菅政権73兆円補正は国民の希望と裏腹 コロナ対策8%だけ

事業規模約73.6兆円のうち、新型コロナの感染防止には6兆円程度――。8日、菅政権が閣議決定した追加経済対策の内訳をみると、絶望的になる。
〈国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策〉とうたいながら、感染防止に使うのはたった8%。事業規模51.7兆円と、大半は「ポストコロナ」に費やすのである。
中には、所有者に最大5000円分のポイントを還元するマイナンバーカード普及策や、バーチャル株主総会の実現など「不要不急」な対策も目立つ。看護師不足は深刻で、コロナ患者を受け入れた病院ほど大幅減益に苦しんでいる。赤字に転落し、冬のボーナスも満足に払えない病院も続出中だ。なぜ、逼迫する医療機関を救うために予算を投じないのか。
最新の共同通信の世論調査では、感染防止と経済活動のどちらを優先すべきかとの設問に「どちらかといえば」を含め76.2%が感染防止を選んでいる。
■政府が掲げる「希望」と国民の希望は真逆
「政府が掲げる『希望』と国民の希望は真逆です。予備費から3000億円も『Go To トラベル』延長に充て、人の移動を促す一方、医療体制の確保は交付金だけで、あとは自治体任せ。そもそも臨時国会を閉じたため、対策を裏付ける今年度3次補正予算の成立は、来年1月18日召集予定の通常国会を待つしかない。感染対策は時間との闘いなのに、危機感もスピード感もない政権のせいで無事に正月を迎えられるか心配になります」(経済評論家・斎藤満氏)
自助おじさんの菅首相に「公助」を求めるだけムダなのか。

年明け早々マイナス成長に転落
新型コロナの感染再拡大で、日本経済は年明けに再びマイナス成長に転落する恐れが大きく、菅首相は早くも正念場だ。
内閣府が8日発表した今年7~9月期の実質GDP(国内総生産)改定値では、GDPの過半を占める個人消費は前期比5.1%増だが、飲食店などへの時短要請で、一年で最も盛り上がる12月の消費の見通しは暗い。設備投資も2.4%減で「業績悪化で投資絞り込みが続く」(第一生命経済研究所)とされる。
政府の73.6兆円の追加経済対策も「GDP押し上げ効果は期待しない方がいい」(農林中金総合研究所)というからお手上げ。実質GDPは年明け早々に再びマイナス成長に陥り「二番底」にはまる公算が大だ。