Global Ethics


プレゼン成功5つの秘訣 by limitlesslife
マーケットが見える!人のココロをつかむセオリー
【第6回】 2012年2月6日 藤田康人 [インテグレート代表取締役CEO]

誰もがスティーブ・ジョブズになれる!?
プレゼン成功5つの秘訣

人前での表現がうまい人は何が違うのか

“どう伝えるか”は相手の
理解度から逆算して決める

先日あるIT企業の製品担当者によるマーケティングツールの新サービス発表のプレゼンテーションを聞く機会がありました。その新サービスは前評判も高く期待して聞いていたのですが、正直とても残念な内容でした。

その担当者は製品概要を説明するばかり。想定ユーザーであるわれわれプランナーにとってそのツールがどのように役立つのか、という肝心な部分はほとんど語られず、利用するメリットがまったく見えてきませんでした。

私が最も知りたかったのは、この新製品を実際に使用したとき、ユーザビリティー面が類似の競合製品に比べてどのように優れているかという点です。

彼が難しい専門用語を多用して説明していた詳細なスペックは、製品のサイトを見ればすべて載っています。カンファレンスのなかでのプレゼンテーションだったので、大勢の聴衆の前で個別に質問をすることもできません。結局そのプレゼンテーションからは得るものは何もなく、時間をムダにしてしまったという印象だけが残りました。

このプレゼンテーションの本来の目的は、われわれユーザーにその製品の特長を理解させ、興味を持ってもらうことだったはずです。

それには、自分のメッセージを一方的に相手に“伝える”のではなく、“伝わる”ように、つまり相手の頭に中にそのメッセージが理解されて残るという状態をつくりあげることが必要です。送り手が“伝える”という発想のみにとらわれ、受け手の理解を無視して情報発信しているだけでは、決して相手に正しく“伝わる”ことはありません。

聞き手の立場に立って、どんなストーリーで、どう伝えたら腑に落ちて相手の頭の中にメッセージが残っていくかをまずは考えるべきです。そして、そこから逆算して“どう伝えるか”を決めるのです。

そのためには、相手に理解してもらいやすいシンプルなメッセージを発し、わかりやすいストーリーを展開することが何より重要なのですが、先ほどのプレゼンテーションは、そもそも内容が難し過ぎることが最大の問題でした。ただでさえ難しいIT領域の話を専門用語を多用して説明されたのでは、話についていくだけで大変です。

複雑なプレゼンをする人は
なぜそうなってしまうのか

プレゼンテーションの名手として有名だったスティーブ・ジョブズは、その独特のプレゼン技術が彼が遺した名言とともに多くの人々に語り継がれています。それに関する書籍も多く出版されていますし、YouTubeなどにあるいくつかの伝説的なプレゼンテーション映像もその卓越したテクニックを学ぶのに非常に参考になります。

そんな書籍のなかの一つ、米国のコミュニケーション・コーチ カーマイン・ガロ氏が著した『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』(日本語版は日経BP社刊行)のなかで、同国の経済評論家 スージー・オーマーン氏が、人はなぜ、自分本位の話し方に陥りがちなのか、その本質を語っています。

同書籍から該当する箇所を一部抜粋します。

*        *                   *

頭がいいと思われたくて、自分が持つ情報でほかの人に強い印象を与えようとする人が多すぎるだけです。

他人がどう思おうと私は気にしません。私が気になるのは、提供する情報が聞き手や読み手の力になるかどうかだけです……話を聞いている人に変わってほしい、そういうメッセージにしたいと思うなら、できるだけシンプルなメッセージにしたほうがいいと私は思います。たとえば、わが家に来る道順を教えてもらうとしたら、なるべくシンプルなほうがいいでしょう? ごちゃごちゃした道順を教えられてもいいことはありません。いらいらしたり行くことをあきらめたりするでしょう。でもシンプルな道順なら、行ってもしょうがないと自分を納得させず、とりあえず行ってみようとするでしょう。

