「年頭挨拶」 2021年 佐久病院理念を胸に

「年頭挨拶」 2021年 佐久病院理念を胸に

佐久総合病院 統括院長 渡辺仁 わたなべひとし 

佐久病院理念:

佐久病院は「農民とともに」の精神で、医療および文化活動をつうじ、住民のいのちと環境を守り、
生きがいのある暮らしが実現できるような地域づくりと国際保健医療への貢献を目ざします。

「農民とともに」 334号 2021年1月31日 (発行責任者 渡辺仁)

皆さん、あけましておめでとうございます。
今年こそ穏やかで明るい1年になりますよう、心からお祈り申し上げます。
本来であれば軽やかに今年の抱負を書きたいところ、少し重い話になりますが、
最後までお付き合いください。

・今、なぜ理念なのか

昨年は、全世界が新型コロナウイルス感染症に翻弄された1年でした。
残念ながらその脅威は年が明けてさらに増しており、いまだ収束の目途が立たない状況です。

佐久病院グループも、診療制限や人間ドック業務の一時停止、、、など、
過去に例のない対応を余儀なくされました。
最も残念だったことは、昭和22年から続いてきた病院祭を初めて中止したことです。
病院と地域住民との緊密な関係を願って始められた病院祭は、職員間の親睦を深めるためにも
非常に重要であり、佐久病院最大のイベントでした。

さて、分割8年目を迎える今年は、連携など運営上の諸問題を調整する分割再構築第3期にあたります。
分割時から職員や施設同士の連携をどう行うかが最大の課題でしたが、昨年のパンデミックによって交流
がさらに制限されるなか、問題がより顕在化して今後の佐久病院グループの運営に黄色信号が灯りました。
危機感を覚え各施設の責任者と相談したところ、鄭診療部長から
「理念と実際の仕事との結び付けが難しくなっている。
結果として全体のまとまりがなくなり、部署同士の連携がうまくいかないのではないか」
と意見が出されました。
多くの責任者が同様の意見であり、もう一度理念を確認することから始めようということになりました。
2021年の年頭、理念とともに、これからの病院運営に触れたいと思います。

・理念が生まれた背景

若月先生の院長時代は、「農民とともに」の言葉にすべてが凝縮されており、事あるごとに若月先生は
その精神を自らの言葉で説明されていました。
松島松翠先生の院長時代には、「地域と一体となった病院づくり」というフレーズを用いた
行動目標的な理念が作られましたが、充分に周知されるまでには至らなかったようです。

現在の理念は1999年に当時の清水茂文副院長を中心に作成されました。
90年代後半、病院開設から半世紀が過ぎた頃、バブルがはじけ日本社会が停滞期に入りました。
農村、農業は崩壊の一途をたどり医療界も大きな変革期を迎えるなか、佐久病院もこのままでは
立ち行かなくなると、21世紀に向けた強い再起の思いから現在の理念が生まれたと理解しています。

・理念の説明

佐久病院理念:

佐久病院は「農民とともに」の精神で、医療および文化活動をつうじ、住民のいのちと環境を守り、
生きがいのある暮らしが実現できるような地域づくりと国際保健医療への貢献を目ざします。

以下は、清水先生が本誌「農民とともに」73号に書かれた文章を参考に、自分なりに理念を解釈したもの
です。

「文化活動」は医療において大変重要な活動ですが、それを上手に説明できる人は少ないと思います。
ただ、松島先生が「文化こそが”人間らしさ”の基本的な要素」と言われたように、
人間が人間らしく生きるためには文化が必要であり、その手助けをするのが医療者だと思います。
ソーシャルディスタンスが必要な時代に、どのように文化活動を行なっていくのか、今問われています。

「いのち」の中には「健康」、また「環境」の中には「農業・農村」が含まれています。
当時もダイオキシン問題などがありましたが、現在は地球温暖化による自然災害までも念頭に置く必要
があります。

「生きがいのある暮らし」には、福祉への取り組みの強化が示されています。
現在、佐久病院グループには2つの老健があり、ジェイエー長野会との関係も含めて、
保健・医療・福祉を担う複合体としての役割がさらに高まっています。

「地域づくり」が、理念の最も大切な部分です。
従来の「病院づくり」から「地域づくり」への転換です。
地域の住民が自ら考え行動する、本当の医療の民主化を地域に確立しようと思うならば、
この転換が必要との強い思いが込められています。
そしてこれからも、その思いは変わりません。

「国際保健医療への貢献」という表現に、地方の一病院がなぜそこまで、と疑問を持つこともあるかも
しれません。
私は、より住みやすい地域づくりを病院理念とするならば、地域という枠組みがさらに世界へ広がる
のは、多様性を重視する佐久病院においてはやはり必然だと感じています。

佐久病院の長い歴史と職員の熱い思いから、この理念が紡ぎ出されたことがうかがえます。
このような時代だからこそ、改めてこの理念を継承していく覚悟が必要です。

・理念を実現するために

理念は佐久病院グループに所属するすべての職員が働くうえでの目的です。
日々理念を意識しているかと問われれば否と答える職員も多いと思いますが、
この目的があるからこそ働くことができるのであり、また仕事上行き詰まった時や
何か選択に困った時などに拠りどころとなるものでもあります。

それでは、理念を実現するためにはどうしたらよいでしょうか。
次に挙げる項目は、当たり前と思う職員もいるかもしれませんが、当たり前ができて初めて
理念に結び付く仕事ができるようになると思います。

・21世紀版”二足のわらじ”(タスクシェアリング)

・医療安全の推進

・ハラスメントのない 働きやすい職場づくり

・接遇の向上

これらには、精神的な要素が大きく関わっていると思っています。
いろいろな考え方はありますが、やはり現場で働く職員の気持ちが最も大切です。
自分の仕事に誇りを持つこと。
一方で自分の部署以外のこともよく理解して、応援する心構えがあること。
そこからお互いにリスペクトし合える関係が生まれます。
これは職場の活性化につながることでもあり、そのような環境があれば、次世代を担う
人材が生まれ育ちます。

他者を思いやることが肝要であり、他社とは患者さんとその家族、職員、そして地域の皆さんです。

・運営上の課題

人口減少を含め、この地域がゆっくりと右肩下がりである現況は、今後も続くことが予想されます。
佐久病院グループに今求められているのは、地域の変化とニーズを的確に把握し、変化することです。
経営においても同様に変化することが求められています。
2021年度は黒字必達です。
求められる機能に対して、ICTを積極的に活用し、適正に人員を配置して、再編と統合、
必要であればダウンサイジングすることが重要です。
このことは、すべての職場、施設が対象であり、2024年に向けた働き方改革そのものです。

ただ、コロナ禍で分かったことは、医療はやはり社会的共通資本であり、起こりうる自然災害や
新たな感染症に対処するためには、市場原理だけで考えてはいけないということです。
英知を絞り、タイミングを逃さず、適切に対応していきたいと思います。

最後になりますが、一人でも多くの職員が、自分の日々の仕事が
「生きがいのある暮らしが実現できるような地域づくり」
につながっていると実感できる、そんな佐久病院を目ざします。

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