米大統領選から約1カ月。バイデン次期大統領が勝利を確実にしたが、トランプ大統領は「不正があった」として、敗北を認めていない。そんなトランプ氏の主張を支持する人が、日本にもいる。どんな考えからなのか。

 「トランプ大統領の再選を応援しよう!」「おー!」

 11月29日午後、トランプ氏を支持し、大統領選での不正を訴えるプラカードを掲げた人たちが、東京・日比谷公園を出発した。「米国大統領選挙、勝者はトランプだー! バイデンではない!」「日米マスコミは真実を報道せよ!」と連呼しながら、銀座を行進した。

 デモ参加者が訴えるテーマは、米大統領選だけではない。星条旗や日の丸に交じって、青地に黄色い星が並ぶ、見慣れない旗を持っている人も多い。中国政府を批判する政商の郭文貴氏と、トランプ氏の元側近スティーブ・バノン氏が6月に設立を表明した「新中国連邦」の旗だ。「テイク・ダウン・CCP(中国共産党を倒せ)」のかけ声も聞こえた。

 中国語を話す参加者も多い。ビラを配る女性に、どこから参加しているのかを尋ねると「日本語わからない」。横からすっと現れた男性が「みんなボランティアです」とにこやかに遮った。聖書の一節が書かれた横断幕や、大統領選を「善と悪の戦い」とする看板を持つ人もいた。

「情報はネットで」共通の声

 デモ終了後、参加者に話を聞いた。4年前からトランプ氏を支持する70代の夫妻は「対中国で、力で対応している」と理由を説明する。一方、「9月までトランプ氏が嫌いだった」という50代女性は、欧米メディアのトランプ氏批判に違和感を抱き、本人のツイッターを見て「アメリカを絶対に譲らない、悪と戦う姿勢に感銘を受けた」と語る。自らは無宗教だが、中国共産党が邪教とする気功集団「法輪功」のメンバーで友人の、在米中国人から影響を受けたという。友人らと参加したキリスト教徒の女性(70)も「中国の脅威」を口にした。

 参加者は共通して「情報はネットで得る」と話した。公安関係者によると、デモには約650人が参加し、法輪功の他にも複数の新宗教の関係者が含まれたという。

 宗教社会学が専門の井上順孝・国学院大名誉教授によると、これらの新宗教は「反中国共産党」を明示し、今回の主張も「路線として響き合っている」という。ただ、「宗教的信念より、SNS時代の情報の流れ方の問題と理解した方がいいだろう」とみる。

 「自分の価値観にあうメディアを選択し、その情報だけで世界を理解する人が増えている。『自分たちだけが正しく、他の情報は知らなくていい』と、他の視点を遮断してしまう点で、原理主義的な宗教の見方と似ている。人数が増えると大きな問題になりかねず、小さい動きのうちから注視すべきだ」

 ツイッターでも、「大統領選で不正」という投稿が続く。SNS分析に詳しい東京大大学院の鳥海不二夫准教授の調べでは、10月24日~11月8日に「トランプ」「バイデン」「米大統領選挙」のいずれかを含む日本語のツイートは約447万件(リツイートを含む)あった。最も広がった500件を分析したところ、約10万アカウントによる約58万ツイートの集団ができ、投稿内容から「トランプ支持層」とみられる。このうち6割超が、過去に安倍晋三前首相を支持する投稿を多く拡散するなど、「保守系アカウント」という。

 この集団の中で、最も広がったのは「郵便投票で機械的に製造されたバイデン票が発見された」という投稿で、約1万4千回拡散された。「人口と投票率の計算が合わない」「不自然にバイデン票が急増」なども上位だった。

 ただ、集団の中でツイートの半数は、約5%のアカウントに集中していた。鳥海氏は「ツイッター上ではよく見られる現象で、一握りの人が拡散の大部分を担う偏った構図といえる」と述べる。

 日本語のツイートでトランプ氏支持の大きな塊ができるのはなぜか。鳥海氏は「不思議な現象に思えるかもしれないが、大統領選に関して、トランプ氏の『不正選挙だ』という主張くらいしか語り合うような話題がなく、結果として、トランプ氏支持のツイートが多く現れたのでは」と述べた。(荒ちひろ)

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