シンプルであることを批判する人は、もっと複雑なのだと自分が思いたい人なのです。シンプルだとみんなが思ったら自分の仕事がなくなるかもしれないと思うからです。必要以上に難しい言い方をするのは、自分が消されてしまうかもしれないという恐怖があるから、自分の居場所がなくなるかもしれないという恐怖があるから、注目されなくなるかもしれないという恐怖があるからなのです。

*        *                   *

「複雑な話し方をすることは、自分の存在価値を相手にアピールしたいといこと」という分析には心底納得してしまいました。このエピソードを読んで、改めて相手の心に本当に伝えたいことを残すためには、シンプルでわりやすいメッセージを届けることが大切だと感じました。

伝説の締めくくり
“One more thing…”

私自身、仕事がらプレゼンに立ち会う機会が多いのですが、「楽しい」と思うプレゼンに出会うことは正直あまり多くありません。

楽しいプレゼンは、その人が何を伝えたいのかが明確で、メッセージがいくつかのシンプルなキーワードとして盛り込まれているので、聞いているとあっという間に時間が経ってしまいます。そうしたプレゼンは決まってみごとに計算しつくされており、ストーリー性や演出の効果は、さながら映画やお芝居を見ているようで、エンターテインメントとしても十分楽しめます。

「楽しいプレゼン」に共通しているのは、まず冒頭の部分でぐっと引き込まれてしまうことです。

プレゼンには最初の10分がとても重要だといわれています。そこで人々の心を惹きつけておいて、本当に“伝えたい“メッセージが聞いてもらえる環境を聴き手の頭のなかにつくってしまうのです。

相手に自分の話に興味を持ってもらうためのテクニックは他にもさまざまあります。

私は自分がプレゼンをする際は必ずプロジェクターを使い、投影資料の印刷版はプレゼン終了後にしか配布しないようにしています。事前に内容がわかってしまうと聞き手の興味が失われるのと、どうしても手元の資料に聞き手の目線が行き、プレゼンに集中してもらいにくくなるからです。

ときおり聞き手に向かって質問を投げかけたりするのも有効です。

「このなかで、今の話を聞いたことがある人は手を上げてください」という感じで聞き手も参加者として引き込んでしまい、話題について聞き手自身も当事者であるという意識を共有してもらいやすくなります。

これら以上に重要なのは、プレゼンの最後を効果的に締めくくることです。

スティーブ・ジョブズのプレゼンの締めくくり方も、いつもとても印象的でした。とくに有名なのは“One more thing…”とプレゼンの最後に目玉を持ってくるテクニックです。プレゼンの最後に大きな発表が来ることで、聴衆は強い高揚感を感じたまま会場を後にします。そして、そのプレゼンは人々の間で伝説となり末長く語り継がれていくのです。

スティーブ・ジョブズに
なるための5つの秘訣

とはいえ、名人といわれるジョブズでさえ、プレゼンの前には非常に周到な事前準備とリハーサルの繰り返しを欠かさなかったそうです。

大きなプレゼンの何週間も前から準備を始め、話す予定の製品や技術について徹底的に勉強し、たとえほんの数分のデモを行うためでさえ、スタッフに数百時間におよぶ準備をさせたといいます。

ジョブズの魔法のようなプレゼンテーションを支えていたのは、じつはこの膨大な時間を費やした事前準備だったという事実は非常に興味深いものです。

つまりそれは、努力次第で私たちの誰もが、プレゼンテーションにおいてスティーブ・ジョブズになれる可能性があるということなのです。

この周到な準備と不断の努力に加えて、私が考える「プレゼンでスティーブ・ジョブズになるための5つの秘訣」をまとめてご紹介します。

【プレゼンテーション成功 5つの秘訣】

(1) シンプル、かつわかりやすいストーリーで語りかける
(2) 資料は事前に配らない
(3) 最初の10分で聞き手の心をつかむ
(4) 聞き手を参加させる
(5) 最後を効果的に締めくくる

■関連記事
『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』著者 カーマイン・ガロ氏のインタビューは
こちら
をご覧ください。
Advertisements