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 安倍首相が年内に衆院を解散する検討に入った。28日召集予定の臨時国会冒頭に踏み切ることも視野に入れているという。

衆院議員の任期は来年12月半ばまで。1年2カ月以上の任期を残すなかで、解散を検討する首相の意図は明らかだ。

小学校の名誉校長に首相の妻昭恵氏が就いていた森友学園の問題。首相の友人が理事長を務める加計学園の問題……。

臨時国会で野党は、これらの疑惑を引き続きただす構えだ。冒頭解散に踏み切れば首相としては当面、野党の追及を逃れることができるが、国民が求める真相究明はさらに遠のく。そうなれば「森友・加計隠し解散」と言われても仕方がない。

野党は憲法53条に基づく正当な手順を踏んで、首相に早期の臨時国会召集を要求してきた。冒頭解散となれば、これを約3カ月もたなざらしにしたあげく葬り去ることになる。憲法の規定に背く行為である。

そもそも解散・総選挙で国民に何を問うのか。

首相は8月の内閣改造で「仕事人内閣で政治を前に進める」と強調したが、目に見える成果は何も出ていない。

首相側近の萩生田光一自民党幹事長代行は衆院選の争点を問われ、「目の前で安全保障上の危機が迫っている中で、安保法制が実際にどう機能するかも含めて国民に理解をいただくことが必要だ」と語った。

だが北朝鮮ミサイル発射核実験をやめないなか、衆院議員を不在にする解散に大義があるとは到底、思えない。

むしろ首相の狙いは、混迷する野党の隙を突くことだろう。

野党第1党の民進党は、前原誠司新代表の就任後も離党騒ぎに歯止めがかからず、ほかの野党とどう共闘するのか方針が定まらない。7月の東京都議選で政権批判の受け皿になった小池百合子知事が事実上率いる都民ファーストの会は、小池氏の側近らが新党結成の動きを見せるが、先行きは不透明だ。

都議選での自民党大敗後、雲行きが怪しくなっている憲法改正で、主導権を取り戻したい狙いもありそうだ。

自民党内で首相が唱える9条改正案に異論が噴出し、公明党は改憲論議に慎重姿勢を強めている。一方、民進党からの離党組や小池氏周辺には改憲に前向きな議員もいる。

北朝鮮情勢が緊迫化するなかで、政治空白を招く解散には明確な大義がいる。その十分な説明がないまま、疑惑隠しや党利党略を優先するようなら、解散権の乱用というほかない。

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