文春だけが書ける「桜捜査」全内幕        安倍「秘書のせい」3つの嘘

黒川辞表当日に提出された告発状 本誌だけが書ける「桜捜査」全内幕 安倍「秘書のせい」3つの嘘

2020-12-03 05:00

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「桜を見る会」前夜祭を巡る問題が明るみに出たのは、およそ一年前のことだった。国会で「補填の事実はない」と“虚偽答弁”を重ねてきた安倍前首相。だが、黒川前検事長の辞任とともに事態は一変する。東京地検特捜部が「桜捜査」に乗り出すと、安倍氏は――。
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記者団に「捜査に全面協力する」と前首相
 安倍晋三前首相の地元、山口県下関市。今年十月に入り、男性支援者のもとに東京地検特捜部の捜査員から突然、連絡が入った。
「『桜を見る会』の前夜祭のことで話を聞きたい」
 男性は、「安倍晋三後援会」が主催した前夜祭に参加していた一人だ。数時間にわたって続けられた特捜部の聴取では、前夜祭の会費が「確かに五千円だったのか」について執拗に問い詰められたという。
 桜を見る会の“私物化”が指摘されたのは、昨年十一月のこと。中でも問題視されたのが、ホテルニューオータニやANAインターコンチネンタルホテルで開かれてきた前夜祭だ。昨年の出席者は約八百人に上ったが、会費はホテルの食事・飲み放題付きで「五千円」という破格の値段だった。

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昭恵夫人や著名人らとのポーズ

 ところが、オータニの宴会プランの最低価格は「一万一千円」。差額を安倍事務所が補填していれば、公職選挙法が禁じる寄附行為にも当たりかねない。政治資金収支報告書への記載もないため、政治資金規正法違反にも抵触する。
 ただ、当の安倍氏は国会の場で「(五千円は)ホテル側が設定した」「後援会としての収入、支出は一切ない」と断言してきた。
 ところが――。
 およそ一年の時を経て、事態は動き始める。十一月二十三日、読売新聞が朝刊一面で〈安倍前首相秘書ら聴取 『桜』前夜祭 会費補填巡り〉と報じ、午後にはNHKも追随したのだ。
「特捜部が十月から公設第一秘書や私設秘書、地元支援者二十人以上から任意で聴取を実施しているという内容でした。一五年から一九年までの五年間に、安倍氏側は費用の不足分として、総額八百万円超を補填していた。ホテル側は、安倍氏が代表を務める資金管理団体『晋和会』宛てに領収書を発行していましたが、安倍事務所は破棄していたといいます」(社会部記者)

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2013年分の「前夜祭」領収書

 当初は「コメントは差し控える」とした安倍事務所だが、読売の報道翌日の二十四日、“反撃”に出る。
〈安倍氏周辺によると、前夜祭の問題を巡り、安倍氏が事務所の担当者に対し、事務所で差額を補填していないかどうかを確認した際、担当者は「支出はしていない」と虚偽の説明をしていた〉(読売二十五日付朝刊)
 つまり、安倍氏は補填の事実を「知らなかった」というのだ。そう説明した「安倍氏周辺」とは何者なのか。
“口裏合わせ”が行われた一日
「晋和会の会計責任者で、自身も事情聴取された私設秘書の西山猛氏です。元毎日新聞記者で、安倍氏の父・晋太郎元外相とも親しかった縁もあり、第一次政権退陣後に政策秘書に就任した。公設秘書の定年(六十五歳)を迎えた五年ほど前からは、私設秘書として勤務しています」(政治部デスク)
 小誌は今年二月十三日発売号で、西山氏が二月四日に首相官邸付近で、くわえタバコ姿で立ちションをし、麹町警察署へ連行されていたことを報じている。

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「安倍氏周辺」が各紙に応じる(上:読売新聞11月25日付朝刊より)

