かねて力説していた「政治家としての美学」「政治家としての矜持(きょうじ)」とは、しょせんこの程度のものだったのか。

あまりに不誠実かつ非常識な態度に、ただ驚く。

あっせん利得処罰法違反の疑いで告発され、その後不起訴となった元秘書2人について、甘利明・元経済再生相が「説明」の会見を開いた。閣僚を辞任した今年1月から約束してきたものだが、こんな内容だった。

調査を頼んだ元検事の弁護士から口頭で説明を受けた。調査の基本は、甘利事務所の関係者からの事情聴取や資料提供だと聞いている。不起訴の結論をくつがえすような事実は見当たらなかったとのことだった――。

会見は自民党本部で突然行われ、この問題を長く取材してきた記者の多くが出席できないまま、10分ほどで終わった。

ここまで国民を愚弄(ぐろう)したふるまいも珍しい。

人々が求めていたのは、捜査当局が出した結論をあらためて確認することではない。秘書が業者と不透明な関係をむすび、多額の現金を受けとり、くり返し接待を受けていた。その政治的・道義的責任について甘利氏はどう考え、今後いかに身を律していくか、だった。

そしてその見解が妥当かどうかを判断するには、前提としてどんな事実があったのかが、つまびらかにされなければならない。元秘書らはどんな話をし、それを裏づけるいかなる客観資料があるのか。不起訴処分は確定しているのだから、捜査や刑事裁判への影響を気にせず、公にできるはずだった。

ところが、担当した弁護士の氏名も、甘利氏との関係もわからない。調査結果をまとめた文書はなく、第三者は中身を検証できない。「不徳のいたすところ」「今後、コンプライアンスを徹底する」という決まり文句は口にしたが、具体的な再発防止策は一切示されなかった。

甘利氏は経済閣僚や公務員制度改革の担当大臣を歴任した。不祥事を起こした企業や役所がこのような会見と報告で幕を引こうとしたとき、それで良しとしただろうか。

国民の疑問に向き合い、丁寧に解きほぐすことから信頼の回復と再起を図る。当然そうすると思っていたが、多くの人には「逃げた政治家」という印象だけが刻まれる結果になった。

今月下旬から始まる国会で、野党が説明責任を果たすよう迫るのは必至だ。甘利氏本人、そして盟友関係にあるとされる安倍首相はどう対応するのか。目を凝らしていきたい。