Global Ethics


対米従属国家の「漂流」と「政治的退廃」=特別寄稿・内田樹 by limitlesslife
June 6, 2017, 12:49 pm
Filed under: 憲法, 日米

安倍首相(左)と、トランプ米大統領

 安倍晋三首相による「1強体制」の下、国内外の危惧する声をよそに、「共謀罪」が成立しようとしている。一方で、国民が望む加計学園問題の疑惑解明は、果たされぬままだ。絶えず問題が起こる日本。どうしてだろう? 思想家の内田樹氏が「日本の諸問題の根底にあるもの」を解き明かす。

 私たちが「問題」と呼んでいるものの多くは長期にわたる私たち自身の努力の成果である。だから、それは「問題」というよりむしろ「答え」なのである。

 私見によれば、現代日本の問題点の多くは、私たちが久しく「ある現実」から必死に目を背けてきた努力の成果である。私たちが目を背けてきた「ある現実」とは「日本はアメリカの属国であり、日本は主権国家ではない」という事実である。この事実を直視することを集団的に拒否したことから、今日のわが国の不具合のほとんどすべてが派生している。

 日本は属国だというとすぐに怒り出す人たちがいるので、同じことをそれよりは穏やかな表現に言い換えてみる。日本国民は憲法制定の主体ではない。

 日本国憲法は1946(昭和21)年11月3日に公布された。公布時点では「上諭(じょうゆ)」(注1)というものが憲法の「額縁」として付されていた。その主語は「朕(ちん)」(注2)である。「朕は日本国民の総意に基いて、新日本建設の礎が、定まるに至つたことを、深くよろこび、枢密顧問の諮詢(しじゅん)及び帝国憲法第七十三条による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる」。憲法改正を裁可し、公布したのは天皇陛下である。だが、当の憲法前文を読むと、その憲法を制定したのは日本国民だと書いてある。「日本国民は……ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」これを背理とか没論理と言ってはならない。憲法というのはそもそも「そういうもの」なのである。

 憲法前文が起草された時点で、憲法の制定主体となりうるような「日本国民」は存在しなかった。いなくて当然である。憲法施行の前日まで全日本人は「大日本帝国臣民」だったからである。憲法を確定するほどの政治的実力を有した「日本国民」なるものは、権利上も事実上も、憲法施行時点では日本のどこにも存在しなかった。

 もちろんGHQと憲法草案について交渉をした日本人はいた。九条二項(注3)を提案したのが幣原喜重郎(しではらきじゅうろう)(注4)だったというのもおそらく歴史的事実だったであろう。けれども、そのことと「日本国民は……この憲法を確定する。」という条文の間には千里の径庭(けいてい)がある。

 憲法の制定主体は憲法内部的に明文的に規定されない。現に、憲法の裁可主体が「朕」であり、大日本帝国議会が憲法改正を議決したという事実は、日本国憲法の本文のどこにも書かれていない。同じように、憲法を制定したのは日本国民であるはずなのだが、その「日本国民」が何者であるかについては憲法内部には規定が存在しない(十条に「法律で定める」としてあるだけだ)。でも、憲法というのは「そういうもの」なのだ。

 憲法の事実上の制定主体は、いかなる合法的根拠もなしに憲法を強制できるほどの圧倒的な政治的実力を有している。憲法を制定するのは超憲法的主体である。ふつうは戦争か革命か、あるいはそれに準じる壊乱的事態を収拾した政治主体がその任を担う。日本国憲法の場合はダグラス・マッカーサーである。

 米国務長官だったジョン・フォスター・ダレスは56年に、日米安保体制とは「アメリカが、日本国内の好きな場所に、必要な規模で、いつでも、そして必要な期間に基地を置くことができる」ことだと語った。これは「アメリカは超憲法的存在だ」ということを軍事用語に言い換えたものである。この言明は今に至るまで撤回されていない。

「主権在民」は本当のことなのか

 私たち日本国民は憲法制定の主体であったことはない。だから、正直に言って、私たちは自分たちがこの国の主権者であるという実感を持ったことがない。教科書では「主権在民」と教えられたけれど、ほんとうの主権者は太平洋の向こうにいるということを私たちはずっと知っていた。国に主権がないのに国民が主権者でありうるわけがない。

 けれども、日本がいつかアメリカから国家主権を奪還する日が来る、日本国民がいつか晴れて日本の主権者になれる日が来るのではないかということについては日本人は漠然とした期待だけは抱き続けていた。それが「対米従属を通じての対米自立」というのは国家戦略の意味である。対米従属は敗戦国にとってはそれ以外に選択肢のない必至の選択であり、また十分に合理的なものであった。そのおかげで日本は51年にサンフランシスコ講和条約で国際法上の主権を回復し、72年には沖縄施政権を回復した。これはまさに対米従属の「成果」と呼ぶべきものである。このペースでこのまま主権回復・国土回復(レコンキスタ)が続けばいずれ日本が主権を回復する日が来る、日本人はそう希望することができた。

