小池百合子都知事Photo:YOSHIKAZU TSUNO/gettyimages

小池百合子東京都知事が就任して5年。小池知事に、築地市場移転問題の担当次長に抜擢されるも、その内実や政治手法に嫌気がさした元都庁幹部が、著書『ハダカの東京都庁』(文藝春秋)を6月に出版した。内部に精通した元幹部だから知っている、小池知事の「7つの悪政」プラス1をお伝えする。(元東京都選挙管理委員会事務局長 澤 章)

政敵とのバトルに大忙しの小池知事
端から見れば滑稽千万、笑うしかない

この度、東京都庁や小池百合子都知事の内実を記した著書『ハダカの東京都庁』(文藝春秋)を上梓した。いかにも下心をくすぐるような題名で恐縮だが、中身は至って真面目な、都庁に関する暴露本である(笑)。

タイトル原案には、当初、冒頭に「お笑い」の3文字が入っていた。つまり、「お笑いハダカの東京都庁」とするはずだったのだ。著者が若い頃、テリー伊藤氏の『お笑い北朝鮮』や『お笑い革命日本共産党』をゲラゲラ笑いながら読んだときの感覚で執筆しようと思ったからである。

だが、書き進むうちに、どうしてもシリアスな部分にも触れざるを得なかった。結局、タイトルからは「お笑い」を外したが、外部からうかがい知れない巨大組織の実態を明らかにするには、笑いというスパイスを欠かすことはできない。

特に、小池知事のやっていることの大半は、もっともらしい理屈を付けてはいるが、そのほとんどが、自己保身と自己顕示の塊のようなものだといえる。ご本人は日々、政治という名の“戦場”でサバイバルゲームにいそしんでいるのだろうが、端から見れば滑稽千万、笑うしかない。

以下、8つの切り口で小池知事の悪政ぶりを笑い倒してみたいので、しばしお付き合いいただきたい。

保健所との連携を進言した局長を更迭
女性知事による「女性登用」の残念な末路

第一の悪政 人事権を振りかざす恐怖政治

都庁内部の人事権を掌握するのはもちろん、トップの都知事だ。だが、私利私欲のために強権を振るうことを許されているわけではない。あくまで都民のために行使されなければならない。

ところが、小池知事は自分の意に沿わない局長をいとも簡単に飛ばす一方で、自分に忠誠を尽くす幹部を極端なまでに重用してきた。

確かに歴代知事も、自分の好き嫌いで副知事などの人事を私物化していたのは事実である。だが、小池知事の場合、その度合いが尋常ではない。

例えば、コロナ拡大の第1波の時、対策の陣頭指揮を執っていた内藤淳福祉保健局長を突如更迭した。区の保健所との連携強化を進言した局長に対して「だったら、あなたが保健所に行けばいいじゃない」と知事が言い放ったなどと、庁内には、まことしやかな噂が広まった。

他にも、事業執行上のミスを報告するのが遅れた、都議会自民党に情報を流したといった不確かな理由で何人もの局長が左遷の憂き目を見ている。まさに“女帝様”のやりたい放題である。

ハダカの東京都庁『ハダカの東京都庁』
文藝春秋
1540円(税込)

第二の悪政 女性登用という名の女性蔑視

小池知事1期目のウリは、なんといっても「男社会に立ち向かう女性戦士」というイメージを醸成したことだった。幹部人事でも、女性管理職の積極的な登用を進めた。埋もれた人材を次々と抜擢したように見え、都庁内には驚きの声が漏れた。

だが、メッキはすぐに剥がれた。都庁でも一、二を争う枢要部長ポストに、その分野が未経験の女性管理職を他局から異動させたが、案の定、まったく機能せず、1年で異動となった。そうかと思えば、知事肝いりの事業を仕切るポストに女性管理職を就けたまではよかったものの、彼女がいわゆる“パワハラ上司”であることが判明し、すぐに出先機関に追いやった。

何かにつけて女性の味方を標榜する小池知事だが、内実は女性管理職を自分の手駒としか考えず、自分の見栄えのために動かしているにすぎない。彼女たち自身の人材育成やキャリアプランを考えることなど、さらさらないのである。

