国内で大量死したミツバチの死骸を農林水産省が分析したところ、半数以上から水田でまかれたネオニコチノイド系農薬が検出された、とする調査結果が7月に発表された。農水省は農家と養蜂家に自主的な対策を求めたが、欧州などは予防的に使用禁止などの措置に踏み切っている。国内の養蜂家からも規制を望む声が強い。

ログイン前の続き ■養蜂家「規制が必要」/農水省「工夫で対応を」

ネオニコ系は有機リン系農薬の代替として開発された殺虫剤。人や魚などへの毒性が比較的少なく、カメムシなどの防除効果が高いとされる。日本では1992年以降、クロチアニジンなど7種が登録され、水稲などに使われているが、登場した時期とミツバチの大量失踪や大量死が報告されるようになった時期が重なるため、世界的に因果関係が疑われている。

農水省は2013~15年度に全国の養蜂家から都道府県を通じて連絡があったハチの大量死198件の原因を初めて詳しく調べた。

ほとんどの被害地の周辺で水稲が栽培され、被害の7割はカメムシ防除の農薬が散布される時期だった。このうち死骸が採取された49件を分析すると、一定基準以上の農薬成分が38件検出された。うちネオニコ系は25件で最多だった。

農水省は「水稲のカメムシ防除に使用された農薬が原因である可能性が高い」と結論づけた。ただ、ネオニコ系が多いのは利用量が多いためで、影響の強さは特定できないとした。

古畑徹・農薬対策室長は「日本では外国ほど深刻な被害は起きておらず、規制の必要はないと考えている」と説明。農薬使用者と養蜂家が情報を共有し、巣箱の設置場所や農薬の使い方を工夫するよう求めた。

だが、養蜂家の感覚は違う。長野市で養蜂園を営む依田清二さん(72)は、この8年で3回も、農薬が散布される夏に多くのハチを失った。「ネオニコ系が出てくるまでこんなことはなかった。日本でも使わないでほしい」と訴える。

最初は08年8月中旬。ある日突然、巣箱の前に多数の死骸が広がっていた。巣箱の中にある巣を引き出すと、びっしりいるはずのハチがまばらになっていた。約40年の養蜂業で初めての、急な死に方だった。

周辺の水田では、その年から農協がネオニコ系農薬の使用あっせんを始めたと聞いた。死んだハチを民間検査機関で分析すると、ネオニコ系の成分が出た。この年の県内の被害は7カ所にのぼり、県養蜂協会から県に被害防止への協力を要請。関係者で農薬散布時刻や巣箱の場所などの情報交換を始めたが、09年、13年にも被害が出た。「ハチに影響のある農薬を規制してほしい」との声は全国各地であがっているという。

■欧州は予防的に使用禁止

海外では、00年代半ばから北米などを中心に大量の働きバチが短期間でいなくなる蜂群崩壊症候群(CCD)の報告が相次ぎ、ネオニコ系がハチの行動などに悪影響を及ぼすという研究成果の発表が続いている。

13年には欧州委員会が、予防原則に基づいて3種のネオニコ系農薬の使用禁止を決定。米国、台湾、韓国なども暫定使用禁止などの規制を導入した。

日本は、実質的な規制がないだけでなく、ネオニコ系農薬の新規登録や適用拡大など、世界とは逆の政策を進めている。農水省は、商品価値を大きく下げる斑点米の原因になるカメムシの防除に効果が高く、規制は稲作農家への影響が大きいことも理由に挙げる。

だが、14年に中立的な国際科学者チームがまとめた評価書では、ネオニコ系は土壌に数年間残留し、食物を通してミミズや鳥、魚などに影響を及ぼすと結論づけた。ミツバチだけでなく、生態系全体への影響も懸念されている。(奥村輝、編集委員・石井徹