温かいお茶にほっとする季節です。ペットボトルのお茶が増えていますが、急須でいれると自分好みの味わいを引き出せます。奥深い日本茶の世界をのぞいてみました。

お茶のいれ方教室を開いている東京都足立区の茶販売店「おくむら園」を訪ねた。

「いつも通りにいれてください。私も、同じ量の茶葉とお湯で一緒にいれます」と店主の奥村静二さん(56)。同時にいれて、飲み比べてみるという。

あれっ、同じ条件で一緒にいれたのに、奥村さんのお茶は色からして違う。香りがあり、とろっと甘くておいしい。手品を見ているようだ。

「急須にお湯を注いだ後、置く時間が少し短かったので、湯飲みにつぐ時に手首を返し茶葉を揺らして浸出を促したのです」と種明かしをしてくれた。

奥村さんは「大事なのは、お湯の温度と、茶葉から香りやうまみが浸出するのを待つ時間です」と言う。先ほどの場合は、もう少し待ってからつげば、茶葉を揺らさなくてもおいしくいれられたはずだ。

そこで、ちょっと気をつければ誰にでもできる基本のいれ方を奥村さんに教えてもらい、右の図に手順をまとめた。

温度で覚えておきたいのは80度。「80度より高いと、茶葉からカテキンやカフェインが溶け出しやすくなって苦みや渋みが強くなる」という。熱いお茶が好きな人もいる。「熱いのが好きだけれど渋いのは苦手なら、浸出時間を短くすればいい。好みの味になるよう温度や時間を加減してみてください」

お湯の温度や置く時間を変えていれてみる。好きな味が見つかったら、そのときの色を覚えておくと目安になる。

茶葉の個性にも注目したい。

東京・上野の「茶の君野園」の君野信太郎さん(65)によると、産地や作り手によって味わいが違ってくる。狭山(埼玉)は味が濃い。宇治(京都)は香りが豊か。八女(福岡)は甘みがある。掛川(静岡)は深蒸し茶が多く、うまみが強い。鹿児島は4月10日ごろに最盛期に入り、新茶が早く出る。早い時期は「ゆたかみどり」という品種が多く、さわやかな香りが楽しめるそうだ。

君野さんは、同じ値段のお茶を飲み比べることをすすめる。煎茶なら値段の目安は100グラム千円くらい。「それぞれのお茶の特徴がしっかり出て、違いを味わえる価格帯です」

栽培・製造方法により煎茶や玉露、ほうじ茶などの種類がある。また、煎茶や玉露の製造過程で取り除いたもので作ったのに茎茶、粉茶、芽茶がある。茎茶は後味すっきり。粉茶は香りは少ないが渋みが楽しめる。芽茶はいれた時の色は薄いが、味と香りはしっかり出る。これらは元のお茶の半値で買える。

君野さんは「朝は煎茶で頭もすっきり、夜はカフェインが少ないほうじ茶でゆったりと。おすしの後は粉茶でさっぱり。シーンごとに替えて飲むのもいいものです」と話す。(山田佳奈)

<お茶を学ぶ> NPO法人日本茶インストラクター協会(電話03・3431・6637)は、お茶の知識やいれ方を体系的に学べる通信講座を開き、11月上旬に「日本茶アドバイザー」や「日本茶インストラクター」の資格試験も実施している。また、初心者向けのテキストとして、「日本茶のすべてがわかる本」(税別2200円)も発行している。

<保存する> お茶の葉を買うと、気になるのは保存方法。高温の所に置いたり、茶葉が空気に触れたり光にあたったりすると早く劣化するので、冷暗所で保存すると良い。冷蔵庫に保存するのも良いが、茶葉にはにおいが付きやすいのでしっかり封をすることが大事だ。開封した後は半月ほどで飲みきろう。

<給茶スポット> 持参したカップや水筒に有料でお茶を入れてくれる日本茶専門店がある。「給茶スポット」と書かれた水筒のシンボルマークが目印。全国で計約170店が参加。インターネットのサイト(http://www.yoshimura-pack.co.jp/cafe/)で店を探せる。

◇「くらしの扉」は毎週月曜日に掲載します。次回は「ひと味ちがう鍋料理」の予定です。ご意見、ご要望はseikatsu@asahi.comへ。