「東京新聞」7月23日朝刊の紙面 東京五輪開会式の当日、こちらの記事が話題を集めていた。
『五輪の闇 想像以上』(東京新聞7月23日) 【写真】「パソナで働いて応援!」と書かれた東京オリンピック公式ガイドブックの広告
オーバーだなぁ。五輪の闇? 開会式で制作を担当した組織委員会関係者が取材を受けた?
どれどれ。
《現場で1つの演目のストーリーと出演者を固めた後、組織委や都の有力な関係者やJOC(日本オリンピック委員会)サイドから、唐突に有名人などの出演依頼が下りてくる。部内では有力者ごとに「○○案件」とささやかれた。》(東京新聞・同)
つまりエライ人達から「○○を開会式に使え」という現場介入が多かったという。
すいません、やっぱり「五輪の闇」でした。政治利用の祭典でした。
小池百合子の“口利き”演出 この件に関しては「週刊文春」が4月8日号で『 森・菅・小池の五輪開会式“口利きリスト” 』として既にすっぱ抜いていた。 たとえば小池百合子都知事が「火消しと木遣りを演出に入れて。絶対よ」と組織委側に要望を伝えていたという。 火消し団体の総元締めである『江戸消防記念会』はもともと自民系の団体だったが、2016年の都知事選で江戸消防会の一支部が小池を支援した。小池氏からすればこのときの「恩返し」であると。これが約4カ月前の記事だ。 すると開会式では「火消しと木遣り」があったではないか。他では森喜朗案件として市川海老蔵の名があり、文春はこちらも的中。
政治利用の答え合わせがたまらなかった。
そうそう、森喜朗と言えば地元の「北國新聞」で開会式前日に大声でやらかしていた。 『開会式に松井氏登場 長嶋、王氏と共演か 森組織委前会長が明かす』(北國新聞7月22日) 記事によれば、松井氏は派手なことを嫌う謙虚な性格なので一度は辞退したという。しかし師と仰ぐ長嶋氏が野球の発展を願って開会式への出席を決めたので松井氏も翻意した可能性がある、と。 森喜朗が漂わせた“サプライズの予感” 長嶋・王・松井の共演はあるのかと北國新聞が問うと、 《森氏は「それは当日に期待してほしい。私自身は登場しないが、思いが入った開会式になる」と明言を避けたが、にやりとした表情にはサプライズの予感が漂っていた。》 もう、全部喋ってるじゃん! おとなしくしてるべき森喜朗なのに「もう五輪が始まるのだからいいだろ」と言っているようにみえる。
このスクープも驚かせた。 『組織委 森氏復帰を検討』(朝日7月23日) 森喜朗氏の「名誉最高顧問」就任を検討しているという。翌日に読売も報じた。森氏は女性蔑視発言で辞任した経緯があるため政府は難色を示しているというが、注目すべきは五輪開幕が近づくにつれて組織委員会の中に公然とこういう声が出ていることだ。これも「もう五輪が始まるのだからいいだろ」という態度にみえる。「国民はアスリートだけ見ていろ」という。 これは菅首相の「競技が始まり、国民がテレビで観戦すれば、考えも変わる」と表裏一体でもある(20日のウォール・ストリート・ジャーナルのインタビュー)。
さらに時を同じくして、五輪開幕直後の竹中平蔵氏のツイッターの投稿が話題となった。 竹中平蔵のツイートを要約すると 『故堺屋太一さんは、祭りのような「非日常」があって初めて、社会は面白くなり発展すると述べられた。五輪は最高の「非日常」だ。だから色んなことも起こりうる。それを政治的に、姑息に目くじら立てて批判するのは寛容・平和の五輪精神に反する。心からこの五輪を応援しよう、それが心ある国民の声だ。』(7月24日) 長いツイートなので中抜きさせていただく。 要約すればこれも、 《五輪が始まったのだからゴチャゴチャ言うな。非国民になるぞ》 と読める。※勝手に中抜きしてごめんなさい。 五輪が始まったのだからゴチャゴチャ言うな論法は強者にとっての開会宣言なのだろう。ちなみに発売中止となった開会式の公式プログラムの広告には、 『パソナで働いて応援!』 という全面広告があった。※電子版で見たら本当にこのコピーでした。決して中抜きしていません。 思い出した。竹中平蔵先生って丸川珠代五輪相言うところの「ステークホルダー」(利害当事者)だった。忘れてました。それにしても『働いて応援!』って凄い。ただの労働ですそれ。
KADOKAWAのエライ人も… そのオリンピック開会式の公式プログラムは「KADOKAWA」が出していた。するとどうでしょう、KADOKAWAの代表取締役社長で東京五輪・パラリンピック組織委員会参与の夏野剛氏がネット番組にご登場。「子供の運動会や発表会は無観客で行われてるのに五輪が有観客で行われれば不公平感が出る」という論調に対し、 《「そんなクソなピアノの発表会なんかどうでもいいでしょう。五輪に比べれば」と言い放った。》(スポニチWEB7月23日)
庶民の生活や思い出なんてクソというKADOKAWAのエライ人。これも、始まったらゴチャゴチャ言うな系である。 気になるのは竹中氏や夏野氏だけでなくSNSでも五輪が始まったのだからゴチャゴチャ言うな論法をよく見かけること。さらに「五輪にゴチャゴチャ言ってた奴が見てるのか」タイプもいる。
コロナ禍で五輪を開催して大丈夫ですか、開催するなら基準や目安を教えてくれませんか、大会が始まって医療が逼迫したらどうするのですか、心配だから説明してくださいという声をゴチャゴチャ扱いにしてよいのだろうか。 竹中平蔵氏に言わすと、心配だから説明してくださいという声も「政治的に、姑息に目くじら立てて批判する」人になる。「寛容・平和の五輪精神に反する」人になる。
菅首相、なんで怒ってるの? こんな出来事もあった。 『首相、記者団の取材にいら立ち 立て続け質問、注意促す』(共同通信7月21日) 《菅義偉首相は21日、官邸で記者団の取材に応じた際、社名を名乗らず立て続けに質問しようとした記者を「ルールを守ってください」と遮り、後方で控えていた小野日子内閣広報官らに「はっきり言ってください」と注意を促すなど、いら立ちをあらわにした。》 動画で確認できるが、記者はきちんと名乗っている。そして『来日した東京五輪・パラリンピック関係者と、一般国民の動線が混在していると指摘し、「命を守る」との首相の主張とは実態が異なっているのではないか』(共同通信)と質問しているだけ。 国民の命を守ることについて質問したらなぜ怒られるのか。 記者が繰り返し聞いたのは首相が質問をはぐらかしているからだ。ルールを守れという人がなぜ五輪開催の明確なルール(基準)を言わないのか。なぜ説明無しで五輪になだれ込もうとしたのか。 五輪が始まっても、アスリートが素晴らしい競技内容を見せてくれても、エライ人達が問い合わせを受け続けるのは当然だ。きちんと答えない限り。 首相は官邸を出る際、秘書官に向かって叱責するなど怒りが収まらない様子だったという(共同通信)。 だから、なんで怒ってるの?
「罪悪感にかられ続けた組織委員会関係者の男性は『社会と矛盾することばかりしている。五輪がもう嫌いになった』」——演出人事説明「全部ウソ」《五輪の闇、想像以上——開会式制作担当、苦悩の証言》【東京新聞1面・2面7/23】 https://t.co/m9t61UxTlU