要するに、小池知事が掲げる“女性活躍”による最大の被害者は、誰あろう女性自身なのだ。女性の立場を身勝手に操る小池知事の詐術に、特に女性の方々はだまされてはいけない。

「目安箱」で私に伝えられたあきれた中身
批判回避の思い付き政策もさすがに限界か

第三の悪政 密告を奨励し職員を分断する「職員目安箱」の設置

「目安箱」といえば聞こえはいいが、小池知事が鳴り物入りで導入したこの箱は、職場の隣人同士による“密告情報収集システム”に他ならない。

誰もがメールなどにより匿名で通知することができ、知事が必ず直接目を通し、秘密は外部には絶対に漏れない――。建前上そういうことになっているのだが、実態はどうか。

寄せられた情報は取捨選択された後、総務局長に下ろされる。私は中央卸売市場次長だった頃、何度も総務局長に呼び出された。秘密裏に「目安箱」の中身を知らされ、適切に対応するよう指示を受けるのだ。

しかし、その中身のくだらなさときたら脱力モノだった。市場の幹部職員が禁煙のフロアで隠れてたばこを吸っているだとか、他局から異動してきた上司が部下を怒鳴りつけて困っているだとか、これって知事に密告する話なのか。小池知事がブチ上げた築地市場移転計画の延期で七転八倒していた当時の私は、あきれ返るしかなかった。

それ以外にも、上司や同僚の悪口や、誰と誰とが付き合っているなど、どうでもいい情報ばかりだった。どうせなら、小池知事自身の不正行為を密告する透明な箱を外部機関に設けていただきたいものである。

第四の悪政 巧妙な情報操作とイメージ操作

小池知事の本質はテレビのメインキャスター(MC)であると、著書『ハダカの東京都庁』にも書いたとおり、メディアを操る術で彼女の右に出る者はほとんどいない。

毎週金曜日に開かれる記者会見では、自分に好意的な記事を書く記者しか指名しない。登庁時や退庁時のぶら下がり取材では、質問に正面から答えずに論点をすり替えたり、質問に途中でぷいと背を向けて立ち去ることも珍しくない。

一方で、新型コロナウイルス対策を語る際には常に、菅義偉政権との対立軸を意識して、自身の責任回避に余念がない。

しかし最近は、その能力にも陰りが見えてきたように感じる。都独自の大規模ワクチン接種会場を巡って、右往左往ぶりが目立ったからだ。

当初、大規模会場を設置しないとしていた小池知事だったが、他県が次々手を上げる中、突如、築地市場跡地でやると言いだした。

かと思えば、築地跡地は東京オリンピック・パラリンピックの車両基地に使用するため6月末までしか使えないとして、今度はそのライブサイト会場の代々木公園で実施すると突如発表。これは、公園の樹木を剪定が必要だとする会場設営への批判を回避する魂胆が見え見えだった。

批判をかわすための思い付き発言が、さらなる批判を引き起こし、その批判を抑え込むために、次なる思い付きを口にする――。この悪循環が止まらなくなってしまった。小池知事もついに焼きが回ったのだろうか、残念である。

財政調整基金以外も大盤振る舞い
小池知事が後藤新平を持ち上げる矛盾

第五の悪政 隠れ浪費で都財政は火の車

小池知事が就任した時、都には自治体の“貯金”である「財政調整基金」が1兆円も積み上がっていた。ところが、コロナ対策にその基金を使い果たし、今年度末の残高は21億円にまで減少する見込みだ。

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財政調整基金の取り崩しは、確かにコロナ対策という大義のためであるから大目に見よう。しかし、もう一つの基金取り崩し問題は、ほとんど知られておらず、看過できない。

都には、財政調整基金とは別に事業目的別の基金がいくつも設置されている。例えば、温暖化対策に使うための基金などである。

総額2兆円あったが、これが小池知事1期4年の間に半減したのだ。もちろん、行政目的に沿って準備したお金なのだから、「使って何が悪いの?」と小池知事は言うかもしれない。