晋和会の会計責任者は西山氏

「十月二十四日、西山氏が突然、旧知の清和会担当記者に連絡をしてきた。夕方、議員会館の安倍事務所に呼ばれたのは、朝日、読売、毎日、産経、NHK、フジの記者でした」(同前)
 西山氏は彼らを前にこう言い訳を捲し立てた。
「総理に補填していると答弁させるわけにはいかなかった。私や(公設第一秘書の)配川(博之氏)が伝えなかったのが悪い。(収支報告書に)記載しなかった私が悪い。安倍に本当のことを伝えたのは、読売が報じた十一月二十三日だ」
 だが、「秘書のせい」という西山氏の言い訳を鵜呑みにしていいのか。なぜなら、そこには明らかな「嘘」が含まれているからだ。
 西山氏は、安倍氏や、国会答弁を担っていた今井尚哉秘書官(当時)から前夜祭について「昨年十一月末から十二月に問い合わせがあった」と発言。だが安倍氏は昨年十一月十五日、約二十分間という異例の長さのぶら下がりに応じ、明確にこう答えているのだ。
「事務所から詳細について今日報告を受けた。(略)安倍事務所としての収入・支出は一切ない」
 にもかかわらず、「昨年十一月末から十二月」という“デタラメ”を口にした西山氏。実は、安倍氏が異例の取材に応じた「昨年十一月十五日」は、特捜部も着目する一日だ。事情を知る官邸関係者が明かす。
「昨年十一月十四日、NHKがオータニのコメントとして『最低価格は一万一千円からで値切り交渉には応じられない』と報道しました。すると翌十五日、安倍事務所はオータニ幹部を議員会館に呼び出した。そこで『会費五千円』が厳重に確認され、その後、普段は官邸にめったに現れない政策秘書の初村滝一郎氏が官邸を訪れた。話し合いの結果を伝えに来たのでしょう。この日の夕方、安倍氏がぶら下がりに応じたのです」
 この“口裏合わせ”を受け、十四日までは「値切り交渉に応じられない」との見解を示していたオータニも態度を翻す。三日後の十七日、小誌はオータニの清水肇東京総支配人に話を聞いたが、こう答えていた。
「五千円が安いと言われても、うちがそれで引き受けているんだから。一万千円というのは単なるベンチマーク。商売なんだから、予算に応じて検討しますよ。(略)五千円の領収書だって、お客さんに言われれば出しますよ。ホテルというのは、お客さんに頼まれれば何でもするんです」

「報告しないとは考えにくい」
「何でもする」の言葉通り、オータニの総支配人までが「五千円で引き受けた」という「嘘」をつくことになってしまったのだ。
 清水氏を再び直撃した。
「今日はダメだよ」
――以前は、会費五千円とおっしゃっていましたが。
 以降、問いかけに答えることはなかった(オータニ、ANAホテルは「一切お答えはできません」と回答)。
 西山氏とともに、安倍氏に補填の事実を報告していなかったというのが、公設第一秘書の配川氏だ。
 後援会関係者が言う。
「JA職員から安倍事務所の秘書になり、現在六十過ぎ。有能だったので、安倍氏に『筆頭秘書』に抜擢されました。前夜祭を主催した安倍晋三後援会の代表も務め、下関のパーティなどでは、安倍氏の代理で挨拶もしています」
 小誌が報じた河井案里参院議員の公選法違反問題でも、一九年の参院選でキーマンの役割を果たしている。
「安倍氏は、配川氏ら地元事務所の秘書を選挙前にたびたび広島に送り込みました。彼らは案里氏の秘書らと共に、県内の企業や団体を回っていた。河井夫妻の裁判でも配川氏の行動が出ています」(司法担当記者)
 安倍氏から信頼が非常に厚い配川氏。ただ、ある地元市議はこう訝しがる。
「彼はお金のことに限らず、何でも安倍さんに報告します。酒席の他愛ない会話まで伝えていて、東京で安倍さんにその話を振られて驚いたことがありました。前夜祭の件も、配川氏が安倍さんに報告していないとは考えにくいのです」
 地元事務所に姿を見せた配川氏に「安倍氏も知っていたのでは?」と声を掛けたが、返事はなかった。
 今回の桜を見る会問題で浮き彫りになった「秘書の嘘」「ホテルの嘘」、そして「安倍氏の嘘」。その結果、紡ぎ出された「秘書のせい」というストーリー。なぜ、安倍氏らはこれほど「嘘」を重ねてきたのか。
「モリカケと比べても、桜を見る会は安倍氏が直接関わっているという意味で、次元が違う。特に公選法違反での捜査は、絶対に避けたいと考えていました」
 そう明かすのは、安倍氏の側近だ。
 問題が表面化する直前の昨年十月、閣僚二人が小誌報道を機に連続辞任。指摘されたのは、菅原一秀経産相、河井克行法相、ともに公選法違反の問題だ。翌十一月、前夜祭を巡って同じく公選法違反が浮上する。
「公選法違反は進退に直結する問題となっていました。だからこそ、ホテルとも“口裏合わせ”も行ったのでしょう。河井氏に関しては支援者が次々事情聴取され、三月には公設秘書も逮捕された。その現実を目の当たりにし、先代からの支援者が聴取されるような事態だけは避けたいと心配するようになったのです」(同前)

