東京電力福島第一原発事故の発生直後、東電が認めようとしなかった「炉心溶融」(メルトダウン)について、実は社内マニュアルに判定基準があり、津波から3日後には判定できていたと自ら発表した。

記者会見した原子力・立地本部長代理は「(マニュアルは)今月に入って初めて発見した」と語った。

この経緯と説明には、全く納得できない。

東電は事故当初、核燃料が傷ついた状態を指す「炉心損傷」と説明した。2カ月以上経った5月末になって、燃料が溶け落ちた炉心溶融と認めた。溶融を認めるのに時間がかかったのは「判断する根拠がなかった」と説明していた。

この説明は虚偽だった。当時も「炉心溶融を隠し、事故を小さく見せようとした」と疑われたが、そうした疑念を再燃させる経過だ。

柏崎刈羽原発がある新潟県の泉田裕彦知事は「隠蔽(いんぺい)した背景や、誰の指示であったか、真実を明らかにしてほしい」と求めている。当然の要求だろう。

さらに不可解なのが、マニュアルの「発見」である。

炉心溶融は当時、原子力災害対策特別措置法の緊急事態を示す事象として明記されていた。小さなトラブルでも国に通報すべき事態かどうか気にかけているのに、この基準に思い至らなかったとは考えにくい。

過酷事故の最中に炉心溶融の有無を直接確認できるわけがない。だからこそ、東電は「炉心損傷が5%を超えたら炉心溶融と判定する」と明確な基準を作っていたのだろう。

原発で事故が起きれば、詳細なデータは電力会社しか持ち得ない。政府もメディアも、一義的には電力会社からの正確で迅速な情報がなければ、判断や報道を過ちかねない。

東電が12年にまとめた福島原子力事故調査報告書は「言葉の定義自体が共通認識となっていない炉心溶融の用語ではなく、得られたデータから判断できる範囲で正確に炉心の状況を伝えることに努めていた」とする。事故の総括が十分だったとは言いがたい。

再稼働問題に絡んで新潟県の技術委員会から求められて調べた結果が「発見」である。

東電は今後、第三者も交えて経緯を調べるという。

詳細に調査して責任の所在を明らかにするべきだ。どう再発を防ぐのか、企業体質に問題はないのか。納得できる説明を国民にしなければ、東電の信頼回復の努力は実を結ばない。