安倍前首相「桜」捜査 カギ握る“闇任務”秘書と河井前法相

東京地検特捜部の捜査で急展開した「桜を見る会」事件。安倍前首相側は前夜祭の会場ホテル発行の領収書を廃棄していたというが、ロコツな証拠隠滅は罪の意識の表れ。今後の捜査のキーマンは聴取を受けている安倍事務所の公設第1秘書。もう1人、意外な人物として浮上しているのが、公選法違反の罪で公判中の元法相、河井克行被告だ。
◇ ◇ ◇
前夜祭の会費はたったの5000円。昨年までの5年間で計900万円超の不足分を補填した疑いがある。会場のホテル側は本来の開催費用が記された領収書を発行。宛名は、安倍氏が代表を務める資金管理団体「晋和会」で、これを安倍氏側は廃棄したという。
■「ガリガリ君」の領収書は大事に保存してたのに
日刊ゲンダイは過去に、晋和会の政治資金の使途を追及。総務省が開示した1万円未満の領収書には赤城乳業のアイス「ガリガリ君」や、安倍氏が大好きなジュース「なっちゃん」などセコイ支出のオンパレード。政治活動に関わる支出とは思えないケチな領収書を大量に保存していたのに、前夜祭に関わる「高額領収書」を捨てるとは、それだけ補填がバレるのを恐れていた証拠だ。

「裏金担当」として暗躍か
キーマンの第1秘書は、2007年に入所。安倍後援会の代表と政党支部の会計責任者を務める「地元・山口事務所のまとめ役」(永田町関係者)だ。実は、河井夫妻の買収事件でも“暗躍”していた。昨夏の参院選で広島選挙区に入り、案里陣営の一員として奔走したという。選挙戦を仕切った夫の克行被告とは“連携”していた可能性が高い。
この事件では選挙でバラまかれたカネの原資が、安倍氏の意思で党本部から夫妻の政治団体に渡った1億5000万円だった疑いがくすぶっている。2つの事件とも第1秘書が“黒いカネ”の運び屋になっていたフシすらあるのだ。政治資金に詳しい神戸学院大教授の上脇博之氏はこう言う。
「党本部から河井夫妻側に渡った1億5000万円は、報道で存在が明るみにならなければ『裏金』として処理されていたと思われます。他の候補者への交付金額は1500万円程度で、額が大きすぎて目立ってしまうからです。前夜祭の補填金も、収支報告書に記載がない以上、『裏金』と解するのが妥当です」
両者は「裏金」という点で共通するのだ。
「原資は使途の報告義務がない官房機密費や自民党の政策活動費などの可能性がある。前夜祭のとりまとめや河井夫妻の支援を巡って、第1秘書は『裏金担当』を担ったのではないか。担当は1人だけでなく、東京や山口などに何人かおり、安倍前首相の意を受けて動いていたのでしょう」(上脇博之氏)
克行被告は安倍氏の意を受けた第1秘書の“闇任務”を間近で見ていたはず。今後、公選法違反の罪に問われた公判での証言に注目だ。