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案里氏の参院選には安倍氏自ら駆け付けた

 捜査リスクを排除するために安倍政権が繰り出したのが、“官邸の守護神”と呼ばれた黒川弘務東京高検検事長(当時)の定年を延長させ、次の検事総長に据えるという奇策だった。
「黒川氏なら『桜捜査』でも“落とし所”を探るだろう、と期待したのでしょう。黒川氏は二月八日に検事長定年を迎える予定でしたが、一月三十一日、国家公務員法の解釈変更に踏み切り、定年延長が閣議決定された。この人事は、後に元最高検検事らから『違法の疑いが濃厚』と指摘されるほど異例のものでした」(同前)

 奇しくも同じ一月三十一日、安倍氏を巡る告発が不受理となっている。桜を見る会に自身の後援者らを多数招待し、予算を大幅に超過したのは背任に当たるとして、一月十四日に神戸学院大学の上脇博之教授らが提出していた告発状だ。
 上脇氏が証言する。
「東京地検は『代理人による告発は刑事訴訟法に規定がなく、認められない』という不可解な理由で不受理としました。しかしこれまで私は代理人を通じ、河井夫妻や甘利明氏らを刑事告発し、それらの告発状は受理されてきた。不受理だったのは、被告発人が首相の安倍氏だったからでしょう。私たちは三月九日にも代理人弁護士と協議して意見書を付けた上で、再度告発状を東京地検に提出しましたが、四月六日付でこれも不受理となったのです」
 黒川東京高検検事長の影響下にある東京地検が二度にわたり、不受理にした桜を見る会の告発状。だが、GWが明けると、膠着した事態が動いていく。
 大きな分岐点となったのは「五月二十一日」。この日発売の小誌が黒川氏の賭け麻雀問題を報じ、黒川氏は安倍氏宛ての辞表を提出(辞職は翌二十二日付)したのだ。日を同じくして全国の弁護士らが、今度は前夜祭について政治資金規正法ならびに公選法違反の罪で、安倍氏や配川氏らへの告発状を東京地検に提出している。

八月には告発状が受理され……
 実は、この告発状こそが数カ月後、重大な意味を持つことになる。
 連日の新型コロナウイルス対応に加え、「桜捜査」を巡って頼みにしていたという黒川氏の辞任。安倍氏は周囲にこう漏らし始めた。
「もう嫌になった」
 同時に、安倍氏の体調に異変が生じていく。
 六月十三日の検診で、持病の潰瘍性大腸炎に再発の兆候が見られると指摘を受けたのだ。黒川氏不在の東京地検特捜部は六月十八日、河井夫妻を公選法違反の疑いで逮捕。翌七月中旬にかけて安倍氏の体調は、急激に悪化していったとされる。

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“官邸の守護神”だった黒川氏が去り……

 七月十七日には林真琴氏が検事総長に就任し、夏に差し掛かる頃、「桜捜査」も大きく動いていく。
「特捜部はこの時期、ホテル側から、領収書や費用の総額が記された明細書の提出を受けています。安倍氏側はそれまで明細書について『明細書の発行は受けていない』と国会で答弁していただけに、検察幹部も『虚偽答弁だ』と明言していました」(検察担当記者)
 それだけではない。五月二十一日に提出された「三度目の告発状」。この告発にも携った上脇氏は「差し戻されていないが、受理したと聞いていない」と語るが、八月に入り、特捜部は密かに受理したというのだ。
「特捜部は『騒ぎになるから』との理由で、受理したことを告発者に伝えていない。ただ、ホテルが捜査協力に応じていることや、特捜部が告発状を受理したことは、安倍氏の耳には入っていたはずです」(同前)

