「これまでロヒンギャについて声を上げなくてごめんなさい」
る。
この多数派のビルマ族と少数派民族の間の「連帯」の動きは、国際社会からも大きく非難を浴びてきたイスラ
ム系少数民族ロヒンギャとの間にさえも起きた。
ロヒンギャの難民キャンプから続々と、民主化に向けた市民の抗議運動を指示する写真がフェイスブックなど
に投稿され、3本指を立てて連帯を示すロヒンギャの姿が拡散されると、ミャンマー市民からは「これまでロ
ヒンギャについて声を上げなくてごめんなさい」などの声が相次ぎ、さらには、学生連盟などが正式なロヒン
ギャへの「謝罪文」を公開するという、クーデター前からは考えられない、異例の事態が起きている。
少数民族出身のササ氏が「革命の顔」として発信
こうした少数民族との間の動きは、政治的思惑をはらみながら国軍とNLD側双方において意図的に行われて
もいる。NLDの議員らがクーデター後に臨時政府のような形で設置した「連邦議会代表委員会(CRPH)
」は、これまでに(3月17日)、すべての武装勢力について非合法組織の指定を解除するとの声明を発表、抗議
活動を続ける市民を保護していることへの感謝の意を表すなど、積極的な姿勢を見せている。さらに「CRP
H」は、少数民族が長年にわたって要求してきた連邦制民主国家の樹立を約束しており、少数民族に対して「
共通の敵」である国軍への明確な共闘姿勢を打ち出している。
特に注目されているのは、チン州出身の少数民族である医師、ササ氏の「国連特使」としての起用だ。ササ氏
は、欧米メディアを始め、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアでも積極的に海外に向けて
の発信を担うなど、革命の「顔」として活躍しており、国軍に対抗する姿勢を打ち出しながら少数民族の支持
拡大を狙う「CRPH」側の戦略は明らかに功を奏しているように見える。
事実、歯に衣着せぬ発言で、国軍への強い非難も辞さず、連帯を呼びかけるササ氏のソーシャルメディアのア
カウントは、民族や宗教に関係なくミャンマー人から今、絶大な支持を集めており、彼が発する文言は瞬く間
に拡散されている状況だ。国軍が政治関与への理由付けとして掲げてきた少数民族の武装組織鎮圧に対し、和
平を促進することにより国軍統治の必然性を崩していき、国際社会による支援をさらに取り付けたい背景もあ
る。
ササ氏は既に、南東部のカイン州に多いカレン族の自治拡大を求め国軍と衝突してきた武装組織カレン民族同
盟(KNU)の代表や、北東部のシャン州、西部のチン州の武装組織の幹部とも相次いでZoom会談を行ってソ
ーシャルメディアを通じて報告をし、ビルマ族だけでなく少数民族からも非常に好意的に受け止められている
。