菅“GoToおじさん”「コロナ無策」を暴く

《総力特集 冬コロナ襲来》菅“GoToおじさん”「コロナ無策」を暴く

2020-11-26 05:00

  • ツイートする
  • シェアする
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
冬コロナの襲来で増加の一途を辿る新規感染者数。それでも菅首相はGoToキャンペーンの継続を主張してきたが、そこに立ちはだかったのが、尾身茂会長率いるコロナ分科会だ。「五輪の開催にも影響する」。意を決して突き付けた“最後通告”に、菅首相は――。

369295c52cdc5b66883bb6570358df0ade870073
“令和おじさん”から“GoToおじさん”へ

 三連休最終日の十一月二十三日正午、東京・赤坂の「国際医療福祉大学赤坂キャンパス」。二年前に建てられた真新しいビルに「専門家」と呼ばれる男たちが足早に吸い込まれていく。
 新型コロナウイルス感染症対策分科会の中枢メンバーだ。会長の尾身茂氏(地域医療機能推進機構理事長)を筆頭に、会長代理の脇田隆字氏(国立感染症研究所所長)や、岡部信彦氏(川崎市健康安全研究所所長)など。実は彼らはこれまで政府の分科会とは別に、独自に“極秘会議”を重ねてきた。
 この日の主な議題は、二日前の二十一日夕方に菅義偉首相が表明した「GoToキャンペーン」の運用見直しについて。分科会は二十日、提言〈私たちの考え〉を公表し、〈これまでより強い対策〉としてGoToの見直しなどを求めていた。それを受け、首相も「トラベル」では感染拡大地域での新規予約の一部停止、「イート」でも食事券の新規発行停止などを要請する考えを示したのだ。
だが、“極秘会議”の出席者から飛び出たのは、こんな言葉だった。
「これでは不十分だ。首相に危機感がない」――。
 菅首相自らが旗振り役として、今年七月にスタートしたGoToキャンペーン。
「北海道や沖縄など有力観光地を抱える地域の観光業はGoTo事業の恩恵を受け、一定の経済効果がありました」(政治部デスク)

0b12f7e2a9e0c087038e5b951cdc03e599ad8e63
トラベル、イートで観光地は賑わうが……

 しかし十一月に入り、北海道を中心に急速な感染拡大が起きていく。危機感を強めたのが分科会だ。前身の専門家会議を廃止し、政府に医学的・科学的見地から助言をする組織として七月に発足。ただ、専門家会議のオブザーバーだった“8割おじさん”こと西浦博京大教授がメンバーから外れ、代わりに経済の専門家らが加わったことで「政府の追認機関に成り下がっている」(厚労省関係者)などの批判も出ていた。
「尾身氏の耳にもそうした意見は入っていました。ただ、彼らも公衆衛生の専門家としての矜持がある。政府にもっとモノを言うべきだと考えるようになっていったのです」(同前)
 その尾身氏がまず動いたのが、十一月八日の日曜日。分科会の中枢メンバーらを集め、“極秘会議”を開いたのだ。場所は同じ国際医療福祉大学赤坂キャンパス。この日の会議は約八時間に及んだという。
 そして翌九日、尾身氏は政府に対し、異例の緊急提言に踏み切る。〈今までよりも踏み込んだクラスター対応〉など〈5つのアクション〉に言及。記者会見でも「(状況が悪化すれば)GoToキャンペーンは当然停止だ。今が最後のチャンスだ」と警鐘を鳴らした。

4bca522ab551e147f2a279213174f68dbfc0d28a
尾身会長

 十一月十二日から三日連続で一日当たりの新規感染者数は過去最多を更新。だが、首相は強気な姿勢を崩さない。親しい知人にはこう本音を漏らしていた。
「GoToは絶対に止めない。尾身さんは慎重だからね。経済を回さないと」
 この間にも感染は拡大を続けるが、菅首相が新たな手を打つことはなかった。
静かなマスク会食を“演出”
「GoToを継続することが“目的化”していたのです。GoToの安全性を強調するためなら、誤解を招きかねないデータを出すことも厭わなくなっていました」(前出・デスク)
 それが「移動では感染しない」という持論だ。その根拠として首相は最近、こんな発言をしている。
「GoToトラベルは延べ四千万人の方が利用している。その中で現時点での感染者数は約百八十人だ」
 首相の言葉通りなら、トラベル利用者の感染率は約〇・〇〇〇四%。ところが日本国民全体の感染率を計算すると、約〇・一%(人口約一億二千五百万人に対し、感染者約十三万三千人)。トラベルを利用した方が「感染しにくい」という結果になるのだ。
 本当なのか。観光庁国際観光課担当者に聞いた。
「GoToトラベルの感染者数は、宿泊施設等から報告を受けている範囲での数字です。感染状況全体を把握されているのは保健所だと思います」
 その保健所はと言えば、
「基本的に、感染者がトラベルを利用したか否かは確認していない。国立感染症研究所が定める『積極的疫学調査』の中に、トラベルやイートとの関連を調べる項目がないからです」(前出・厚労省関係者)
 つまり、トラベルの感染率は「自己申告」に過ぎないのだ。決して「トラベルを利用したから感染しにくい」というわけではない。

b6db283b9d7f04e4a9986c61a63fa434ef738cc5
トラベル担当の赤羽国交相

 東京都医師会の尾﨑治夫会長が解説する。
「トラベルだけでなく、イートも感染拡大の温床になっています。飲食時の会話が最も飛沫感染に繋がりやすいことは広く知られてきましたが、それを後押しする政策なわけですから」
 果たして、日本ではトラベルやイートがどこまで感染拡大に影響しているのか。
 厚労省の資料などを基に集計したところ、第二波が収束した八月末以降、全国の新規感染者数は平均五百~六百人程度で推移していたのが、十月十五日には七百八人、十月三十一日には八百七十七人、十一月七日には千三百三十三人と急速に増え続けている。

