東南アジア諸国連合(ASEAN)と日米中など域外8カ国の首脳による東アジアサミットが、10周年の節目を迎えた。

南シナ海での中国による人工島造成で緊張が高まるなか、各国の活動を法的に規制する「行動規範」の早期締結をめざすことでは合意したが、合意の時期は示せなかった。

中国としては各国との協調姿勢は示しつつ、領有権の問題を二国間で解決する方針は崩さない。人工島造成を進める時間稼ぎの思惑すらうかがえる。

行動規範の成否は今後の中国の判断にかかるが、緊張が高まる時にこそ、多国間の話し合いの枠組みが生きてくる。日本も各国との連携をいっそう強め、中国に国際規範を守るよう促していく必要がある。

改めて思い起こしたいのは、1977年に当時の福田赳夫首相が示した対ASEAN外交の原則、「福田ドクトリン」だ。

日本は軍事大国にならない▽心と心の触れ合う関係をつくる▽対等なパートナーになる――の3原則である。

軍事大国にならない原則について、福田氏は「人口稠密(ちゅうみつ)で資源に乏しく、海外諸国との交流と協調を必要とする我が国にとってはこれ以外の選択はありえない」と語った。

今も通じる考え方である。こうした理念の上に築かれた東南アジアの発展は、日本外交の一つの成功例と言えるだろう。

安倍首相も2年前の東南アジア訪問で、5原則を発表した。「力」でなく「法」の支配を強調し、自由で開かれた海洋は公共財であり、ASEAN諸国とともに全力で守る、と訴えた。

ASEAN各国は、大国化した中国と日本や米国の軍事的な緊張が高まることを望んでいない。一方で中国はその経済力を背景に、南シナ海問題でASEAN各国に個別に働きかけるなど、地域の分断につながりかねない動きを強めている。

だが中国への対抗心にはやるあまり、日本が同様の振る舞いに出る愚を犯してはならない。

中国に法の支配など普遍的な理念を説く日本の言葉が説得力をもつためにも、力対力のパワーゲームとは一線を画す。そうした姿勢を貫くことこそ、ASEAN各国の日本に対する信頼を育てるはずだ。

同時に、大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)を弾みとして、東アジア包括的経済連携協定(RCEP)交渉の前進にも力を尽くしたい。

経済を含む連携に中国を巻き込んでいく。そんな環境を作ることが地域の安定に資する。