〈医療崩壊は人災だ!冬コロナ危機〉 「尾身会長を黙らせろ」菅首相逆ギレ命令

〈医療崩壊は人災だ!冬コロナ危機〉 「尾身会長を黙らせろ」菅首相逆ギレ命令

2020-12-17 05:00

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冬コロナが本格到来する中、「GoToと感染拡大に因果関係はない」と主張してきた菅首相。この間、“世界的権威”と呼ばれる学者たちが様々な「警告」を発していた。だが、首相はこれらを無視し、GoTo継続に拘泥する。その結果、医療現場からは悲痛な叫びが――。
 そこにあるのは「ブレない」ことをウリにしてきた宰相の、頑迷な姿だった。
「札幌は緩められないのか」
 十二月十三日、午後四時半。官邸で新型コロナウイルス対応を協議中の菅義偉首相は、語気を強めた。
 出席したのは、加藤勝信官房長官、田村憲久厚労相、西村康稔経済再生相のみ。事務方にさえ退席を求めた“密室協議”で議論されたのは「GoToトラベルキャンペーン」についてだ。
 札幌市と大阪市への到着分はすでに一時停止されていたが、この協議では東京都と名古屋市でも同様の措置が検討されていた。そんな中で首相が主張したのは、札幌市での一時停止解除。十二月八日に、旭川市で自衛隊の災害派遣が決定したことで、道内の看護師不足は解消されており、札幌の医療現場も余裕が出てきているはずだ――というのが、その理由だった。
 行動の引き締めを協議する場で飛び出した「GoTo緩和策」。色をなして反論したのが西村氏だ。
「そんなこと、国民が許しませんよ!」
 それでも菅首相は譲らない。約四十分の協議は平行線を辿った。結論は翌十四日に持ち越されたが――。

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支持率急落に菅首相は……

 危機的な局面に差し掛かった「冬コロナ」。十一月二十五日からの「勝負の三週間」でも、感染拡大に歯止めはかからなかった。重症患者も急増し、医療体制は逼迫しつつある。

 それでも、首相は「GoToが感染拡大の主要な原因であるとのエビデンスはない」と繰り返してきた。
「少なくとも十二月十一日までは、菅首相には一時停止する考えは全くありませんでした。この日未明、日本テレビが『政府が二カ月間のGoTo一時停止を検討』と報じたことに首相は激怒。実際、二カ月間の一時停止案は国交省から提示されていましたが、『絶対にやらない』と拒んでいたのです」(首相周辺)
 十一日午後三時、菅首相が出演したのは、インターネット番組「ニコニコ生放送」。「こんにちは。ガースーです」とあだ名で自己紹介し、「(GoTo停止は)まだ考えていない」と強気の姿勢を貫いた。
「『ガースーです』は台本にもなく、菅首相のアドリブ。司会の馬場典子アナウンサーに大ウケで、ニンマリしていました。首相は発信力不足という批判を気にしていましたが、苦手な会見はやりたくない。そこでニコニコを好機と捉えたのです。視聴者はGoToを支持する若者が中心で、いわば“ホーム”。周囲から『うまくいきましたね』と言われ、自信を回復させたようでした」(官邸関係者)

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「ガースーです」とニンマリ(「ニコニコ動画」より)

 十三日には、冒頭のように、札幌のGoTo緩和を主張し続けた菅首相。西村氏だけでなく、官邸でコロナ対応の実務を一手に担う側近中の側近、和泉洋人首相補佐官までが「俺も困っているんだよ」と愚痴をこぼしていたという。
「医者もみんな反対だから」
 周囲の懸念をよそに、首相はGoToへの拘りを最後まで見せていたものの、
「首相が大きなショックを受けたのが、十四日午前中の段階で伝わってきたNHKの世論調査です。支持率四二%は、前月比マイナス一四ポイントの大幅下落。首相は、精度の高いNHKの世論調査は何より重視している。これまでも学術会議問題など世論の反応を見極めるのに、NHKの調査を最も参考にしていました。その調査で支持率が大幅に下落した上、GoTo継続を求める声が僅か一二%だった一方、一時停止を求める声は七九%に上った。事ここに及んで、首相はGoTo継続を諦めたのです」(前出・首相周辺)
 そして十四日夕方、新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、全国で十二月二十八日から一月十一日までのGoTo一時停止を発表したのだった。
「もう仕方ない。医者もみんな反対だから」
 菅首相は諦めにも似た声でそう漏らしたという。
 それでも、記者団に「GoToに感染拡大のエビデンスはないとの認識が変わったのか」と問われると、
「そこについては変わりません」
 と言い切っていた。
 前出の首相周辺が補う。
「実際、分科会が十一月二十日に出した政府への提言でも〈エビデンスは現在のところ存在しない〉と記している。首相は『経済を回す』ためにも、この提言の記述を“錦の御旗”に、GoToを止めるべきではないと主張してきたのです」
 だが、「GoToと感染拡大に因果関係はない」という主張は本当なのか。実はこの間、“世界的権威”とも呼べる専門家たちはそれぞれ解析したデータを基に、GoToに拘泥する首相に対して「警告」を発信していた。
 新規感染者数が二千人を超え、「第三波」が到来した十一月十二日。〈現在流行中のSARS-CoV-2 D614G変異株は、高い増殖効率と感染伝播力を示す〉と題された論文が公開された。発表者はウイルス学で世界的な業績を持つ東大医科学研究所の河岡義裕教授だ。
「日本でいま流行しているコロナウイルスは欧州由来の変異株ですが、この株は変異によって感染力が拡大しており、飛沫感染しやすい性質を持つことが示唆されています。国立感染症研究所内でもこの研究結果は重要視され、官邸にも報告されていますが、菅首相が危機感を抱くには至りませんでした」(感染研関係者)