 そのうちに高度成長期が来て、「経済戦争でアメリカに勝つ」という途方もない希望がいきなり現実性を持ってきた。「エコノミックアニマル」と国際社会では蔑(さげす)まれたが、あれは「もしかすると国家主権を金で買えるかも知れない」という敗戦国民の脳裏に一瞬浮かんだ夢がもたらしたものだったのである。しかし91年のバブル崩壊でその夢はついえた。

 国際社会で地政学的な存在感を増して、実力を背景にアメリカに国家主権を認めさせるというプランは2005年の国連常任理事国入りの失敗で終わった。このとき日本の常任理事国入りの共同提案国になったアジアの国はブータン、アフガニスタン、モルジブの三カ国のみだった。中国も韓国もASEAN諸国も日本の大国化を非とした。日本が常任理事国になってもそれは「アメリカの票が一つ増えるだけ」という指摘に日本の外交当局は反論できなかった。

 この時点で、政治・経済分野における「大国化を通じての対米自立」というプランは水泡に帰した。指南力のある未来像を提示して国際社会を牽引(けんいん)するとか、文化的発信力で世界を領導するなどというのはもとより不可能な夢である。だから、05年時点で、「対米従属を通じての対米自立」という戦後60年間続いた国家戦略は事実上終焉(しゅうえん)したのである。そして、それからあとは「対米自立抜きの対米従属」という国家の漂流と政治的退廃が日本を覆うことになった。

 12年のアーミテージ・ナイ報告書(注5)は「日本は一流国家であり続けたいのか、それとも二流国家に成り下がって構わないのか? 日本の国民と政府が二流のステータスに甘んじるなら、この報告書は不要であろう」という恫喝(どうかつ)から始まる。日本政府はこの恫喝に縮み上がって「一流国でありたいです」と答えて、報告書のすべての要求に応じた(原発再稼働、TPP交渉参加、掃海艇ホルムズ海峡派遣、特定秘密保護法の立法、PKOの法的権限の拡大、集団的自衛権の行使容認、武器輸出の解禁などなど)。「一流国でありたければ、言うことを聞け」というような剥(む)き出しの恫喝に叩頭(こうとう)する国を他国は決して「主権国家」とはみなさないだろうということが頭に浮かばないほどに日本人はいつの間にか「従属慣れ」してしまっていた。

対米従属こそ国益という偽装

 この急激な「腰砕け」は世代交代のせいだと私は思っている。1980年代まで、政官財の主要なプレーヤーは戦前生まれであり、「日本が主権国家であった時代」を記憶していた。彼らが生まれた時に祖国は主権国家であった。そして、自国の運命にかかわる政策を(それが亡国的なものであってさえ)、他国の許諾を求めることなく自己決定することができた。それが「ふつうの国」であり、敗戦国日本はそこに回帰すべきだという「帰巣本能」のようなものをこの世代までの人々は持っていた。

 けれども、21世紀に入ってしばらくすると「主権国家の国民であった記憶」を持ったこの人たちがいなくなった。今の日本の指導層を形成するのは「主権を知らない子どもたち」である。この世代(私もそこに含まれる)にとって「アメリカの属国民であること」は自明の歴史的与件であり、それ以外の国のかたちがありうるということ自体をうまく想像することができない。

 敗戦国が戦勝国の属国になるというのは歴史上珍しいことではない。敗戦国がそのあと主権を回復したのも同じく珍しいことではない。それができたのは、「われわれは属国という屈辱的な状況のうちにある。いつの日か主権を奪還しなければならない」という臥薪嘗胆(がしんしょうたん)・捲土(けんど)重来という気概を人々が長期的に保持していたからである。

 日本の危機はその気概そのものが失われたことにある。今わが国の要路にある人々はおしなべて対米従属技術に長(た)けた「対米従属テクノクラート」(注6)である。彼らはアメリカの大学で学位を取り、アメリカに知友を持ち、アメリカの内情に通じ、アメリカ政府や財界の意向をいち早く忖度(そんたく)できる。そういう人たちがわが政官財学術メディアの指導層を形成している。彼らは「対米従属」技術を洗練させることでそのキャリア形成を果たしてきた。そして、21世紀のはじめに「対米従属は対米自立のための戦術的迂回(うかい)である」ということをかろうじて記憶していた世代が退場したあと、自分たちが何のためにそのような技術を磨いてきたのか、その理由がわからなくなった。もちろん彼らが対米従属技術に熟達したのは、たかだか個人的な「出世」のためにすぎなかった。だから、「対米自立」という大義名分が失われたとき、彼らはほとんど本能的に「対米従属こそが日本の国益を最大化する道だ」という新しい大義名分を発明し、それにしがみついた。これはほとんど宗教的信憑(しんぴょう)に類するものであった。

