バイデン大統領100日演説(原文・和訳)

コロナ対策、成果を強調 バイデン氏、就任100日前に 施政演説

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 バイデン米大統領は28日の施政方針演説で、就任から100日目を前に新型コロナウイルス対策の成果を強調し、経済や外交など重点課題への取り組みをアピールした。コロナ対策のため、演説は入場者が厳しく制限される中で行われ、演壇の後ろではともに女性となった上下両院の議長が見守った。▼1面参照

ここから続き

視聴者数が多い「プライムタイム」(米東部時間午後9時ごろ)にテレビ各局が演説を生中継した。米メディアによると、例年なら議員や招待客ら約1600人で議場が埋め尽くされるが、今年は約200人が間隔を開けて参加するにとどまった。

バイデン氏は演壇の後ろに座ったナンシー・ペロシ下院議長に続き、上院議長を兼ねるカマラ・ハリス副大統領にも「マダム」と呼びかけ、「これらの言葉を演壇から言った大統領はいない」と語って演説を始めた。施政方針演説をする大統領の後ろには上下両院の議長が座るのが慣例だが、女性2人となるのは初めてだ。

米大統領の演説では、敬意を払うために、起立と拍手によって演説がしばしば中断される光景がおなじみになっている。今回も、バイデン氏が「(アフガニスタンから)兵士を自宅に帰すときだ」と語ると、大きな拍手が巻き起こった。最後に「私たちの能力を超えるものは何一つない。一緒に始めよう」と拳を握りしめて力強く語ると、全員が立ち上がって称賛した。

ただ、出席者同士が距離を保つために設けられた空席が多いだけに、民主党議員らが立ち上がって拍手している一方、共和党議員が座ったままで固い表情をしているときもあり、その様子が際立った。

トランプ前大統領が2年前に議会で一般教書演説をした時は、ゲストとして不法移民に家族を殺された人を招き、自身の強調したい政策をアピールした。今回は、バイデン氏が招いたゲストはいなかった。

会場ではバイデン氏以外はマスクをつけたままだった。演説を終えたバイデン氏も参加者と抱き合うことはなく、何人かと軽く拳を合わせて談笑した後、会場を後にした。

今回の演説について、CNNの調べでは「非常によかった」と受け止めた視聴者は51%だった。就任直後の施政方針演説としては、トランプ氏の57%、オバマ氏の68%、ブッシュ(子)氏の66%より低かった。(ワシントン=合田禄)

■<考論>巨額の財政支出、国民に懸念も ブルッキングス研究所上級研究員、ウィリアム・ガルストン氏

バイデン大統領の支持率は50%を上回っており、全般的には、好意的な印象を持つ人が多いと言えるだろう。指導力や誠実さにおいて評価されており、平均的なアメリカ人のことを気にかけているという印象を持たれている。(現金給付などの)新型コロナ救済策も支持されている。

ただ、天気に例えれば今は晴れているが、この先には雲が立ち込めている。嵐が来る可能性もある。

メキシコ国境の移民問題はバイデン政権にとって深刻で、これまでの対応はあまり統率が取れていなかった。経済対策の巨額の財政支出をめぐり、国民の間に懸念が高まる兆しもある。

国をより結束させるという大統領の約束は、残念ながら現実のものとはなっていない。分断はむしろ、過去の大統領の就任直後と比べても深まっている。バイデン大統領がこの軌道を修正するために何らかの手を打つのか、その場合に共和党が応じるのかどうか。まだ定かではない。

今後の方向は、最初の一歩を大統領がどう踏み出すか次第だ。たとえばインフラ整備法案については両党は対立しているが、真剣な交渉をして一致点を探るべきだ。(聞き手・大島隆)

■<考論>気候変動の抑制、米中が協調を 米ボストン大名誉教授、アンドリュー・ベースビッチ氏

ワシントンの外交問題専門家の間では、中国を米国が対抗するべき敵国とみなす意見が強まっており、多くの当局者たちは、「新冷戦」は現実に起きつつあると考えている。

中国が軍事力を高めているのは確かだが、私には台湾に軍事侵攻して占拠する能力をもっているかどうかは判断できない。ただ、中国にとってリスクは極めて大きい。世界大戦に発展したり、核戦争になったりするリスクもあるうえ、中国が国際社会の中で経済的に孤立するのも目に見えている。中国の指導者層はリスク回避をすると思う。

一方、台湾も中国からの独立などが引き起こす危険を理解しており、リスク回避に動くと思う。中台の双方がステータス・クオ(現状)を望んでいる。台湾有事の危険性を軽視はしないが、関係国が冷静さを保てば、必ずステータス・クオを維持できると思う。

米中が、経済など両国が利益を共有する分野で協力する道を見つけることは極めて重要だ。特に気候変動の分野では米中は世界最大の温室効果ガス排出国だ。両国が温室効果ガスを減らすために協力して初めて、地球規模の気候変動の発生を抑制することができる。(聞き手・園田耕司)

■<考論>製品供給網、重み増す日米協力 米ハドソン研究所上級研究員、トマス・デュースターバーグ氏

バイデン政権は製品供給網の強靱(きょうじん)化を訴え、巨額の補助金で半導体産業などを育てようとするインフラ投資案も打ち出した。高性能半導体の生産が集まる台湾を奪おうとする中国の意図を防ぐことが、経済的にも重い課題になっている。

製造業の強化は、もちろん重要だ。ただ、「自給自足」を志向するかのような傾向には懸念がある。日米欧は(中国の不透明な産業補助金を念頭に置き)世界貿易機関(WTO)ルールの強化を訴えてきた。(自国優先の産業政策をとる)「重商主義国家」としての中国に立ち向かう以上、米国が過度な産業政策に傾くのには慎重であるべきだ。

