経済重視の政府、コロナ「第3波」に対応迷走 GoToトラベル運用見直し

経済重視の政府、コロナ「第3波」に対応迷走 GoToトラベル運用見直し

札幌市と大阪市が目的地の旅行を「GoToトラベル」の対象から一時除外することを決定し、記者会見で説明する西村康稔経済再生担当相=東京千代田区で2020年11月24日午後8時18分、宮間俊樹撮影

 旅行需要喚起策「GoToトラベル」の運用見直しで、政府は24日、地元知事の要請を受け、札幌市と大阪市を対象地域から一時除外すると決めた。ただ、新型コロナウイルスの「第3波」を受けた政府の対応は後手に回った印象がぬぐえない。焦点となる東京都の扱いも、「国が責任をもって判断すべきだ」とする都側からは、自ら除外を要請する動きは見えてこない。

 

感染拡大と経済活動、板挟みの中で苦渋の判断

 「北海道のやり方はちぐはぐだ」。札幌市のススキノにあるバーの男性店長(28)は24日、飲食店に営業時間の短縮要請を出しながら「GoToトラベル」事業の継続を訴えていた鈴木直道知事を批判した。

 「GoTo」をめぐり鈴木知事の判断は揺れた。今年2月、全国に先駆けて独自の緊急事態宣言を出した対応とは対照的だった。

 道内では10月に入って感染者数が増え始め、5段階の独自指標「警戒ステージ」を11月7日に「3」に引き上げ、ススキノの飲食店に時短要請も出した。

 しかし、鈴木知事はその直後の10日、菅義偉首相と官邸で会談し「『GoTo』を理由とした感染が相次いで確認されているわけではない」と強調。同17日にも「静かに食事を楽しみ温泉につかることに問題はない」と話していた。

 こうした知事の姿勢に「人の往来を認める前提での要請では感染防止と矛盾が生じる」(秋原志穂・北海道科学大教授)など疑問の声が噴出していた。

 判断が遅れた背景には、観光が基幹産業のため経済界から継続を望む声が強かったことがある。

 さらに、「GoTo」に積極的な菅首相との親密な関係もありそうだ。菅氏と鈴木知事は同じ法政大卒。菅氏は夕張市が財政破綻した当時の総務相で、同市の事情に精通していた。2011年に鈴木知事が同市長に就任すると2人は懇意となり、19年4月の知事選出馬の際も菅氏に面会し支援を受けた。今もコロナ対応でも頻繁に連絡を取り合っているとされる。

 野党道議は「信頼関係があるなら全国に先んじた対策を行う姿勢が必要ではないか。今のままでは国を見て態度を決めているように見える」と話す。

 

 一方、大阪府の吉村洋文知事は今月21日、菅首相が「GoTo」の運用見直しを表明すると、「僕もまさに同じ考え。今はブレーキをかける時期だ」といち早く同調する考えを示した。直前までは事業の一時停止の効果を疑問視する発言を繰り返しており、突然の方針転換だった。

 府内では11月に入って大阪市内を中心に感染が急拡大。吉村知事は危機感を表明する一方、「トラベルで感染拡大しているかは懐疑的。トラベルが原因なら観光地の京都で感染がものすごく広がっていないとおかしい」と述べていた。

 しかし、感染拡大に伴って重症者数が急増し、18日には月内に重症者用の病床使用率が50%を超えるとする府のシミュレーションが公表された。専門家からも感染防止を重視した対策を求める声が相次ぎ、感染拡大が続く大阪市に限り一時除外を国に求める判断を迫られた。ある府幹部は「大阪市内の飲食店への時短要請を検討する中で、トラベルだけ継続する選択はなかった」と明かした。

 吉村知事は24日、「感染状況と医療の逼迫(ひっぱく)を見れば一時中断すべきだ。苦渋の判断だ」と記者団に打ち明けた。【源馬のぞみ、芝村侑美】

「甘く見ていた」政府、対応が後手に回る

 加藤勝信官房長官は24日の記者会見で「新型コロナウイルスの感染拡大防止と経済社会活動の両立を図ることで、国民の命と暮らしをしっかり守り抜く」と述べ、旅行需要喚起策「GoToトラベル」事業の運用を一部見直す一方で、経済活動は継続させる考えを改めて強調した。

 政府は事業と感染再拡大との因果関係を否定し続けてきた。赤羽一嘉国土交通相も24日の会見で、「事業が感染拡大の主要な要因だとのエビデンス(証拠)は現在のところ存在しない」とする新型コロナ対策分科会の提言に触れ、「延べ4000万人超が利用し、23日までに陽性と診断されたのは187人だ」と訴えた。

 政府がトラベルの「一時停止」に踏み込まざるを得ないのは、札幌市などでの感染再拡大で、分科会がまとめた4段階の指標で2番目に悪い「ステージ3(感染急増)」が現実味を帯びてきたためだ。観光施策を担う国交省では、分科会の提言を受けた20日夜から3連休にかけて調整に追われた。もともとGoToトラベルは、感染の状況次第では該当地域を対象から除外することもあり得ると説明されてきた。しかし、キャンセル料などの具体策は定まっていない。赤羽氏は24日、事業者に旅行代金の35%分を補償する方針を示したが、この段階でも「細かいところは調整中」(観光庁)という状況だった。政府関係者は「感染拡大を甘く見ていた。観光庁も自ら『撤退論』を具体的に考えておくとも思えない」と述べ、対応が後手に回ったことを認めた。