 だが、「対米従属テクノクラート」たちのこの信憑を揺るがすものたちがいる。それは「アメリカから国家主権を奪還したい」という素朴な願いを今も持ち続けている人たちである。この「素朴な」人々は日本の国益とアメリカの国益はときに相反することを現実的経験として知っており、その場合には日本の国益を優先させるべきだと思っている。この人々の「常識」が開示されることを対米従属テクノクラートたちは何よりも恐れている。

 それゆえ、「日本はすでに主権国家であるので、主権奪還を願うというのは無意味かつ有害なことである」というイデオロギーを国民に刷り込むことが対米従属テクノクラートにとっての急務となるのである。ここまで書けば、安倍政権に領導される極右の政治運動が「国民主権」という概念そのものの否定に踏み込んでいること、そしてそれが国民から一定の支持を受けているという「矛盾」の意味が少し理解できるはずである。

「廃憲」で非国民主権を明文化

 先に書いた通り、私たちは「日本には国家主権がないこと」を知っている。それは当然「日本国民は主権者ではない」ということを意味する。むろん国家主権がないがゆえに私たちは主権の回復を願っているわけだけれど、極右の政治思想はそこを痛撃してくるのである。「主権の回復を願うお前たちは権利上何ものなのだ?」と。

 お前たちは主権者ではないし、かつて主権者であったこともない。アメリカによって「主権者」と指名されただけの空疎な観念にすぎない。お前たちがいつ憲法制定の主体となるほどの政治的実力を持ったことがあるか? こう言い立てられると、私たちはたじろいでしまう。まさにその通りだからである。彼らはこう続ける。お前たちはその実情にふさわしい地位と名を与えられなくてはならない。それは「非主権者」である。だから、これから憲法を改定し、基本的人権を廃し、日本国民は日本国の主権者ではないという現実を明文化する。

 極右の「廃憲」論の本質は約(つづ)めて言えばそういうものである。空疎な理念を捨てて痛苦な現実を受け入れろと彼らは命じているのである。曲芸的な理路なのだが、なぜか妙な説得力がある。もちろん「日本の国益とアメリカの国益は完全に一致している」という命題そのものが偽なので、論理は土台から崩壊しているのだが、それでも「お前たちは主権者ではないのだからその無権力にふさわしい従属状態を甘受せよ」という決めつけには尋常ならざるリアリティーがある。

 というのは、それがまさに対米従属テクノクラートたちがアメリカとのフロントラインで日々耳元でがなり立てられている言葉だからである。「お前たちは属国民だ。その地位にふさわしい従属状態を甘受せよ」と。それを言われると彼らも深く傷つく。でも、ほんとうのことなので反論できない。そのフラストレーションを解消するために、対米従属テクノクラートたちは彼ら自身を傷つける言葉をそのままに日本国民にぶつけているのである。

 日本人が国家主権の回復をめざす対米自立の道をもう一度たどり直すまで、この自傷行為は続くだろう。

 病は深い。


注1=旧憲法下で法令などが公布される際、冒頭に記された天皇の裁可を示す文章

注2=天皇、皇帝、国王の自称

注3=戦力の保持と交戦権を否定

注4=戦前は外交官から外相となり、国際協調路線を推進。終戦から約2カ月後の1945年10月、首相に就任

注5=リチャード・アーミテージ元国務副長官とジョセフ・ナイ・ハーバード大教授(元国防次官補)を共同座長とする知日派有識者グループの調査報告書

注6=その分野において高度な専門的知識を持つ官僚


うちだ・たつる

 1950年、東京都生まれ。思想家。武道と哲学研究のための学塾「凱風館」(神戸市)を主宰。東京大文学部卒。神戸女学院大名誉教授。専門はフランス現代思想だが、論じるテーマは社会、政治、歴史、教育、宗教など幅広い。著書は『街場のメディア論』(光文社)など多数。近著は『街場の共同体論』(潮新書)

(サンデー毎日6月18日号から)



「主人の眼でものを見るようになった奴隷」が真の奴隷である   by limitlesslife
May 4, 2017, 12:15 pm
Filed under: 日米

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いま日本で起きている絶望的なまでの「公人の劣化」は何に由来するのか。結論から言
ってしまえば「日本はアメリカの属国でありながら、日本人がその事実を否認している
」という事実に由来する。日本社会に蔓延(まんえん)している「異常な事態」の多く
はそれによって説明可能である。

