(社説)英国の核戦力 時代錯誤の軍拡撤回を
人類を危険にさらし続ける核兵器の脅威を、どう下げていくか。国際社会が共有すべき目標に冷や水を浴びせる動きだ。
英国が公表した核軍備増強の方針である。外交・安全保障政策を見直すなかで、保有する核弾頭の上限を今の180発から260発に引き上げるという。
「他国による核兵器の増加と多様化」などを理由に挙げる。名指しはしていないが、台頭する中国や、ロシアに対抗する狙いがあるのは明らかだ。
英国の核軍備は、米国やロシアに比べれば小規模とはいえ、冷戦後は減らす流れにあった。それをあえて逆転させるのは、核軍拡の競争を加速させる愚行にほかならない。
英国も加盟している核不拡散条約は、核保有国に誠実な軍縮交渉を義務づけており、これに違反する疑いがある。貴重な国際ルールを維持するうえでも、撤回すべきだ。
近年、核をめぐる状況は悪化を続けている。
米ロ中の間で大国主義が強まり、新型核の開発が進む。米ロは新STARTと呼ばれる核削減の条約を何とか延長したが、後継条約は見えていない。
中国を加えた多国間の軍縮枠組みを築かねばならないうえ、北朝鮮やイランなどの核開発を抑える方策に、国際社会は頭を悩ませている。
こうしたなか、英国までが核を増やす姿勢を示すこと自体、国際社会を深く失望させる。
英国の核は潜水艦に積まれて運用されており、米国の協力抜きでは維持も更新も難しいのが実態とされる。それでも核にこだわるのは、合理性を欠いた大国意識ゆえではないのか。
核不拡散条約をめぐっては、この夏に再検討会議がある。1月に発効した核兵器禁止条約に加わった国々は、核保有国の無責任さを批判するだろう。
保有国は、核禁条約が「分断を生む」と冷視してきたが、自らの特権的な態度こそが国際平和のモラルを壊し、亀裂を生んでいると自覚すべきだ。
英国は昨年、欧州連合から離脱し、その後、アジア地域への関与を深めようとしている。
日本と自由貿易協定を結ぶなど経済面にとどまらず、軍事的な動きも見せつつある。年内に就役する新型空母を、この地域へ航海派遣させるという。
グローバルな存在感を高めたいようだが、核増強を含む砲艦外交まがいの行動を強めるのなら、時代錯誤に映る。
日本政府が英国はじめ欧州との連携を深め、国際秩序の安定に努めるのは理にかなう。ただし、「核なき世界」の目標に背く動きに対しては、被爆国として明確に反対するべきだ。
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