日本銀行が初めて「マイナス金利政策」の導入を決めた。きのう日銀が発表すると、株式市場や外国為替市場に大きな驚きが広がった。

日経平均株価はいったん大きく上昇し、すぐに前日の終値水準を割るまで下落。そして再び上昇。激しく乱高下する展開となった。

マイナス金利政策とは、民間銀行が日銀の当座預金に預けたお金に支払う金利をマイナスにすること。金利はふつうプラスだが、マイナスにすると、預けた銀行側が日銀に金利を払うことになる。いわば口座の管理手数料のようなものだ。

導入するのは、銀行が日銀の当座預金に滞留させているお金を、企業への貸し出しに回すように促すためだ。

しかし、いま歴史的な超低金利のもとでも銀行が貸し出しを大きく増やさないのは、企業の資金需要が乏しいからである。その根本的な問題がマイナス金利の導入によって解消するわけではない。

また、この手法は銀行が金利コストを預金者に転嫁し、預金金利までマイナスにしてしまう可能性がある。

こうした問題があるため導入は難しいとみられてきた政策なのだが、金融緩和手法の手詰まりが課題となっていた欧州中央銀行が2年前に採用。これまでの運用では大きな混乱がなかったことから、日銀も採用を決めた。

とはいえ欧州中銀をはるかに上回る規模で量的緩和をしている日銀では、当座預金残高が250兆円と大きい。マイナス金利の影響をはかりかねる面もある。

このため、きのうの日銀の金融政策決定会合では新政策導入の賛否が9人の審議委員で5対4の僅差(きんさ)だった。こうした経緯から、実体経済に効果を発揮する政策手段はもはや限られ、効果がはっきりしない政策に頼らざるをえなくなっている日銀の苦しい事情が見える。

黒田東彦総裁は記者会見で「2%物価目標の実現のためなら必要なことは何でもやる」と改めて強調した。とはいえ国民の期待に働きかけるこの手法を延々と続けていていいのか。

今回、中国をはじめとする新興国経済の減速や原油価格の下落など、世界経済の不安定さに対応して日銀は新政策を導入した。ただ、内外経済が不安定になるたびに、新たなサプライズを市場に与える今のやり方がいつまでも続けられるとは思えない。その手法はいよいよ限界にきている。