ニーチェによれば、弱者であるがゆえに欲望の実現を阻まれた者が、その不能と断念を
、あたかもおのれの意思に基づく主体的な決断であるかのようにふるまうとき、人は「
奴隷」になる。「主人の眼でものを見るようになった奴隷」が真の奴隷である。彼には
自由人になるチャンスが訪れないからである。

日本はアメリカの属国であり、国家主権を損なわれているが、その事実を他国による強
制ではなく、「おのれの意思に基づく主体的な決断」であるかのように思いなすことで
自らを「真の属国」という地位にくぎ付けにしている。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170503-00017589-kana-l14

MLホームページ: http://www.freeml.com/uniting-peace



日米関係を「同盟」とは呼べない:ロシアの「北方領土」と同様、米国に「在日米軍基地の固定化」を許してはならない。 by limitlesslife
February 14, 2017, 1:51 pm
Filed under: アベノミス, 日米, 日露

I日米関係を「同盟」とは呼べない 

記載 石垣敏夫

 

安倍首相は在日米軍基地固定化を阻止せよ

 

同盟とは対等であること

「米英同盟」で、イギリスは本土に米軍基地を置かせていない。

過去の日英同盟で、日本政府は、日本の土地にイギリス軍基地を置かせていない。

日独同盟でも日本にドイツ軍基地は置かせていない。

アベ首相が「日米同盟の強化」というなら、

「対米隷属の強化」と事実を述べることである。

 

「同盟とは同じていどの力を持った者同士の間で、成立するもの」

諸葛孔明

 

ロシアの「北方領土」と同様、米国に「在日米軍基地の固定化」を許してはならない。



米軍基地は占領軍の延長: 誤った現状認識の上に、確かな安全保障を築くことはできない。 by limitlesslife
February 9, 2017, 5:33 am
Filed under: 日米

 (情報記載 石垣)
みなさん
お世話様
在日米軍基地は
占領米軍の延長で、
ロシア(旧ソ連)の北方領土と同様
永久に居座る予定です。
日本を守る、などとは全くの偽りです。
そのことをアベら日本の支配者は隠しています。
           石垣敏夫
以下転載です
IROHIRA Tetsuro<DZR06160@nifty.com>;
誤った現状認識の上に、確かな安全保障を築くことはできない。
結論に代えてーー同盟の疲労
誤った現状認識の上に、確かな安全保障を築くことはできない。
最後に、そんな問題意識を提示しておきたいと思う。
本書では、日米同盟が、日本国民の知らない間に、
質的に大きく変化していた事実を明らかにした。
在日米軍は「日本を防衛するために日本に駐留しているわけではなく、
韓国、台湾、および東南アジアの戦略的防衛のために駐留している」こと。
さらに、米軍の日本駐留は「兵站」が目的であること。
そして、日本の防衛は「日本自身の責任」だというのだ。
もちろんどの国の防衛も、最終的にはその国自身が責任を負うものだ。
しかし日本では誤った現状認識のもとに議論が重ねられてきた。
40年以上前の米政府機密文書には、日本人の安全保障観を根底から揺るがす
重大な事実が明記されていた。
他の文書や当時の情勢から判断して、米国のそうした基本政策は、
1972年の沖縄返還前後にまとめられたと推定できる。
そして今も、その政策は継続されている。
日本の防衛は日本の「責任」という記述は、2015年4月に発表された
「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」にも書き込まれていた。
ただし、英語版だけだ。
英語版ガイドラインは、日本が武力攻撃を受けた場合、作戦の実施は
「自衛隊が主たる責任を持つ」としている。
しかし、日本語版ガイドラインでは、重要なキーワードである「責任」
を省略して翻訳せず、あいまいな作為的翻訳をしていた。
恐らく、米側から正式に在日米軍に関する基本政策が伝えられていない
ことから、日本政府は作為的な翻訳でしのぎ、現状認識の維持を図ろうと
したのではないだろうか。
「在日米軍が日本を守ってくれる」という、あたかも「共同幻想」のような
状況の上に、日本国民の対米依存心理も重なり、「思いやり予算」という名で
日本は巨額の米軍基地経費を負担してきた。
東アジアの安保環境は劇的に変化し、日米同盟の役割は重要性を増した、
と筆者も考える。
しかし、日米間で、米軍および自衛隊の真の役割を明らかにして、
有事を発生させないための本格的な戦略協議が行われてきたようには見えない。
これを機に、国民が必要とする情報を公開し、正しい現状認識に立って、
確かな安全保障の構築に務めるべきだ。
・・・
(「仮面の日米同盟」米外交機密文書が明かす真実、春名幹男、2015)
==
第6章 米中の狭間で翻弄される日本
日米中の三角関係にどのように対応していくか。
今も昔も、それが日本外交と安全保障の最も重要なカギだ。
太平洋戦争は、アメリカが求めた中国からの撤兵を日本が拒否して始まった。
東西冷戦は、米中外交の開始で風穴が開いた。
冷戦後、世界の工場と化し、日本を抜いて世界第2位の経済大国となり、
軍事力も強大化させた中国は台風の目になった。
しかしその間、日本はこの三角関係をリードする独自性を発揮した
ことなどない。
いや現実には、米中関係が大きく動くと、日米関係は揺らいだ。
ニクソン大統領とキッシンジャー補佐官の対中外交、
オバマ米政権の「米中G2論」を思われる緊密な協議で、日本の存在感は薄まった。
実際、太い米中のパイプの陰で、日本の存在はないがしろにされてきた。
対中外交を優先する米国は、実は、日本の知らぬ間に、
日米安保条約の役割まで変質させていた。
対中外交に臨んだニクソン政権の基本方針と会談内容、
その結果日米中関係はどうなったか。
公開された機密文書を中心に追っていきたい。
・・・
(「仮面の日米同盟」米外交機密文書が明かす真実、春名幹男、2015)


