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 沖縄における衆院選最大の争点は、引き続き米軍の普天間飛行場問題だ。名護市辺野古への移設阻止をかかげる翁長雄志知事を支持する「オール沖縄」勢力と、容認の自民候補者が4選挙区すべてで対決する。

移設の是非がはっきり争われた3年前の名護市長選、県知事選、衆院選、そして昨年の参院選は、いずれもオール沖縄側が制した。それでも政権は辺野古の海の埋め立てに突き進む。

くり返し示された民意は何だったのか。選挙による意思表明が通らないなら、どんな方法をとればよいのか。沖縄は、失望といら立ちの中にある。

日本の安全保障政策を考えれば、沖縄には受け入れてもらうしかない。歴史や地勢上の特殊要因があるからやむを得ない。そう考える候補者や有権者も、少なくないかもしれない。

だが、辺野古が突きつけているのは、基地を造るかどうかという問題だけではない。

中央政府が強大な力を行使して、特定の自治体に重い負担を迫ってきたとき、その自治体はどう声をあげ、いかにして住民の生命や財産、環境を守るか。地方自治にとって根源的なテーマが問われている。

たとえば政府はいま、辺野古の海底の形状を変える岩礁破砕を、知事の許可なしに進めようとしている。「地元漁協が漁業権を放棄する議決をしたので許可は不要だ」と説明する。しかしこれまで水産庁は、議決だけでは漁業権は消滅しないという見解を示していた。

いつ、どんな理由で、いかなる手続きで考えを変えたのか。県の重ねての問いにも誠意ある回答はない。そこには行政の継続も、安定も、信頼もない。

あきれる話は他にもある。

防衛省は7月、埋め立て予定海域で絶滅の恐れがあるサンゴ14群体を見つけた。だが県に伝えたのは、うち13群体が死滅した後の9月。驚いた県が、保全策を協議するため工事を停止するよう行政指導しても、応じない。これが、前知事が埋め立てを承認した際に念を押した「環境保全」の現実だ。

全国各地でさまざまな公共工事が行われている。いわゆる核のごみの最終処分地選びも、この先、本格化する。

個々の自治体の声を聞いていたら話は進まない。国策なのだから我慢せよ。沖縄でやったのと同じことをするだけだ――。

政府がそう言ったとき、地方はどうするか、何ができるか。

「辺野古」が浮き彫りにするこの国の政治の姿は、衆院選で問うべき重大テーマである。

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