 そもそも政府は経済重視の方針を崩していないため、感染防止で徹底的に人の動きを止めるという本気度は薄い。見直し内容は、感染拡大地域「発」の旅行は割引対象のままで、期間も3週間程度と限定的だ。人口、感染者数とも最大の東京都を巡っても、政府は知事に判断を委ね、小池百合子都知事は政府が判断するよう求めており、見直し対象とする動きは鈍い。一時停止表明は「政府が危機感を表しているというアナウンス効果」(政府関係者)に狙いがある。

 官邸幹部は「感染で困っている人よりも経済が止まって困る人の方が多いはずだ。経済は動かさないといけない」と強調する。政府高官は「命を守ることにだけ重点を置いたら、暮らしが立ち行かなくなる。政府方針を変えたのではなく、選択肢を示し、アクセルもブレーキもきめ細かに踏んでいくということだ」と語った。

 後手に回る政府の対応に対し、立憲民主党の安住淳国対委員長は24日の党会合で「(菅義偉)首相もようやく運用の一部見直しに触れたが、遅きに失した」と批判。25日の衆参両院の予算委員会で追及する考えを示した。【竹地広憲、川口峻、小坂剛志】

国と距離置く小池都知事の足もとで感染者急増

菅義偉首相と会談するため首相官邸に入る東京都の小池百合子知事=東京都千代田区で2020年11月24日午後2時55分、竹内幹撮影

 全国最多の感染者の対応に追われる東京都は、小池百合子知事が24日、菅義偉首相や西村康稔経済再生担当相と相次いで面会し、「GoToトラベル」などについて協議した。GoToに関する政府方針について説明を求めた形で、東京を除外対象とするかは、今後も国と話し合いを続けて慎重に対応する考えだ。25日も引き続き都庁内で議論する。

 小池氏は首相らとの面会後、記者団に「新型コロナの状況など情報を共有した。国の情報の詳細が伝わっていない部分もあり、菅首相や西村大臣に確認させてもらった。連携しながら対策をしっかりやっていく」と語った。一方で、7月に「GoToトラベル」がスタートする際、政府から一方的に東京を除外された経緯もある。今回、「これは国の施策。国で判断していただきたい」と距離を置いていた小池氏は、北海道や大阪府の知事のように、自ら除外を求める姿勢はこの日も見せなかった。

 都は23日までの連休中も幹部が都庁に集まり、GoToなどへの対応を協議した。政府が感染拡大地域への旅行の新規予約を一時停止する措置を導入したことに、「東京に来る旅行が除外になった時、東京発は問題ないのか」などの意見が出た。「解決すべき疑問点がある」(都幹部)と、議論はまとまらなかったという。

 ただ、この間にも都内は感染が急拡大している。21日には過去最多となる539人の感染者が確認されるなど、19日から3日連続で1日あたりの感染者が500人を超えた。24日時点で都内の入院患者数は1583人で、最大確保病床(4000)に対する使用率が国基準(25%)を超える39・6%。多くの項目で、政府分科会が「GoToトラベル」からの除外を検討するよう提言している国基準のステージ3(感染急増)を超えている。都幹部は「感染拡大が止まらなければ経済へのダメージも大きい。対策を急ぐことが必要だ」と話した。【内田幸一、斎川瞳】

予約済みでも割引対象外に

 GoToトラベルは7月下旬、感染拡大が続いていた東京都全域を発着地から除外して始まった。東京を追加した10月以降は利用者が増加傾向だったが、感染が急速に広がっており、再び一部地域の除外に踏み切らざるを得なくなった。

 除外地域を目的地とする旅行では、GoToトラベルを利用する新規予約が一時停止され、予約済みであっても割引対象から外れる。割引対象外になったことを理由に利用者が旅行の予約を取り消しても、キャンセル料の負担は生じないようにする。その分は政府が旅行事業者に対して、旅行代金の35%相当額をGoToトラベルの予算から補償する。

 一方、除外地域に住む人が他の地域へ旅行する場合、引き続き割引を適用する。感染防止を徹底していれば問題ないと判断したからだ。制度を始めた際には東京都民が出かける旅行も割引対象外としていたが、赤羽一嘉国土交通相は24日の記者会見で「当時の東京はクラスター(感染者集団)の発生源があり、外に出ることで拡散する恐れがあった」と説明した。

 観光庁によると、GoToトラベルは10月末までに延べ約4000万人が使い、今月23日時点で利用者187人の新型コロナ感染が判明している。現状ではGoToトラベルの対象期間は来年1月末までだが、政府は期間を延長する方向で検討している。【小坂剛志】

Categories Uncategorized

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out /  Change )

Google photo

You are commenting using your Google account. Log Out /  Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out /  Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out /  Change )

Connecting to %s

%d bloggers like this:
search previous next tag category expand menu location phone mail time cart zoom edit close