誤った現状認識の上に、確かな安全保障を築くことはできない。 by limitlesslife
February 9, 2017, 5:26 am
Filed under: 日米

結論に代えてーー同盟の疲労

誤った現状認識の上に、確かな安全保障を築くことはできない。

最後に、そんな問題意識を提示しておきたいと思う。

本書では、日米同盟が、日本国民の知らない間に、
質的に大きく変化していた事実を明らかにした。
在日米軍は「日本を防衛するために日本に駐留しているわけではなく、
韓国、台湾、および東南アジアの戦略的防衛のために駐留している」こと。
さらに、米軍の日本駐留は「兵站」が目的であること。
そして、日本の防衛は「日本自身の責任」だというのだ。
もちろんどの国の防衛も、最終的にはその国自身が責任を負うものだ。
しかし日本では誤った現状認識のもとに議論が重ねられてきた。

40年以上前の米政府機密文書には、日本人の安全保障観を根底から揺るがす
重大な事実が明記されていた。
他の文書や当時の情勢から判断して、米国のそうした基本政策は、
1972年の沖縄返還前後にまとめられたと推定できる。

そして今も、その政策は継続されている。

日本の防衛は日本の「責任」という記述は、2015年4月に発表された
「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」にも書き込まれていた。
ただし、英語版だけだ。

英語版ガイドラインは、日本が武力攻撃を受けた場合、作戦の実施は
「自衛隊が主たる責任を持つ」としている。
しかし、日本語版ガイドラインでは、重要なキーワードである「責任」
を省略して翻訳せず、あいまいな作為的翻訳をしていた。
恐らく、米側から正式に在日米軍に関する基本政策が伝えられていない
ことから、日本政府は作為的な翻訳でしのぎ、現状認識の維持を図ろうと
したのではないだろうか。

「在日米軍が日本を守ってくれる」という、あたかも「共同幻想」のような
状況の上に、日本国民の対米依存心理も重なり、「思いやり予算」という名で
日本は巨額の米軍基地経費を負担してきた。

東アジアの安保環境は劇的に変化し、日米同盟の役割は重要性を増した、
と筆者も考える。
しかし、日米間で、米軍および自衛隊の真の役割を明らかにして、
有事を発生させないための本格的な戦略協議が行われてきたようには見えない。
これを機に、国民が必要とする情報を公開し、正しい現状認識に立って、
確かな安全保障の構築に務めるべきだ。
・・・

(「仮面の日米同盟」米外交機密文書が明かす真実、春名幹男、2015)

==

第6章 米中の狭間で翻弄される日本

日米中の三角関係にどのように対応していくか。
今も昔も、それが日本外交と安全保障の最も重要なカギだ。
太平洋戦争は、アメリカが求めた中国からの撤兵を日本が拒否して始まった。
東西冷戦は、米中外交の開始で風穴が開いた。
冷戦後、世界の工場と化し、日本を抜いて世界第2位の経済大国となり、
軍事力も強大化させた中国は台風の目になった。

しかしその間、日本はこの三角関係をリードする独自性を発揮した
ことなどない。

いや現実には、米中関係が大きく動くと、日米関係は揺らいだ。
ニクソン大統領とキッシンジャー補佐官の対中外交、
オバマ米政権の「米中G2論」を思われる緊密な協議で、日本の存在感は薄まった。
実際、太い米中のパイプの陰で、日本の存在はないがしろにされてきた。
対中外交を優先する米国は、実は、日本の知らぬ間に、
日米安保条約の役割まで変質させていた。