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東京地検に出された「3度目の告発状」

 安倍氏に迫っていく「桜捜査」の包囲網。八月上旬には潰瘍性大腸炎再発が確認され、そして――。
 安倍氏は八月二十八日の記者会見で辞任を表明したのだった。現職首相として、捜査のメスが入るという最悪の事態を切り抜け、首相官邸を去ったのである。
 九月十六日に菅義偉首相に政権をバトンタッチして以降、しばらく体調回復に努めていた安倍氏。ところが、十月中旬以降、健康不安で退いたばかりの前首相とは思えないほど、意気軒昂な様子を垣間見せる。
「十月十八日には今井前秘書官らと、二十五日には麻生太郎副総理らと、日曜日のたびにゴルフに繰り出しています。『新薬が効く確率は五割と言われていたけど、その五割に入った』と冗談を飛ばしていた。昭恵夫人も『晋ちゃん元気になった』と語っていました」(安倍氏の知人)
 早くも復権を目論む安倍氏。その一方で、菅政権発足後、「桜捜査」は着実に進んでいた。特捜部は十月に入り、冒頭のように安倍氏の秘書や支援者らを立て続けに事情聴取。当然だが、菅首相は「桜捜査」にストップをかけていないのだ。
 そうした中で飛び出した十一月二十三日の読売とNHKの報道。折しも、菅首相は二十五日に予算委員会の集中審議を控えていた。感染拡大にもかかわらず、GoToキャンペーンを継続している問題を野党に追及されると見られていただけに、菅氏にとっては、批判の矛先が安倍氏に向いた形とも言える。
 安倍氏に様子伺いの電話を入れたという菅氏だが、集中審議の後には余裕の構えでこう漏らしていた。
「なんで(読売やNHKは)このタイミングだったのかね。でも、俺に(前夜祭のことを)聞かれても答えられるはずないだろ」
 一方、苛立ちを募らせるのが安倍氏だ。読売報道の数日後、こう言い放った。
「腹が立つなぁ」
 盟友・麻生氏も歩調を合わせたかのように、
「菅は尻尾を出したな。いずれ自滅する」
 と周囲にこぼした。
 麻生派関係者が解説する。
「読売とNHKは安倍氏との近さで知られていましたが、特にNHKは最近、菅氏と接近中と言われてきました。読売も安倍氏の『求心力の低下は必至』と書いた。麻生氏は暗に、菅氏側が安倍氏の影響力を削ぐためにリークしたのでは、と言いたかったのでしょう」
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安倍政権時代も“衝突”を重ねた麻生氏と菅氏
安倍氏と菅首相に三つの「溝」
 浮き彫りになるのは、安倍政権を継承すると宣言したはずの菅首相との間に横たわる「溝」だ。安倍氏は今、三つの“引継ぎ無視”に怒っているという。
「一つ目は『歴史教科書の記述』です。安倍氏は首相在任中、徴用工を巡る記述を是正するよう関係省庁に指示を出していました。ところが、菅氏がこれを水面下でストップさせた。実務家の菅氏は保守思想への関心が薄い。中国や韓国に迎合しがちと苛立っているのです」(前出・安倍氏側近)
 二つ目は、安倍氏が退任間際に掲げた「敵基地攻撃能力の保有」だ。
「安倍氏は『次の内閣でも議論を』と申し渡したにもかかわらず、菅氏は国会で『閣議決定されていないため、後の内閣に効力は及ばない』と明言した。『敵基地攻撃能力に否定的な公明党への配慮だ』と不満気でした」(同前)
 公明党への配慮は三つ目の問題にも通じる。「広島三区の候補者問題」だ。
「河井氏の広島三区に公明党は斉藤鉄夫副代表を擁立する意向ですが、菅氏はこの動きを黙認している、リベラルな公明党と肌合いが悪い安倍氏は『山口も広島も別に、公明党の協力がなくても勝てる選挙区ばかりだ』と、菅氏の姿勢に憤っていました」(同前)
(後略:乞う参照「週刊文春」)
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