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東大教授が発表した研究論文

 逆に、官邸側が強調してきたのは「GoToの安全性」を裏付けているかのように見えるデータだ。厚労省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード。そのメンバー、“8割おじさん”こと西浦博京大大学院教授が訴える。
「十一月十九日に〈航空旅客数と感染者数の増加には統計的な因果関係は確認できない〉と題された『参考資料』が提出されました。厚労省の会議なのに、なぜか作成者は〈内閣官房・内閣府〉。そのため、官邸の意思が反映された資料だと受け止められたのです」
 どんな内容なのか。資料では新千歳空港(北海道)、福岡空港(福岡県)、那覇空港(沖縄県)の三カ所における航空旅客数と、自治体の感染者数が折れ線グラフで比較されている。例えば北海道の感染者数グラフは、十月中旬から右肩上がりのカーブを描く一方、旅客数はこのタイミングで山なりに下降傾向にあり、確かに二つの数字は関連性がないように見える。
初めて示された「エビデンス」
 しかし、西浦氏は言う。
「非常に杜撰なデータです。航空旅客数と感染者数の因果関係を調べるなら、コロナの潜伏期間も考慮するべきなのに、単純な人数比較しかしていません」
 会議の出席者からも異論が相次いだ。「政策的な意図が透けて見える」「誤解を招く資料なので、公開するべきではない」――。
「ところが後から厚労省のホームページを見ると、この資料がしっかりアップされていた。事務局は会議前から資料を報道関係者に配布していたため、公開しないのは不自然だと判断したそうです」(同前。内閣官房は「統計的観点からの一つの分析例として提出したもの。疫学的手法によるものではない」などと回答)
 要は「GoToと感染拡大には因果関係がない」ことを示唆する資料が、専門家の反対を無視して公開されたのだ。しかも、西浦氏の分析によれば、むしろ結論は逆になるという。
「本来、航空旅客数と比較すべきなのは、感染者数ではなく、一人から何人に感染が広がるかを示す『実効再生産数』。問題の資料をベースに比較してみたところ、航空旅客数が増えた直後に二次感染が増えていることが分かりました」
 西浦氏は他の様々な側面も含めて因果関係を分析した論文を執筆し、現在、第三者による査読を受けている最中だという。
「コロナは未知の要素も多く、様々な学者が解析を重ねている最中です。それゆえ、十一月二十日の段階では〈エビデンスは現在のところ存在しない〉という表現になりましたが、他方で同じ提言には〈人々の移動が感染拡大に影響する〉とも記している。完全なエビデンスがないからといって、GoToを後押ししていいわけでは全くありません」(分科会関係者)
 専門家の不満が一つの臨界点に達したのが、十二月一日、菅首相と小池百合子都知事の会談だった。GoTo利用について六十五歳以上の自粛を呼び掛けることで合意したのだが、
「あまりにナンセンスだ」
 そう漏らしたのは、分科会の中枢メンバーで、公衆衛生学の“世界的権威”押谷仁東北大大学院教授。SARSに対峙した指揮官として名を馳せた人物だ。その押谷氏をして、なぜ「ナンセンス」と言わしめたのか。
 二日後の十二月三日、押谷氏は厚労省アドバイザリーボードの会議に、重要な資料を提出している。
〈国内移動歴のある例での二次感染の頻度〉
 一月十三日から八月三十一日の期間で、感染者のうち移動歴が公表されている二万五千二百七十六例を解析した押谷氏。そのうち県を越えた国内移動をした人が他の人に感染させた割合は二五・二%だったが、移動歴のない人や不明な人は二一・八%だった。つまり、移動した人のほうが他人に感染させる頻度が高いことが明らかになったのだ。
 さらに年代別に見ていくと、〈感染して移動している症例数は圧倒的に若年層に多い。また移動した後に二次感染を起こした人も若年層に多い〉。だからこそ、押谷氏は「六十五歳以上だけのGoTo自粛はナンセンス」だと嘆いたわけだ。

