「SDGs 危機の時代の羅針盤」岩波新書(南博・稲場雅紀)

「SDGs 危機の時代の羅針盤」岩波新書(南博・稲場雅紀)

「SDGs 危機の時代の羅針盤」岩波新書(南博・稲場雅紀)

現代の人類社会は、地球の資源再生能力の1・69倍を使うことで運営されている。
例えば、溜め池に毎分1立方メートルの水が流れ込み、同時に1・69立方メートル
の水が流出しているとしよう。
これが続けば、溜め池から毎分0・69立方メートルずつ水が減り、やがて、
池がなくなってしまうことは自明である、、、

すでに1970年に、「ローマ・クラブ」からの嘱託を受けたデニス・メドウズ
を中心とする国際チームが答えを出している。
1972年に出版されたローマ・クラブ「人類の危機」レポート「成長の限界」
では、資源の枯渇や汚染が閾値を超えることにより、強制的に人口減少が始まる時期を、
2030から40年の間、と算出したのである、、、

同チームが2000年になって、1970年から2000年までの資源消費の状況などを
再計算してみたところ、1970年のレポートでの推論と、ほとんど違いがなかったのである。

【「SDGs 危機の時代の羅針盤」岩波新書 20年11月 第1章 24p】

2015年は国連およびマルチラテラリズム(多国間主義)にとって輝かしい年であった。
9月にニューヨークにおいてSDGsが合意され、12月に気候変動交渉におけるパリ合意
が成立したことが二大ハイライトである。

【「SDGs 危機の時代の羅針盤」岩波新書 20年11月 第2章 64p】

現代の人類社会は、2016年の段階で、地球の再生産力の1・69倍を消費している、、、
(03年に設立された)「グローバル・フットプリント・ネットワーク」の計算によれば、
人間の社会・経済活動による消費や環境負荷が地球一個分を超えた
(エコロジカル・フットプリントの量がバイオキャパシティを超えた)のは、1970年。
過去50年で、技術の進展や土地管理能力の向上により、バイオキャパシティは27%
増加したが、エコロジカル・フットプリントの方は同じ50年で190%増加し、
「地球1・69個分」の持続不能な人類社会が形成されてしまったのである、、、

人類社会は平等に地球1・69個分を食いつぶしているわけではない。
そこには、大きな格差が存在する。
同ネットワークの用意するデータによると、全人類が米国のレベルで資源消費すれば、
地球4・97個を食い尽くすことになる。
ところが、全人類が資源消費の少ない東ティモールのレベルで資源消費すれば、
地球0・3個分にとどまる。
これが意味するのは、人類社会は、地球1・69個分もの大量の資源を消費しながら、
多くの人々の生活を貧困のままに置き去りにしているということである。
言い換えれば、私たちの創り出した社会は、極端に資源浪費的でありながら、
貧困・格差の解消という観点から言えば、きわめて非効率なのである。

【「SDGs 危機の時代の羅針盤」岩波新書 20年11月 第4章 119p】

労働運動のあるべき姿を明晰に示し、実践を続けている人物がいる。
全統一労働組合の特別中央執行委員、鳥井一平さんである。
2013年、米国国務省は、彼を「人身売買と闘うヒーロー」として表彰した。
これは、彼のもう一つの顔である「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)
での、外国人技能実習生の救援と制度への告発の取り組みによるものが大である。

鳥井さんは、SDGsにも強い関心を持ち続けている、、、

鳥井さんは言う。
「「全統一」に相談にくるような労働者は、自分は社会の隅っこにいる、と考えがちです」。
ところがSDGsを考えると、ビジネスと人権、地球環境問題、非正規雇用といった世界の問題が、
自分の抱える問題とつながってくる。
会社に戻れば、取引先が新たな課題としてSDGsについて語っている。
そうすると、春闘集会で学んだSDGs、自分が抱えている労働の課題が世界とつながっている、
と言う意識が出てくる。
「それが、誇りと自信につながってくるんです」。
自分が働く会社でSDGsが話題に上ってくれば、
「じゃあ、SDGsを使って、要求の仕方を変えてみようか」
という話に発展してくる。
「SDGsは、中小・零細企業の労働者の意識を前向きに変える力を持っている」
と鳥井さんは言う。
地球的なものの考え方を労働運動の現場に直接持ち込んでいくことによって、労働者の意識を
変え、また、企業の経営者に対するアプローチを変えることができる、というのである。

SDGsを活用することで、労働者は自信を持ち、労働組合は企業に対して、
より能動的なアプローチをとることができる。
では、逆に、労働組合はSDGsが目指す社会の実現にどのように寄与することができるのか。

鳥井さんは、労働組合の価値、役割から考える必要があるという。
鳥井さんは労働組合の役割を以下の3つに定義する。
第一に、労働力を安売りさせないこと。
第二に、労働力を売っている労働者は人間であり、もの扱いをさせない。
人間は修理が効かないし、差別はダメ。
人間の尊厳を守らせること。
そして鳥井さんは言う。
「第三に、社会の公共性を防衛すること、です。
労働組合はだいたい、最初の「労働力を安売りさせない」はやっている。
良心的な労組は、外国人労働者や未組織・非正規労働者を含め、
人間の尊厳を認めさせる努力もしています。
しかし、最後の「社会の公共性を防衛する」というところまで意識できているか
どうかが大事です」。
ここの部分が、労働組合とSDGs、ビジネスと人権、というところに直結しているのだという。

実際のところ、組合員の労働力を安売りさせない、ということだけやっていては、
労働組合は社員会のようなものになってしまい、例えば、ビジネスと人権などの課題について、
問題意識を持った企業側に立ち遅れてしまう、、、

では、SDGsの目標に照らして、労働組合がめざす「次の社会」はどんな社会なのか。
鳥井さんは次の、あるべき社会を
「労使対等原則が担保された、多民族・多文化共生社会」と定義する。
実際のところ、労使対等原則は、
「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべき」
とする労働基準法第2条など、法では明記されている。
しかし、実際のところ、労使が対等という認識は社会的に浸透していない。
また現代は、どんな社会問題でも科学技術イノベーションによって解決される
という風潮が強い。
そうではなく「なぜそれが引き起こされているのか、その根源をみつめ、
人と人の関係はどうあるべきかと言うことを考え、実践していく必要がある」
と鳥井さんは言う。
鳥井さんの発想の根源は、常に「人」にある。
SDGsの達成された社会とは、人が人として尊重される社会である。
労働組合が「社会の公共性を防衛する」ことによって、
労働者はその社会の実現の主人公になることができる。
鳥井さんのメッセージは明確である。

【「SDGs 危機の時代の羅針盤」岩波新書 20年11月 第4章 136p】

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