対中外交に臨んだニクソン政権の基本方針と会談内容、
その結果日米中関係はどうなったか。
公開された機密文書を中心に追っていきたい。
・・・

(「仮面の日米同盟」米外交機密文書が明かす真実、春名幹男、2015)

MLホームページ: http://www.freeml.com/uniting-peace



日米外交の正体は「画一的な日本人コミュニティとアメリカ側の一部知日派との『狭いパイプ』」 by limitlesslife
February 2, 2017, 2:04 am
Filed under: 日米

日本人が日米外交と呼んできたものの正体は「画一的な日本人コミュニティとアメリカ
側の一部知日派との『狭いパイプ』」でしかなかった!
http://wpb.shueisha.co.jp/2017/01/31/79339/  [2017年01月31日]

普天間基地移設問題に対する地元・沖縄県の民意や環太平洋パートナーシップ(TPP
)協定に反対する国会議員の意見など、日本政府や外務省とは異なる声を、アメリカの
議会や政府関係者に直接伝えていくーー。

こうしたロビイング(政府の政策に影響を与えるための政策提言)で今、注目されてい
るのが、2013年に設立された外交問題のシンクタンク「新外交イニシアティブ」(
ND)の事務局長を務める猿田佐世(さるた・さよ)氏だ。

著書『新しい日米外交を切り拓く』(集英社クリエイティブ)では、日米外交がほんの
「ひと握りの人たち」によって動かされている驚きの事実を明らかにし、日米外交のゆ
がみを鋭く指摘する。そして今、過激な言動で注目を集めるトランプ新大統領の誕生は
、新たな日米関係を築くチャンスかもしれない。

―アメリカの政府や議会に対するロビイング活動は、最初はひとりで始めたそうですね

猿田 国際関係学を学ぶためアメリカ・ワシントンの大学院に留学したのですが、その
頃、日本では民主党の鳩山由紀夫政権が、沖縄の米軍普天間基地の移設先について「国
外、最低でも県外」と訴えていました。

意外かもしれませんが、当時はこうした日本の動きに対し、日米同盟の守護神とも呼ば
れるリチャード・アーミテージ元国務副長官ですら、数百人を前にしたシンポジウムで
「(辺野古移設に代わる)プランBの検討が必要だ」と語っていました。つまりアメリ
カは「辺野古が唯一の選択肢」との考え方に固執していたわけではないのです。

ところがワシントンで発言する日本人には意見の多様性はまったくない。鳩山首相の意
向は無視され、日本大使館、すなわち、日本政府が共催するシンポジウムでも「辺野古
移設以外に選択肢はない」とか「鳩山首相はスチューピッドだ」とまで言い切る日本人
登壇者が続き、誰も異論を唱えない状況でした。

日米外交の実態を目の当たりにして、衝撃を受けたと同時に、この不健全な状況を変え
るには沖縄の人たちの声を直接、アメリカの政府や議会関係者、メディアなどに伝える
ことが必要だと感じました。そこから現地での活動をスタートさせたのです。

―それにしてもなぜ、ワシントンにいる日本人からは「異論」が出ないのでしょう?

猿田 ワシントンにいる日本人は大使館職員や大手企業の駐在員、メディアの特派員な
どがほとんどです。そうした日本人コミュニティの政治的な価値観は、いわゆる「保守
本流」から今の「安倍路線」あたりまでと考えていい。彼らを通じてワシントンで語ら
れる日本は、「一面的」なものになるのです。

一方、アメリカ側にしても、「知日派」と呼ばれ、対日政策に影響を与える議員や研究
者は5人から30人ほどしかいないというのが私のインタビュー調査の結果です。日本
でよく知られているのはアーミテージやジョセフ・ナイといった人々です。

つまり、われわれが日米外交と呼んできたものは、ワシントンに声を運ぶことのできる
画一的な日本人コミュニティと、アメリカ側のごく一部の知日派との「狭いパイプ」で
あり、そこでは時の首相の声までもが簡単に排除されてしまうのです。

―また、本書で興味深かったのが、「ワシントン拡声器」と呼ばれる仕組みです。

猿田 日米外交はよく、一方的な「対米従属」だと批判されます。確かにそういう面も
ありますが、現実はもう少し複雑で、逆に日本側がアメリカを巧みに利用している部分
があります。

鳩山政権の県外移設という方針を「アメリカからの意向」という形で外務省が潰したの
もそうですし、集団的自衛権の行使容認にしても、日本ではアメリカが強い圧力をかけ
ているように報じられますが、実際は日本の官僚や国会議員などがアメリカの知日派に
「日本も集団的自衛権の行使ができるようにしようと思うんですけど」と伝えるわけで
す。その知日派が「それはいいね」などと答えると、それが「ワシントン発」という形
になって、「アメリカの元政府高官が日本の集団的自衛権行使容認を望むと発言した」
と日本のメディアは報道するのです。

このように、日米外交のごく限られたチャンネルにアクセスできる一部の人々の意向が
ワシントンを経由し、「アメリカからの外圧」という形で拡大するーー。私はその仕組
みを「ワシントン拡声器」と呼んでいます。ここにメスを入れ、日米両国のより多様な
声を日米外交に反映させることが非常に重要です。

―トランプ大統領の誕生で、今後の日米外交にも大きな変化が起きるのでしょうか?

