政治部長 坂尻顕吾

 「桜を見る会」の前日に開いた夕食会を巡り、安倍晋三前首相は25日、国会で弁明した。安倍氏は疑問に答え、政治的な責任は果たせたのか。朝日新聞の坂尻顕吾政治部長が読み解く。

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 現職の首相が事実と異なる答弁を繰り返し、国権の最高機関たる国会の審議が結果として虚偽をもとに進められた。「憲政史上の汚点」と指摘されても致し方ない事態をどこまで認識しているのだろうか。

 25日、衆参両院の議院運営委員会で行われた安倍晋三前首相の釈明を聞きながら、そんな思いを抱かざるを得なかった。

 第2次安倍政権時代、私は2年余り首相官邸担当の次長として取材を統括していた。安倍氏の国会戦術の根幹は、強気の姿勢と相手の質問に正面から答えない「はぐらかし」にある。

 安倍氏はこの日、夕食会の参加費が1人当たり幾らだったのか野党から繰り返し問われると、「質問通告をいただいていない」。ホテルの明細書提出を求められると、「当事務所にはない」などと改めて拒んだ。おわびから始まったはずの弁明が、いつの間にか首相時代の口ぶりに戻っていた。

 事実に反する答弁は、衆参両院で少なくとも118回を数える。安倍氏はその責任の取り方について議員辞職を否定した。国のトップを担った政治家の出処進退としてそれが適切かどうかは、今後も問われる。

 歴代最長となった政権運営では公私混同や国会軽視の姿勢が際立った。森友・加計学園問題による政治不信に始まり、「桜を見る会」で税金で賄う公的行事のありようが問われた。

 この安倍政権の継承を前面に掲げた菅義偉首相も当時官房長官として安倍氏の説明を追認し、批判に向き合おうとしてこなかった。「政治とカネ」をめぐる問題は、吉川貴盛・元農林水産相の現金受領疑惑でも強制捜査が始まった。

 議会制民主主義の基盤を揺るがす事態に、政権は政治の信頼回復をどう果たすのか。その問いに答えが出るまでこれらの問題に幕引きはない。

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