東京都議選での自民党惨敗を受け、安倍首相が急ぐ憲法改正に対して、与党から慎重な議論を求める声が相次いでいる。

おとといの自民党憲法改正推進本部の会合で、石破茂・前地方創生相は、こう指摘した。

「丁寧な議論をちゃんとやって、分かるようにやって、というのが都民の意思だった」

船田元・推進本部長代行も記者団に「あらかじめ期限を切って憲法改正を議論するというのは、私自身はあまり得策ではないと思う」と語った。

ともに、もっともな発言である。首相が都議選の敗北を真に反省しているのなら、これまで「1強」の下で封じ込められてきた与党内の率直な意見に、きちんと耳を傾けるべきだ。

2020年、9条に自衛隊の存在を明記した改正憲法を施行したい。今秋の臨時国会で、自民党の憲法改正原案を衆参の憲法審査会に提出する――。5月以降、首相が矢継ぎ早に示した考え方は筋が通らない。

憲法改正を発議する権限は国会にある。行政府の長である首相が、自らの案を期限を切るかたちで示し、強引に進めようとするなら、まさに「1強」の暴走というほかない。

「20年施行」をめざすのは、自らの首相在任中に改憲したいからだろう。自民党案の提示を急ぐのも、発議に必要な衆参で3分の2の改憲勢力があるうちに、という思惑がにじむ。

連立を組む公明党から、異議があがったのも無理はない。

山口那津男代表はおとといの記者会見でこう語った。

「憲法(改正)は政権が取り組む課題ではない」「憲法改正は国会が発議する。与党の枠組みが、ただちに憲法の議論につながるものではない」

山口氏は昨年の参院選後、9条改正は「当面必要ない」と述べていた。自民党と同調して安全保障関連法を成立させた結果、改正は急を要さなくなった。そんな考えのようだ。

岸田文雄外相も6月末、同様の見解を示した。安保法によって「平和憲法との関係でどこまでの備えが許されるのか、ぎりぎりの結論を出した」「その結論が出たとたんに平和憲法そのもの、9条を変えるとなれば、話は振り出しじゃないかということになりかねない」。

多くの国民が納得できる憲法論議を取り戻すには、まず首相が自分本位の改憲構想を白紙に戻す必要がある。

行政府にあやまりがあれば正す、という立法府の責任を果たせるか。野党のみならず、与党も問われている。