安倍氏不起訴「公選法違反の不問は許されぬ」 任命拒否された松宮孝明教授

安倍氏不起訴「公選法違反の不問は許されぬ」 任命拒否された松宮孝明教授

記者会見する安倍晋三前首相=衆院第1議員会館で2020年12月24日午後6時29分、竹内幹撮影

 安倍晋三前首相の後援会が開いた「桜を見る会」前夜祭を巡り、東京地検特捜部は24日、公職選挙法違反と政治資金規正法違反の両容疑で告発されていた安倍氏を不起訴処分(容疑不十分)とした。その一方で、公設第1秘書を前夜祭の収支計約3000万円を記載しなかったとして、政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴した。だがこの処分は妥当といえるのか。公選法の罰則規定に詳しい立命館大の松宮孝明教授(刑事法)は「略式起訴ではなく、起訴して裁判で実態解明を進めるべきだ」と指摘。検察の処分に疑問を投げかけた。松宮氏は今年9月、菅義偉首相から日本学術会議の会員任命を拒否された6人のうちの1人。【古川宗/統合デジタル取材センター】

「高いハードル」立件してこなかっただけ

 ――今回の東京地検の判断をどう考えますか。

 ◆まず、告発されていた二つの容疑のうち、収支報告書に記載しなかったという政治資金規正法違反だけの立件になったことに疑問を感じます。公選法は選挙人らへの供応接待や寄付を禁じており、その意味で安倍氏を立件できたと思うからです。

 前夜祭に招かれていた人の多くは安倍氏の後援会員であり、安倍氏の地盤培養行為に当たるのは明らかです。前夜祭が行われた時期が選挙間近ではないため、公選法が禁じる「買収」には当たらないという見方がありますが、実は、選挙が直近かどうかは本質的な問題ではないのです。安倍氏側から「支援をしてほしい」という意味で利益供与があれば、公選法違反になる可能性が高いはずで、これを不問に付してしまうのは許されないと思います。

 ――公選法については、受け取った側に利益を受けた認識が必要など、立件のハードルが高いと言われます。

 ◆検察側が慣例的に今まで適用してこなかったから、「ハードルが高い」と言っているだけだと考えます。前夜祭に参加したのは、後援会員であり、明らかに会費を超える豪華な会食だったのですから接待を受けているという認識はあったと思います。ましてや、政党の後援会ではなく、安倍前首相個人の地元の後援会ですから、誰に投票するのかは明白でしょう。検察がこれまで立件してこなかっただけで、検察の起訴基準などは公選法の条文には書かれていません。

起訴して正式な裁判を求めるべきだった

 ――政治資金規正法違反で秘書だけを略式起訴しましたが、妥当でしょうか。

 ◆そこも問題だと思います。1992年に東京佐川急便側からの5億円裏献金事件で、金丸信・元自民党副総裁について、検察は略式起訴で済ませ、世論の大きな批判を浴びました。

2017年に参院法務委員会で参考人として発言する立命館大の松宮孝明教授=国会内で17年6月1日午前10時39分、川田雅浩撮影

 今回は、安倍氏側が開催費約700万円を補塡(ほてん)し、前夜祭の収支計約3000万円を記載していなかったようですが、これほど高額なのに略式起訴にしているのは解せません。略式起訴ならば正式な裁判が開かれず、実態が解明されません。

 そもそも、安倍氏本人への捜査をきっちり行ったのかも疑問です。任意で事情聴取すれば捜査を尽くしたと言えるのでしょうか。安倍氏は「補塡について知らなかった」と述べているようですが、本当にその通りなのか。補塡の原資も分からないですし、どういう会計処理をされて出てきたお金かも解明が必要です。強制捜査をして正式裁判を求め、法廷で全容を解明すべきだったと思います。

 ――安倍氏は国会で説明する予定になっています。

 ◆政治資金の管理責任の問題があり、これまでの答弁との整合性も問われているわけで、当然国会できちんと説明しないといけないでしょう。補塡の事実を知らなかったとしても、政治家としての資質が問われるわけで、その責任は免れません。政治家として、自らの政治資金の管理に不正があったことや自身が補塡を知らなかったことに対して合理的な説明ができるかどうかが焦点になります。

うそついた「前科」、証人喚問を

 ――野党は、虚偽の答弁をすれば偽証罪に問われる証人喚問を求めていました。

 ◆前夜祭について、衆院調査局によると、安倍氏が首相のときに事実と異なる国会答弁を118回していたという報道がありました。いわば、安倍前首相は、118回うそをついたという「前科」があるわけです。うそをついたら罰せられる証人喚問を行わなければ意味がないのは常識的なところでしょう。自民党側も証人喚問をしたくないなら、その理由を説明しなければなりません。

 ――菅義偉首相の責任はどうでしょうか。

 ◆二つの責任があります。一つは官房長官時代、安倍氏を擁護し、うそにお墨付きを与えていました。うそに気づいていたか否かに関わらず、調べなかった責任があります。もう一つは、菅首相は現在、自民党の総裁でもあるので、総裁としての責任があるわけです。自民党が証人喚問を拒んだことや、安倍氏という所属議員に対しての監督責任についても、しっかり説明をすべきだと思います。

桜問題を「年越し」させるべきだ

 ――政府や自民党は桜を見る会について、年内で幕引きを図ろうという意図が透けて見えます。

 ◆この桜を見る会について最も大事なことは、この問題を年越しさせることです。桜を見る会自体についても、招待者の全容が分からないなど、解明しなければならない点があります。年内で終わりになんてできるわけがない。野党やメディアは新年最初の課題にして、前夜祭に対する政府と自民党の対応責任を問うべきです。年が明けて新年になった途端に、「昨年のことだから」と忘れ去られてしまうような雰囲気にしてはいけないと思います。

まつみや・たかあき

 1958年生まれ。立命館大法務研究科教授。京都大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学(博士)。専門は刑事法学。南山大専任講師、立命館大助教授などを経て2004年から現職。著書に「『共謀罪』を問う 法の解釈・運用をめぐる問題点」など。

古川宗

1988年福島県生まれ。2013年入社。高松支局、富山支局、政治部を経て2020年4月から統合デジタル取材センター。富山時代には政務活動費の不正受給問題、政治部では首相官邸や参院自民党などを取材し、この春には育児休暇を2カ月取得しました。趣味は海外の文芸書の収集で、好きな作家はトマス・ピンチョン。

Categories Uncategorized

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out /  Change )

Google photo

You are commenting using your Google account. Log Out /  Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out /  Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out /  Change )

Connecting to %s

%d bloggers like this:
search previous next tag category expand menu location phone mail time cart zoom edit close