損害賠償を求めた裁判で、赤木さんの元上司がファイルの存在を認めた音声データが明らかになっている。にもかかわらず、ここでも国側は、ファイルの存否について「回答の必要がない」として、原告側の提出要求に応じていない。どこまで真相究明に後ろ向きなのか。

 予備的調査は、国会の行政監視機能を高めるため、97年に創設された。少数会派も使えるよう、40人以上の議員の要請があれば実施される。公文書改ざん問題を重く見た大島理森衆院議長が活用を呼びかけたこともある。今回は、赤木さんの手記の公表を受けて、野党が調査を求めた。資料の提出など、政府に対する協力要請に強制力がないとはいえ、制度の趣旨や一連の経緯を踏まえれば、最大限応じるのが筋ではないか。

 菅首相は財務省の調査と検察の捜査終結をもって、森友問題は決着済みとの立場を変えていない。今国会の代表質問に対する答弁でも、再調査に応じない考えを明確にしている。

 しかし、例えば、国有地が8億円も値引きされた件について、赤木さんの元上司の音声データには「8億円の算出に問題がある」「(ゴミの)撤去費用が8億になるかという確証が取れていない」という証言もあった。売却価格は適正という政府の主張との齟齬(そご)は明白だ。

 安倍前首相が退陣したからといって、この問題を過去のものとしてはならない。予備的調査の成果が不十分であったとしても、行政監視の重責を担う国会は、政治や行政への信頼回復に向け、粘り強く解明への歩みを続けねばならない。

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