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国内移動と二次感染の関連性を示す押谷教授(上)の資料

 押谷氏は同じ資料を、十二月十一日の分科会でも報告。分科会メンバーの一人がその重要性を指摘する。
「GoToが推奨する『人の移動』と感染拡大の関連性は、専門家には自明の理でした。ただ、それを示す『完全なエビデンス』だけがなかった。しかし押谷氏のデータで、そのエビデンスが分科会やアドバイザリーボードの場で初めて示された形になるのです」
西村大臣は「尾身さんが……」
“世界的権威”たちから発せられた数々の「警告」。ところが、菅首相はこれらを蔑ろにしてきた。
「ただ、押谷氏らはあくまで理系の専門家。こうした『警告』を政治の場に持ち込むことは不得手です。そこで立ち上がったのが、かつてはWHO西太平洋地域事務局長として、中国政府とも渡り合ってきた分科会の尾身茂会長。『意見が通らない』とこぼすこともありましたが、国会にも出てきて、専門家の見解を強く主張するようになったのです」(前出・分科会関係者)
 迎えた十二月九日の衆院厚労委員会。尾身氏は、
「ステージ3相当の地域においては、GoToも含めて人の動き・接触を控える時期だと分科会では思っている。この見解は政府に対し何度も言っている」
 などと答弁。政府が分科会の意見を無視してきたことを半ば認めたのだ。

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ついに“決起”した分科会の尾身会長

 会見の回数も増え、強い口調でGoTo見直しを求めた尾身氏。菅首相の怒りの矛先は、分科会の担当閣僚、西村氏に向かう。
「尾身さんをもう少し黙らせろ。政府の対応が後手後手に見えるじゃないか」
 そう“命令”を出したという。
 前出の首相周辺が語る。
「首相は西村氏が分科会に寄り添う発言を繰り返すことを、苦々しく思っていました。西村氏の会見後に自ら『喋り過ぎだ』と電話で叱ったこともあった。首長との調整も西村氏の役割ですが、小池都知事などは政府批判の“パフォーマンス”も得意。『西村は全然調整できてない』と不満をぶちまけていました。尾身氏への怒りに、そうした西村氏への不満も重なり“命令”に繋がったのでしょう」
 一方の西村氏は、親しい知人らに愚痴をこぼした。
「専門家もギリギリのところで歩み寄っている。むしろ尾身さんが、もっと強いことを言いたい専門家を押さえてくれているのに」
 西村氏は事務所を通じ、小誌にこう答えた。
「分科会の提言内容等については、必要な報告を行っていますが、総理への説明の際のやりとりについてはお答えを差し控えます。尾身分科会長、押谷構成員をはじめ専門家の皆様とは、新型コロナウイルスの感染状況や政府が講ずべき対策について、ほぼ毎日意見交換を行い、十分な意思疎通を図っています」

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首相と衝突する西村大臣

 首相がGoToに拘泥してきた一方で、大きな打撃を受けてきたのが、医療の現場に他ならない。確かに政府は「緊急包括支援交付金」を創設。医療従事者への慰労金(一人五万~二十万円)などを含め、約二・七兆円の予算を計上している。だが、
「こうした交付金を医療現場が受け取れていないケースが全国で多発しているのです」(厚労省担当記者)
 厚労省医政局医療経理室に尋ねたところ、
「十一月末時点で、約二・七兆円のうち、交付が決定したのが約二・六兆円。実際に医療現場に届いているのは、約八千億円です」
 医療現場には予算額の約三〇%しか入金されていないことになるのだ。
 全国医学部長病院長会議の調査結果からは、その実態が浮かび上がる。百三十八カ所の大学病院で、医療従事者への慰労金として請求済なのが計三百二十一億六千七百万円。このうち、十一月四日までに交付が決定したのは僅か四十六億二千二百万円。自治体との協議にすら入っておらず、宙に浮いた慰労金は百五十六億五千八百万円に及ぶ。
「各補助金に対し、どのような申請書類が必要なのか、なかなか自治体から降りてこないケースがありました。補助金の種類によっては手続きも煩雑。審査が厳しい自治体もあり、交付に時間がかかるようです」(病院長会議・櫛山博事務局長)

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慰労金が医療現場に届かない

 こうした“目詰まり”について、首相はこう“言い訳”をしている。
「厚労省と県が悪い」
 背景にあるのは、厚労省への根強い不信感だ。
「コロナ初期のマスク不足対応でも、厚労省は自治体との連携が不十分で、県が備蓄していたマスクの調達に時間がかかりました。首相は包括支援交付金についても、同様の問題があると見ている。『国が直接やらないといけない』と言い出し、増額する方向です」(前出・官邸関係者)
 ただ、マスクの経験があったにもかかわらず、「動きがあまりに遅い」(政治部デスク)。煽りを食うのは、逼迫する医療現場だ。
コロナの厚労委員長がパーティ
(後略:乞参照「週刊文春」)
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