疑惑に正面から向き合わない姿勢は、前政権と同様だった。25日の衆参予算委員会で、安倍晋三前首相側が「桜を見る会」前日の夕食会の費用を補塡(ほてん)した疑惑が焦点になった。前首相の答弁内容が疑われる事態だが、官房長官として安倍氏を支えた菅義偉首相は「答弁を控える」を連発した。

「捜査中」理由に拒否連発

 午前に衆院、午後に参院で予定された予算委は、開会前に野党側が安倍氏の出席を要求したが、与党側が受け入れずに激しく対立。いずれも開会が15分ほど遅れるという異様な事態のなかで始まった。

 衆院では立憲民主党枝野幸男代表が「国会で首相がウソをついていたかもしれないという問題だ。国会の審議が愚弄(ぐろう)された」と批判。菅氏に対し、安倍氏に説明するよう求めるべきだと迫った。

 これに対し、菅氏は「安倍前首相自身が国会で縷々(るる)答弁したことは事実だ」と主張。その上で、安倍氏に説明を求めることについては、「国会でお決めになられること」と拒んだ。

 枝野氏はさらに、菅氏が安倍内閣の官房長官で、安倍氏を擁護する発言を繰り返したことの責任を追及した。菅氏は「安倍前首相が国会で答弁された内容を安倍氏に確認し、答弁してきた」と述べ、安倍氏の発言内容に沿って答えたと説明した。

 「安倍政権の継承」を打ち出して政権の座に就いた菅氏は、安倍政権時の「桜を見る会」や森友・加計問題など「負の遺産」の説明責任も問われていた。

 東京地検特捜部の捜査のメスが入ったことで再び、国会の焦点になったが、菅氏は一貫して、安倍政権の問題であるとして距離を置いた。

 菅氏はこの日の答弁で、今回の問題について「新聞報道で知った」「(安倍氏側からの説明も)ありません」などと繰り返した。

 とはいえ、安倍政権の官房長官として、結果的に間違っていたことを国会で説明し続けた責任は、菅氏に重くのしかかる。

 特に問題なのは今年2月の答弁だ。野党から、夕食会が開かれたホテルの明細書を示すよう求められた安倍氏が「発行は受けていない」と主張。その後、菅氏も「全てホテル側に確認を取った上での答弁だ」と擁護した。「(国会で)答弁していることに責任がある。議事録に残る。そこが全てだ」とまで語った。

 この答弁について、立憲の福山哲郎氏はこの日の参院での質疑で、「ホテル側がウソを言ったということか」などと菅氏に迫った。

 すると、菅氏は「事実がもし違った場合には当然、私にも答弁した責任がある。そこは対応するようになる」と自身の責任に触れた。福山氏が、安倍氏への再確認を求めると、慌てた秘書官からメモをもらった菅氏は、「捜査中」であることを持ち出して、答えを拒んだ。

 結局、この日の計6時間におよぶ質疑で、「答えを控える」「答える立場にない」「答えるべきじゃない」という首相の答弁は、桜を見る会に関するだけで25回になった。

 一方、疑惑の当事者である安倍氏はこの日、自民党内の会合に出席した。「我々が進めてきた金融政策を中心とした金融、財政、そして成長戦略、間違っていなかった」などと自身の実績を誇ったが、疑惑に触れることはなかった。(大久保貴裕)

責任逃れの対応、前政権から

 この日の国会審議は、菅首相が「捜査」を理由に事実上の答弁拒否を連発したため、何度も中断した。質問と関係ないことを話す、論点をすり替える、事実確認に応じない……。政府によるそんな対応は、安倍前政権から度々繰り返されてきた。

 学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる問題では、17年2月に安倍首相(当時)が国会の場で「私や妻が関係していたということになれば、総理大臣も国会議員も辞める」と発言した。その約1年後、財務省による公文書の改ざんが発覚。安倍氏の妻・昭恵氏に関わる記述を削除する改ざんが、発言の直後から行われていた。

 その改ざんについても、疑惑が報じられた当初、事実確認を求められた麻生太郎財務相は「捜査が行われている」などと答弁を拒んだ。当時官房長官だった菅首相も会見で「財務大臣らの国会答弁に尽きる」などと繰りかえした。

 公文書改ざんをめぐっては、安倍政権が17~18年に行った国会答弁のうち事実と異なる答弁が139回に及んだことが、最近の衆院調査局の調べで分かった。政府が「廃棄した」「残っていない」などと主張していた文書が実際は残っていた。

 学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題では17年5月、「総理のご意向」などと記された文部科学省の内部文書の存在が報じられたが、菅官房長官(当時)は「怪文書のようなもの」と会見で存在を否定した。しかし、その後文書の存在が発覚。安倍氏は約1カ月後に国会で「反省」を口にしたが、政府側が事実と異なる説明をしたり確認を拒み続けたりして多くの時間が空費された。

 そこに透けるのは、政権にとって都合の悪い事実を認めず、国民の代表が集う国会への説明を軽んじる姿勢だ。

 いま「桜を見る会」をめぐる問題も、似た経過をたどっている。安倍氏は昨年の臨時国会や今年の通常国会などで、安倍氏側による会費の補塡(ほてん)はなかったと断言してきた。ところが今月、東京地検特捜部の捜査で、ホテル作成の明細書や領収書の存在が確認され、5年間で計916万円の補塡が行われていたことが判明。首相答弁の整合性が問われる。

 夕食会の疑惑をめぐる政権の対応について、新藤宗幸千葉大名誉教授(行政学)は「政権が『捜査』を理由に一切の説明を答えないという論理は通らない。安倍氏が首相として国会で答弁した以上、国会の場で説明する責任がある。菅首相も当時の官房長官として疑惑に答える責任がある」と指摘。前政権から続く国会対応を「行政府の答弁は法律をつくる土台となるものだ。この答弁がデタラメだったら、法律の根拠も揺らぎ、法による行政も成り立たない」と問題視する。(相原亮)

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