しかしその実情は、与党の一角を占める政党の言いなりに予算を付けたり、人気取りのために補助金をばらまいたり、そんな無節操な基金運営の結果なのである。これを隠れ浪費と言わずして何と言おう。

この先、都の財政は、コロナ対策に加えて小池知事の隠れ浪費の影響をもろに受けて冬の時代を迎える。そのツケを払わされるのは将来の都民である。

第六の悪政 横文字政策にはご執心だが、都市インフラには無関心

小池知事のスタンドプレーにはいつもへきえきさせられるが、自治体の長として最も許せないのが、彼女の不作為による怠慢である。

小池知事は自分がお気に入りの政策には全精力を注ぎ込む。国際金融都市構想、次世代通信規格の5G、DX(デジタルトランスフォーメーション)などなど、浮ついた横文字系の政策が並んでいる。その一方で、都民の生活や都市活動を支える都市インフラの整備には極めて冷淡だ。

現在、更地となった築地市場跡地を豊洲市場方面から延びる大きな道路が横断している。環状第2号線(環2)と呼ばれる幹線道路の仮の姿である。

本来なら、新大橋通りまで完成済みの地下トンネルと接続し新橋、虎ノ門、四谷にアクセスするはずだった。ところが、小池知事の一声で築地市場の豊洲移転が延期されたあおりで、環2は未完のまま放置されている。

環2に限らず小池知事は、都市インフラを積極的に整備する気が極めて乏しい。反対運動を恐れてか、人気取りには効果がないと踏んでいるのか、不作為を決め込んでいる。

小池知事はしばしば、戦前に東京市長や帝都復興院総裁を務めた医師で、都市計画の専門家でもあった後藤新平を引き合いに出すが、自身は東京における都市インフラの重要性を理解せず、中長期の視点も持ち合わせているとは到底思えない。そんな人物に東京のかじ取りを任せるのは、やめた方がいい。

味方にすり寄り、仮想敵を叩く単純さ
「ポスト小池」に思いをはせる都庁職員

第七の悪政 敵か味方か、単純な二者択一思考

風を読むことにかけては当代随一と、小池知事を持ち上げるコメンテーターは世にあふれている。政治家に求められる能力のひとつではあるが、それしか持ち合わせていない人物が都知事の座に座っているとしたら、こんな都民をばかにした話はない。

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それでも、小池知事は目の前の人間を敵か味方かで識別し、目の前の事象を自分に得か損かで判断することを止めない。エジプト・カイロ大に形だけ通っていたことにし(まともに卒業したとはとても考えられない)、テレビキャスターとして世に出て以来、彼女は独自の“世渡りのスキル”を磨いてきた。その過程で習得したのが、「敵か味方か・損か得か」の二者択一思考である。

味方と定めた相手には全身ですり寄り、仮想敵を設定して徹底的に排除する行動パターンは、都知事になってからも繰り返された。その結果、小池知事の周りに心から信頼できる都庁幹部職員は1人もいない。彼らはただ、知事から敵のレッテルを貼られてパージされることを恐れているだけである。

悪政プラス1 都庁は小池知事に食い物にされた

小池知事就任後の5年間、都庁は人事も組織も財政も政策も、異形の政治家によってズタズタに引き裂かれた。その惨状はここまで述べたとおりである。日本の首都・東京都ともあろう自治体が、小池氏1人にもてあそばれ、いい食い物にされたのだ。

その小池知事は今、6月25日告示・7月4日投開票の都議会議員選挙を前に、音沙汰なしの構えを見せている。五輪開催の是非に対しては、政敵の菅首相と同様に「安全・安心な大会を」と公式見解を繰り返すにとどめ、一向に本意を語ろうとしない。

これも世渡り上手の風待ち作戦の一環なのだろうが、コロナ禍に苦しみ不安を抱く都民に対して、極めて不誠実な態度と言わざるを得ない。

小池知事の残任期はまだ3年もある。だが、もうそろそろ「小池後」の都政を真剣に考えてもいいのではないか――。少なくとも、都庁職員の大多数は心の底からそう感じているに違いない。