欧州連合(EU)はエリート官僚による支配で民主主義が弱まり、中国への危機感も米国や日本よりずっと弱い。日米首脳会談でWTO改革への決意を確認したのは効果的だった。

供給網強化の協力は緊密な同盟国と的を絞って進めるべきだ。日本は半導体材料などで高い技術を持ち、米国と強みを補い合える。レアアースなどの資源を持つ豪州と、通信網の市場として重要なインドとを交えた「Quad(クアッド)」の枠組みを活用し、米国と日本の協力を補強することが有益だ。(聞き手・青山直篤)

■米大統領、施政方針演説(要旨)

新型コロナウイルス

就任から100日間に1億回のワクチン接種を約束したが、すでに2・2億回の接種を終えることになる。貧しい人々が入手できるよう、国内4万カ所近くの薬局と、700カ所以上の地域の医療センターにワクチンを届けた。各地で接種会場を整備し、米国人の9割が会場から5マイル(約8キロ)以内に暮らす。16歳以上ならば誰でもすぐに接種を受けられる。

1月の就任の際は完全なワクチン接種を終えた高齢者は1%以下だった。今や65歳以上の高齢者の7割が接種を済ませた。新型コロナによる高齢者の死者数は1月以降、80%減少した。

【経済対策】

100日の間に130万人以上の新規雇用を創出した。歴代のどの大統領よりも多い。

米国は、数十年前まで国内総生産(GDP)の2%を研究開発に投資していたが、今は1%に満たない。中国やほかの国々が急速に迫っている。高機能の電池や生命工学、クリーンエネルギーといった、未来の製品や技術の開発に力を入れなければならない。

【国内格差の是正】

今こそ、米国の全人口の1%の富裕層が公正な負担をする時だ。課税の抜け穴を取り除き、年間40万ドル以上を稼ぐ富裕層に対する課税を強化する。

コロナ禍では2千万人の国民が失業した一方、650人ほどの富豪が資産を1兆ドル以上、増やした。経済全体を底上げし、ミドルアウト(中間層の購買力向上)によって経済を成長させる。この国を築いたのはウォール街ではなく中間層だ。

米国では20世紀に12年間の公教育が定着した。当時は世界最高水準だったが、世界も追いついてきた。21世紀の今、他国と渡り合うには、12年間の公教育では不十分だ。無償の公教育を4年間延長する。3~4歳児向けの就学前教育と2年間のコミュニティーカレッジ(2年制公立大学)での学習を加えたい。

気候変動

気候変動の問題は米国だけでなく、世界規模の戦いだ。パリ協定に復帰し、中国やロシア、インド、EU(欧州連合)を含む世界との気候変動サミットを開くという公約を守った。地球を救うために行動すれば、多くの雇用を生み、経済成長や生活水準の向上につなげられる。

【外交(対中国)】

我々は21世紀を勝ち抜くために中国やその他の国との競争の中にいる。

中国の習近平国家主席との対話の中で、私は競争は歓迎するが、衝突は望んでいないと伝えた。ただ、中国の国営企業への補助金、米国の技術や知財の侵害など、米国の労働者や産業にダメージを与える不公正な貿易慣行には立ち向かう。

習氏には、インド太平洋地域で強力な軍のプレゼンスを維持するとも伝えた。紛争を起こすためではなく、予防するためだ。

【外交(その他)】

ロシアのプーチン大統領に対し、行動には結果が伴うことをはっきりさせた。選挙介入、政府や企業へのサイバー攻撃に対し、相応の対応を行ってきた。ただ新戦略兵器削減条約新START)の延長や気候変動対策のように、我々は相互の利益のためなら協力もできる。

イランと北朝鮮の核開発計画は米国と世界の安全保障にとって深刻な脅威だ。同盟国と緊密に連携し、外交や厳しい抑止力で対処したい。

20年を経た今、軍を(アフガニスタンから)撤退させる時が来た。私は自分の息子を戦地に送る意味を知る過去40年間で最初の大統領だ。

【国内の分断】

米国に迫るテロの脅威の中で最も深刻なのは、白人至上主義によるものだ。我々はこの国の魂を癒やすため、立ち上がらなくてはならない。

ジョージ・フロイドさんが警察官に抑えつけられて亡くなったのは、約1年前だ。来月のフロイドさんの命日までに、警察と市民の信頼関係の再構築や警察改革などを実現させたい。

アジア系住民に対するヘイトクライム憎悪犯罪)対策法案が上院で可決された。アジア系は長年のヘイトクライムに苦しんできた。下院での法案の早期可決を求めたい。

銃規制

銃による暴力が米国に蔓延(まんえん)している。国民を銃の暴力から守るために全ての力を尽くす。議会も行動するときだ。銃購入時の身元確認の抜け穴をふさぎ、殺傷能力の高い武器や弾倉の(販売などの)禁止のため、より多くの共和党議員の協力が必要だ。民主党共和党かではなく、米国民の問題だ。

【移民】

移民は米国にとって常に不可欠な存在だ。私は就任日に公約通り、包括的な移民法案を議会に提出した。暴力や政変、飢餓などへの支援は(移民となりうる)人々が自国にとどまることにつながる。

【民主主義】

民主主義が今も機能していると証明しなくてはならない。就任から100日間、民主主義に対する国民の信頼回復のため行動してきた。私たちは国民にワクチンを提供し、何十万もの雇用を創出した。実際に人々が生活の中で実感できる真の成果をもたらしている。

専制主義が未来を勝ち取ることはできない。我々が一つになれば、成し遂げられないことはない。

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