4ef5de546821f79f0e6e270f283b0a42b369e98a
10月中旬を境に急増する新規感染者数(厚労省の資料を基に作成)

「十月十五日頃は、トラベルに東京が追加され、イートが全国でスタートした十月一日から約二週間後。現在の新規感染者数は約二週間前の状況を示すとされます。つまり、トラベルとイートの開始時期を境に発症者が増えているということ。GoToが感染拡大の一つの要因なのは間違いありません」(同前)
 トラベルとイートの全国展開とともに、急増した感染者数。十一月十八日には初めて一日の新規感染者数が二千人を突破する。
 菅首相も思わず、周囲にこう漏らした。
「国民の中に不安が広がっている。何か手を打たないといけないな」
 それでも、首相の頭にGoToを止めるという発想はない。繰り出したのは、あくまでトラベルやイートを前提とした対策だった。
「静かなマスク会食」――。
 この「マスク」と「会食」という二つの単語を繋げたのは首相自らのアイデアで、「キャッチーだ」と自賛していたという。
「首相は苦手な記者会見は開きたくない。そこで秘書官から記者に『ぶら下がりの要請をしてほしい』とお願いし、十九日午前、『静かなマスク会食』を発信する場をわざわざ“演出”したのです」(首相周辺)
 だが、評判は芳しくない。女優の石田ゆり子も自身のSNSにこう投稿した。
〈静かなマスク会食…という言葉に少なからずのショックを受けたのは私だけではないだろうなぁ。(略)マスクしながらの会食って…そんなことするくらいなら黙って食べます!〉
官邸と分科会のいちばん長い日
 沖縄県立中部病院感染症内科・高山義浩医師の指摘。
「食事中にマスクを着けたり外したりして、その隙間から食べ物を入れるのは意外に複雑な行為です。感染症対策はシンプルでないとダメ。明らかに感染が広がっている今、実効性のある対策を打たなければ、年末はもっと酷くなります」
「コロナ無策」を続ける菅首相。だが「冬コロナ」の勢いは止まらない。「静かなマスク会食」を発表した十九日、東京都の新規感染者は五百人を突破。分科会のメンバーの元にも、現場のデータや報告が続々と届いていく。彼らの危機感は“臨界点”に到達した――。
 そして迎えた十一月二十日。ここから「官邸と分科会のいちばん長い日」が始まるのだ。
「医療崩壊が差し迫っています。このまま感染拡大が続けば、結果として経済が回らなくなり、五輪開催にも影響しかねません。GoToを見直すべきです」
 二十日午前、尾身氏は西村康稔経済再生相にそう告げたという。二人は普段から携帯電話で緊密にやり取りする間柄だ。その約一週間前にはオフレコで「四月とは状況は違う。見直しはあり得ない」と断言していた加藤勝信官房長官も、GoTo見直しに舵を切る。

9cb90e524e325da82703c8416e63ab6bc0b576c2
連日会見を行う西村経済再生相

「二十日昼、西村氏と加藤氏は菅首相と向き合い、GoTo見直しを訴えましたが、首相はなかなか首を縦に振りませんでした」(前出・官邸関係者)
一方、尾身氏は“強行突破”に打って出た。二十日夜に分科会を開催し、その後、冒頭に紹介した提言〈私たちの考え〉を会見で公表するのである。
cd6f9905f8af8fbb53b4b02b9d3abca0fa53b4c4
分科会から政府への提言〈私たちの考え〉

 分科会メンバーの経済学者、小林慶一郎氏が明かす。
「普段なら官僚の事前レクがあり、公表する文案も前日には届きます。ところが今回は事前レクが一切なく、当日朝、電話で口頭の説明があっただけ。提言の文案を見たのも、二十日夜の分科会が始まる直前でした。尾身会長も文案を“骨抜き”にされる時間を官邸に与えないよう、水面下で一気に事を進めたのだろうと思います。分科会メンバーから、GoTo見直しを提言することについても全く異論は出ませんでした」
 今回の提言〈私たちの考え〉では〈Go To Travel事業が感染拡大の主要な要因であるとのエビデンスは現在のところ存在しない〉としながらも、「人の動きというのが感染の状況に影響する一つの重要な要素」として、政府にGoTo見直しを強く迫ったのだ。
(以下は乞参照「週刊文春」)
Categories Uncategorized

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out /  Change )

Google photo

You are commenting using your Google account. Log Out /  Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out /  Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out /  Change )

Connecting to %s

%d bloggers like this:
search previous next tag category expand menu location phone mail time cart zoom edit close