猿田 トランプ政権についてはまだ見えない点も多く、懸念ももちろん抱きます。もっ
とも、トランプ氏は対日外交について既存の枠組みとは異なる方針を打ち出す可能性も
ある。であれば、私たちはこれを日米外交に関する各テーマについての「あるべき姿」
を考える機会にしなければなりません。沖縄の基地問題などを見ても、今までの日米外
交がベストであったとはとうてい思えないからです。

ところが、現実には安倍首相がトランプ氏のところに飛んでいき、「ぜひ、日米関係は
これまでどおりで…」と必死にアピールし、とにかく氏を既定路線に引き戻そうとして
いる。この姿勢は、従来の日米関係に「既得権益」を持つ人たちの立場を象徴していま
す。そういう人にとっては既存の日米関係が変わっては困るのです。もっとも、逆に本
当にトランプ政権下で「これまでどおり」が通用するのか、その保証はありませんが。

―日米外交に立ちはだかる「壁」と日々格闘しながら、変わらない「現実」に憂鬱にな
ったりすることはないですか?

猿田 壁は大きいですが、日米外交を不健全な形にしている構造が見えたことで「アメ
リカに押しつけられた」などといった批判をするだけでなく、「何をすべきか」に思考
を巡らせることができるようになりました。「ここを変えれば、可能性が開けるはずだ
」という確信があるので、やりがいがありますね。

新外交イニシアティブでは現在、「米軍基地の辺野古移設に代わる代替案」や「日米地
位協定の国際比較」「日米原子力協定の改定」などについて、調査・研究を進めて、そ
の成果をワシントンで発表する予定です。専門家の力も借りながら、質の高い具体的な
政策を提言し、日米外交の新たな可能性を切り拓いていきたいと思っています。

●猿田佐世(さるた・さよ)
1977年生まれ、東京都出身。早稲田大学法学部卒業後タンザニア難民キャンプでの
NGO活動などを経て、2002年に日本にて弁護士登録。13年にシンクタンク「新
外交イニシアティブ」を設立。15年6月の沖縄訪米団、12年と14年の2度にわた
る稲嶺進名護市長の訪米行動の企画・運営を手がける。共著に『虚像の抑止力』(旬報
社)、『日米安保と自衛隊』(岩波書店)など

■『新しい日米外交を切り拓く 沖縄・安保・原発・TPP、多様な声をワシントンへ

集英社クリエイティブ 1400円+税
外交問題を扱うシンクタンク「新外交イニシアティブ」。その事務局長を務める著者が
、知られざる日米外交の実態を明らかにする。沖縄の声がアメリカに伝わらないのはな
ぜか? 日米関係をゆがめている「ワシントン拡声器」とはなんなのか? アメリカの
政治の中心、ワシントンに身を置いたことで見えてきたロビイングの現場と日米外交の
問題点、そして本来あるべき日米関係を築き上げていくための方策を明かす
新しい日米外交

(インタビュー・文/川喜田 研 撮影/山本尚明)

MLホームページ: http://www.freeml.com/uniting-peace



国会に「日米地位協定委員会」を設置し、日米合同委員会の全面的な情報公開を by limitlesslife
January 10, 2017, 1:47 pm
Filed under: 日米
・今こそ国会議員がチェック機能を果たすべき

国会に「日米地位協定委員会」を設置し、日米合同委員会の全面的な情報公開を
進め、合同委員会のあり方を根本的に変える。
「憲法外機関」になってしまった日米合同委員会を、
憲法による「法の支配」のもとに置く。
そのためには、日本側の大幅な政策転換が必要ですが、
地位協定の改定までしなくてもできることです。

ただ、日米地位協定第二条を変えて、米軍基地や演習場の提供は
「国会の審議・承認を通じて両国政府が締結しなければならない」
としたり、第二五条を廃止して日米合同委員会そのものをなくしたりするには、
地位協定を改定しなければなりません。

しかし現状では、日本政府が大幅な政策転換や地位協定の改定に向けて
動きだす様子は見られません。
凶悪な米兵犯罪や米軍機墜落事故などが繰り返されても、改定ではなく
「運用の改善」でお茶を濁し、アメリカ側に「好意的配慮」を求める
その場しのぎですませています。

