政策の原点を忘れ、打算と駆け引きに終始した政治決着というほかない。

消費税率を10%に上げる際に導入する軽減税率について、自民、公明両党の協議が、迷走の末に決着した。

生鮮か加工かを問わず食料品全般の税率を8%にすえ置く。税収の目減りは年1兆円に及ぶが、どう穴埋めするか、痛みを伴う具体策は先送りした。

軽減税率論議を主導したのは公明党だった。来夏の参院選で公明党・創価学会の支援を重視する首相官邸が、軽減税率に慎重な自民党税調を押しきる構図で、減税の対象と金額がつぎつぎと積み上がっていった。

深刻な財政難のなか、消費増税に伴う低所得者対策に知恵を絞るという課題を果たしたとはとても言えない。

消費増税を含む「社会保障と税の一体改革」の内容を、改めて思いおこしたい。

国の借金は1千兆円を超え、今年度も財源不足を埋める新規国債を三十数兆円も発行する。高齢化などで社会保障費の増加が止まらないのが主な理由だ。

次世代へのツケを少しでも減らし、今を生きる私たちの社会保障も強化する。その財源の柱として国民全体が担う消費税を増税し、税収はすべて社会保障分野にあてる――。それが一体改革の骨格である。

ただ、消費税には、所得が少ない人ほど負担が重くなる「逆進性」があり、それをやわらげる対策が欠かせない。

軽減税率は消費者に分かりやすい半面、高所得者まで恩恵を受けるため、税収の目減りが大きい割に効果が乏しい。自公両党はそんな軽減税率の限界を承知していながら、線引きをめぐる攻防に明け暮れた。

生鮮食品だけという自民の当初案に公明が反発し、菓子と飲料を除く加工食品を加えることに。その後、菓子・飲料にも対象は広がり、一時は外食を含む案まで検討された。

税収減の穴埋めに、低所得者に医療や介護の窓口負担で上限を設ける総合合算制度をやめて4千億円を捻出する。低所得者対策の一つを犠牲にするとは驚くが、残る6千億円は手つかずのままだ。

今の世代が直接恩恵を受ける軽減税率の財源を、将来世代への負担の先送りである国債発行に頼ってはならない。

自公両党は「安定的な恒久財源を確保する」とうたった。社会保障を含む給付を削るのか。負担増に踏み切るのか。政権与党としての責任感が残っているかどうかが試される。