加害者が被害者を監視 住民を疑心暗鬼にする重要土地利用規制法案

加害者が被害者を監視 住民を疑心暗鬼にする重要土地利用規制法案

すでに一昨日の(旧い)記事ですが、「有料記事」で全文を読めない方もおいでだと思うので、下に貼り付けます。
沖縄の方々が感じるこの法案への「恐怖」「危険」感覚をよく表していると思います。
1945年に遡らなくても(つまり「戦後」生まれでも)、リアリティをもって「軍」の監視下におかれる意味が想起できてしまうのですね。
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☆毎日新聞 2021年6月4日
加害者が被害者を監視 住民を疑心暗鬼にする重要土地利用規制法案
(写真)赤嶺政賢氏=須藤孝撮影
 国会で審議中の重要土地利用規制法案は、政府が安全保障上重要とする全国の米軍・自衛隊基地、海上保安庁の施設、原発などの周囲1キロ、さらに国境離島で暮らす住民をすべて監視の対象にし、土地・建物の利用を中止することを可能にするものだ。
<奪われた土地の周囲に住むものが監視される>
 沖縄の米軍基地は国際法に違反して、住民が収容所に入れられている間に一方的に土地を奪い、作られた。サンフランシスコ講和条約後は米軍政下で「銃剣とブルドーザー」で新たに土地を奪われて基地が拡大された。本来は1972年の沖縄返還の際に米軍が奪った土地は地主に返されるべきだったのに、政府が新たな法律をつくって強制収用を続けた。占領下の状態が今に引き継がれている。
 そのことの悔しさはずっと県民のなかにある。戦争が終わって帰ってきたら古里は基地になっていた。戦後生まれでも自分たちの先祖が登ったあの山に行ってみたいという思いは募るばかりだ。
 基地から受けた被害と屈辱は数知れない。なのになぜ基地の1キロ以内に住んでいるために監視されなければならないのか。
 加害者が被害者を監視する。沖縄の米軍基地が形成された歴史的経緯からいっても、絶対にそんな不条理なことは認められない。この法案が示された時に、とっさにそのことが頭に浮かんだ。理屈抜きに体が反応した。本当にひどい法案だ。
<沖縄の意見は聞かない>
 しかも法案を作成する過程で沖縄の声を聞いたわけでもなく、基地被害について理解している人に聞いたわけでもない。政府は法案策定にあたって「国土利用の実態把握等に関する有識者会議」で意見を聞いている。しかし、私が国会で質問したところ、有識者会議では沖縄の基地の歴史や被害については「明確なそういう切り口からの議論はなかった」と答弁した。
 沖縄には基地があって当たり前だという棄民状態だ。日米同盟ありきで、民意よりも軍事を優先させることが日本政府にとって当たり前のことになっている。
 沖縄県民が一番、傷ついているのは県知事選でも国政選挙でも県民投票でも示された沖縄の民意が無視されていることだ。「沖縄県民はどうせ少数だから押し切ろう」と思っているのかもしれないが、そうはいかない。
<法律を作る理由がない>
 そもそもこの法律を作る根拠(立法事実)はあるのか。重要施設の機能を阻害する要因について政府はほとんど具体的な説明をしない。数少ない説明のなかでは飛行場周辺の構造物の設置などを示している。
 しかし空港周辺の高さ制限を超える構造物の設置は航空法ですでに規制されている。当たり前の話だ。それを国会質問で指摘したところ、小此木八郎領土問題担当相は航空法について聞いているのに、電波法について説明するというおかしな答弁しかできなかった。省庁の担当者は「安全保障上の理由」をあげて、具体的な答弁をしなかった。新たな法律を作らなければ基地の機能阻害を防げないという根拠はないことがはっきりした。
 たとえば米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)で言えば、周辺住民が夜間・早朝の飛行差し止めと損害賠償を国に求めた「爆音訴訟」が続いている。外来機の飛来が問題になっているが、地元自治体・住民の要望を受け、防衛省自身がその飛来状況を目視調査している。
 つまりは政府を挙げて普天間飛行場の機能を監視しなければ、住民の生活が成り立たない。それでも米軍基地の機能を抑制することができていない。これが実態だ。基地の機能阻害を防ぐどころの話ではない。それ以前に政府は基地被害を防ぐことさえできていない。
<理由は排外主義>
 10年近く前から「対馬などで外国資本が土地を買っている、安全保障について重大な問題だ」と言って不安をあおっている人たちがいる。しかし、防衛施設に隣接する土地を調査したものの、運用に支障が生じる事態は確認されていないと説明してきたのは政府自身だ。
 立法する理由もないのに、このような法律を作るのは、結局は排外主義にお墨付きを与え、特定の国に対する差別と偏見を助長することになる。この法案が成立して動き出せば米中軍事対決にリンクし、県民にとって非常に危険な法律になっていく。
<軍が私権を制限する戦前の考え方に戻る>
 法案が成立すれば、土地取引の時にも重要説明事項として調査・規制の対象となることや事前届け出義務があることを説明しなければならなくなる。指定区域内の土地が敬遠される可能性を問うと、政府も否定できなかった。1キロ以内に住んでいるというだけで経済的不利益を被り、取引価格や地価の下落などの影響が出てくる可能性がある。
 法案の規制措置とは何の関係もない人々が、安全保障を理由に財産権を侵害されることになる。これは明確な憲法違反だ。軍事目的なら私権を制限してもかまわないというのは戦前と同じ発想で、憲法9条を持つ平和主義の日本で許されるものではない。
<結局は思想信条の調査に及ぶ>
 公簿で土地・建物の所有者を調べただけでは何もわからない。政府は思想信条の調査はしないと答弁しているが、結局は思想信条、政治的立場の調査に及ぶ危険性を持った法案だ。
 周辺住民などに事情を聞くこともできる。すると「あそこは政府に監視されている土地だよ」といううわさが広がり、住民の間に疑心暗鬼を広げることになる。
 隣近所の人に「聞き込み」をすれば、「どんな人ですか」「どこに行っている人ですか」となる。現在で言えば「辺野古の座り込みに行っている人ですか」とならないか。そのようにしてその土地が「基地機能の阻害要因になる」という確証を政府が得ていくことになる。
<住民を分断することに>
 このような指摘をするのは沖縄の経験があるからだ。
 米軍統治下では、基地内で県民が耕作できる「黙認耕作地」があった。住民が米軍に申請してカードを交付してもらう。復帰運動や革新的な政治活動に関わっていると米軍はカードを出さない。脅しだ。カードを取り上げられると自分の畑にいけなくなり、生活のすべてを失ってしまう。そして周囲からはあの人に近づいたら危ないと言われるようになる。
 恐怖がひろがり、お互いが疑心暗鬼になり、県民同士が分断された。今度の法案でも同じ問題が起きかねない。
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近藤 ゆり子 k-yuriko@octn.jp
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