これまで沖縄県や神奈川県など米軍基地をかかえる自治体や、
日本弁護士連合会などが、米軍優位の不平等な地位協定の抜本的改定を提唱し、
政府に対して要望するなどしてきましたが、
日本政府の後ろ向きな姿勢は変わりません。
そうした政府の姿勢の背後には、日米合同委員会を通じて米軍と密接な
関係を持つ外務官僚中心の官僚グループの意向もあるのではないでしょうか。

だから、大幅な政策転換や地位協定の改定に向けて、
事態を打開するためには、与野党を問わず国会議員のなかから、
「日米地位協定委員会」設置への動きが起きるべきです。

これまで、国会では野党議員から、日米合同委員会の議事録や合意文書の
公開を求め、米軍優位の不平等な合意・密約を追及する質問や質問主意書
の提出が繰り返されてきました。

しかし、歴代の自民党政権は日米合同委員会のあり方を容認し、
地位協定の解釈・運用を外務官僚を中心とする官僚機構の手に委ねてきました。
だから、時の大臣たちも官僚の指南に従い、『日米地位協定の考え方』や
『法務省秘密実務資料』などの裏マニュアルに沿った政府答弁をしてきたわけです。
日米合同委員会の関連文書の情報公開にも背を向け、
官僚機構の秘密主義を認めてきました。
そのため、自民党が多数派を占める国会では、日米合同委員会の情報公開、
合意・密約などの実態解明が進みません。

しかし、与野党を問わず国会議員は本来、憲法にもとづき主権者・国民に
選出された代表として、「憲法外機関」となって立憲主義を侵食する
日米合同委員会のあり方を許してはならないはずです。

地位協定の解釈・運用を日米合同委員会に拠る外務官僚らに独占させて
いいはずがありません。
米軍人との密室協議で、「憲法体系」を無視・超越するような合意・密約
を結ばせてはいけないのです。
領土・領海・領空の一部を外国軍隊に提供するという国家主権に関わる
重大な決定を、日米合同委員会の手に委ねるのではなく、
国会で審議し判断すべきです。
それが憲法に規定された本来の主権在民のあり方です。

与党・野党に関係なく、主権者を代表して、国会議員が国権の最高機関
の一員として、今こそチェック機能を果たすべきなのです。
そのために、日米合同委員会の実態解明、議事録や合意文書の情報公開要求、
そして「日米地位協定委員会」設置に向けて、超党派の勉強会づくりから
始めてはどうでしょうか。
そこでは、過去に野党議員が国会質問などを通じて得てきた、
日米合同委員会に関する情報の共有もなされるでしょう。

・真の主権回復と主権在民の実現が課題

もちろん、そうした動きをバックアップする日本社会の問題意識と世論の高まり、
国民・市民の支持も欠かせません。
そのためにはまず、本書でその一端を明らかにしたような、
米軍優位の不平等な合意・密約をつくりだす、日米合同委員会の実態が
広く知られることが必要です。

日米安保の問題など日米関係はどうあるべきか。
人によってさまざまな考え・意見があって当然です。
ただ、それを考え、意見を交わし、判断するためには、公文書など関連情報が
十分公開されていることが大前提になります。
その意味からも、日米合同委員会の議事録や合意文書などの全面公開が必要です。
全面的な情報公開がされてこそ、国民・市民が主権者として日米合同委員会を
チェックし、国政をチェックする力をより発揮できるのです。
政府には国民・市民の「知る権利」に応えて、説明責任を果たす義務があります。

また、過去に日本の官僚機構のなかから、米軍優位の不平等な行政協定
(現地位協定)の抜本的な改定要望が発せられたという歴史もあります。
現在の官僚機構のなかからも、
その思いを受け継ぐ新たな声がぜひ上がってほしいものです。
このような不平等な状態のままでいいとは思わない官僚たちもきっといるはずです。

結局、日米合同委員会をめぐる問題を通して浮き彫りになる日本という国の
課題は、真の主権回復と主権在民のより確かな実現です。
本当に「日本を取りもどす」というのなら、日米合同委員会の改廃は
避けて通れない問題であることにちがいありません。

そして問題は、日米合同委員会のことだけにとどまりません。
すでに七〇年以上も外国軍隊の基地が国内に置かれ、外国軍隊が事実上の
治外法権を保障されてフリーハンドの軍事活動を続けている状態を、
ずっと放置したままでいいのかどうか、という根本的な問いの前に
いま私たちは立たされているのです。

(了)

「日米合同委員会」の研究 謎の権力構造の正体に迫る 吉田敏浩著 創元社

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